住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう! わかる」って盛り上がれるのが、青春時代、夢中になったテレビドラマの話。活躍する同世代の女性と一緒に、“’90年代”を振り返ってみましょうーー。
「『ショムニ』(フジテレビ系)は、商社の落ちこぼれOLが送り込まれる庶務二課、通称・ショムニの女性社員が、好き勝手な振舞いをしながらも、なぜか会社をいい方向に導くという1話完結型のドラマ。まさに世相を取り入れた作品といえます」
そう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん(55)。
『ショムニ』第1シリーズが放送されたのは’98年。’86年に施行された男女雇用機会均等法が、’97年に改正された翌年のことだった。
これを機に、従業員採用や異動、昇進について、女性を男性と差別することが「禁止」事項に。また総合職と、それをサポートする一般職についても、制度上は男女を問わず選択できるようになった。
「女性の社会進出の機運が高まっていましたが、実際にはまだ多くの女性は一般職に就き、総合職の男性をサポートする存在でした。サポート業務の中身も、お茶くみやコピー取りといった雑務だけという女性も多かった時代です」
■進まない女性の社会進出がヒットの背景に
同作品には“もっと責任ある仕事を任されたい”と考える女性がぶつかる壁も描かれていた。
「たとえば、セクハラ。かつて米国三菱自動車製造が社内セクハラを放置して訴訟を起こされ、その後、原告側に多額の和解金が支払われたのが、’90年代後半でした。当時、まだ日本では“アメリカで大げさな裁判が起きている”という程度の認識。そんな時代に、このドラマはセクハラ問題をいち早く取り入れていたのです」
視聴者のそれぞれが職場の悩みを抱えるなか、ショムニの女性社員が、上から目線で嫌みばかりの上司を蹴散らし、古い体質の会社を改善していくストーリーは、痛快に映った。
「『東京ラブストーリー』(’91年・フジテレビ系)で鈴木保奈美さんが演じた赤名リカは、紺ブレをおしゃれに着こなし活動的に動き回るキャリア女性。当時の女性にとってはあこがれの象徴でした。一方、江角マキコさんが演じた主人公を筆頭にショムニの面々は、当時まだ多かった企業の制服姿。視聴者にはより身近な存在で、感情移入しやすかったのでしょう。誰もが抱える職場の不満を代弁してくれた江角マキコさんが、このあとずっと“理想の女性上司”アンケートで上位にランキングされていたほどです」
そのため、ドラマはシリーズ化され、2時間のスペシャル版や劇場版も相次いで制作された。
「裏を返すと、日本では女性の社会進出が思うように進まなかったことの表れなのでしょうね」
【PROFILE】
牛窪恵
’68年、東京都生まれ。世代・トレンド評論家でマーケティングライターとして『ホンマでっか!?TV』フジテレビ系)など多数の番組で活躍