『東京ラブストーリー』愛媛にあるカンチの母校にて 画像を見る

住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代に夢中になったドラマの話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’90年代”を振り返ってみましょうーー。

 

「『(カンチ!)ねえ、セックスしよ』の名ゼリフが記憶に残るドラマ『東京ラブストーリー』(’91年・フジテレビ系)が放送された当時は、男女の恋愛の形や女性の働き方の変革期でもあり、今振り返ると、作品にもその時代背景が色濃く描かれていました」

 

そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(54)。

 

紫門ふみの同名漫画を原作としたドラマは、主人公の赤名リカと永尾完治が織りなす、題名どおりの恋愛ストーリー。

 

「’86年に男女雇用機会均等法が施行されたものの、実際の職場で男女平等がすぐに進むことはなく、’90年代に入っても、女性の就職は結婚までの腰掛け程度で、仕事といえばお茶くみとコピー取りというニュアンスが一般的でした。ところがドラマで描かれる赤名リカは、帰国子女でキャリアウーマン。カジュアルなセーターに紺ブレを合わせ、パンツ、ローファーというアメリカントラディショナルで活動的なファッション。OLばかりでなく、学生も含め、多くの人がマネをしたものです」

 

■主張する女よりかれんな女がモテた最後の作品

 

一方、カンチはどちらかといえば職場で目立たず、さえない存在。それでも会社勤めをしていれば一生安泰の時代。バブル期のドラマに特有の、おしゃれなマンションで一人暮らしをしていたことも、視聴者にとっては憧れだった。

 

「今、描かれたならば、そんな2人の恋愛が成就する展開もあったかもしれませんが、当時はそこまでには至りませんでした。物語の終盤、カンチは冒頭のセリフのようにはっきりものを言うリカよりも、控えめでかわいらしい関口さとみを選びます。こうした恋愛観が描かれた最後のドラマかもしれません」

 

“今後はリカのような女性が幸せになれる社会が来れば”と願う女性たちもドラマ人気を後押しし、最高視聴率32.3%を記録。

 

「ドラマ内で大きなショルダーフォンが登場するシーンがありますが、基本的には携帯電話が普及する前の時代。今ではありえないすれ違いが頻繁に起こりました。そのため各話の終盤では、テーマ曲である小田和正さんの『ラブ・ストーリーは突然に』が流れるなか、連絡がとれず大雨の中で待ちぼうけする、帰宅して自宅の留守電を聞いて事態を初めて知るといったすれ違いが起き、ハラハラさせられたものです。週の始まりで、心身ともにぐったりとする月曜夜9時。思い切り涙を流すことで心を浄化して“花金”に向けて頑張った人も、多かったのではないでしょうか」

 

【PROFILE】

牛窪恵

’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍

マーケティングライター、世代・トレンド評論家

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