直線とカーブの繰り返しが顕著な日光のいろは坂(写真:アフロ) 画像を見る

「紅葉のシーズンを迎え、車で出かける人も多いと思いますが、山道は急勾配のカーブが連続するところが多い。先日の観光バス横転事故のようなことを防ぐためにも、旅先ではより慎重に運転をする必要があります」

 

こう警鐘を鳴らすのは、交通事故鑑定人の中島博史さんだ。

 

10月13日、静岡県小山町須走の県道「ふじあざみライン」で、乗客ら36人を乗せた観光バスが横転し、重傷者6人を含む26人が負傷。埼玉県からツアーに参加した74歳の女性が死亡した。事故現場は、急勾配のカーブが続く山道。原因としては、バスがフットブレーキを使いすぎたことによって、ブレーキが利かなくなる「フェード現象」が起きた可能性が指摘されている。

 

紅葉の見ごろに合わせてドライブをする場合も、久しぶりの運転、しかも走り慣れていない道路では、思わぬ事故に遭遇するリスクが潜んでいることを忘れてはならない。観光地への行き帰りの山道や高速道路には、急勾配の下り坂カーブや、長い直線からの急カーブなど「ふじあざみライン」のような危ない区間、いわば“魔のカーブ”が点在しているのだ。ここでは、前出の中島さんに、出発前に知っておくべき、危険なカーブがあるエリアについて注意点を聞いた。

 

カーブで事故が起こる原因としてまず挙げられるのが気の緩み。山道では、日光の「いろは坂」のように、直線→カーブが続くことがしばしばある。

 

「単調な運転が続くと、どうしても緊張感が徐々に緩みがちになります。そのようなときに、急にカーブがきつくなる、車線ギリギリのところを対向車が走ってくるなどして、ハッとした経験があるという人もいるでしょう」(中島さん・以下同)

 

前を走る車について走っているとき、前方車が急ブレーキをかけた際に追突してしまう危険性も。気づかぬうちにしているスピードオーバーにも注意だ。

 

「『名古屋高速鶴舞南ジャンクション北渡り』のように、カーブに至るまでにまっすぐな下り坂が続く道路では、減速せずにカーブに突入して、曲がり切れなくなることがあります。ここでの事故の83%は施設への衝突で、スピード超過が常態化していると考えられます」

 

また、富士山スカイラインのように、整備されていて見晴らしがよい状況で、つい気分がよくなってスピード超過に気づきにくくなるケースにも気をつけたい。そして、下り坂で減速する際には、エンジンブレーキも使用すること。フットブレーキを多用していると、乗用車でも前出のフェード現象を引き起こしかねない。

 

これからは気温が低下する時季。路面の凍結にも警戒が必要となる。

 

「『中国道の北房IC~新見IC』の区間では、熊谷トンネルの東側が陸橋になっており、これから冬にかけては橋の上の凍結が起きやすくなります。特に大阪方面に向かう上りは、トンネルを出た先に橋があるため、急なカーブの途中で凍結路に出くわすため非常に危険」

 

出発前に、走行予定ルートの道路形状を地図などで確認しておくことも重要となる。

 

気を引き締めなくてはならないのは、なにも運転手だけではない。自家用車やレンタカーでなく、観光バスで旅行する人も同様だ。

 

「乗車中は、必ずシートベルトを締めてください。先日の事故のように、バスが横転した場合、シートベルトをしていないと、バスの幅分の高さから落下し、自分自身だけでなく、ぶつかった人もけがをします。シートベルトをしていれば、腰の部分がシートに固定されて、宙づりになっても人間の体重ぐらいでは外れません」

 

楽しみにしていた旅行で事故を起こさないためにも、出発前に安全への意識を見直しておこう。

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