米デルタ航空機のファーストクラスで持ち上がった“取引”に注目が集まっている。
「私は今、デルタ航空の機内にいます。ファーストクラスで私の隣に座っている人は、フライト中ずっとマスクを外したままでいたら10万ドルあげる、という私の申し出を拒否しました。冗談ではないんです。マスクなど意味がないと説明した後で、です。彼女は製薬会社に勤めているそうですよ」
Twitterでそう綴ったのは、スティーヴ・カーシュ(67)という大富豪だ。The New York Postによると、彼はシリコンバレーの大物で、事業売却を繰り返し、’07年時点での純資産は2億3千万ドルに上っていたそう。
新型コロナウイルスのパンデミックが起きた’20年、カーシュは治療のための研究基金を創設し、100万ドルもの投資を行ったという。しかしその後反ワクチンに傾倒、“真実の語り部”を自称して感染症に関する独自の見解を発信し続けている。
Twitterの投稿は以下のように続く。
「まずは100ドルから始めました。飲んだり食べたりするときにマスクを外せば、感染する可能性があるのでは?と指摘したら、彼女は自分の情報を開示してきました」
「彼女は、朝食が提供されるやすぐにマスクを外しました!!!だって、誰もが食事中に感染することがないって知っているから!!! 次は(破綻した)シリコンバレー銀行に口座を持っていた人の隣に座ろうかな」
このツイートの表示回数は3200万回にのぼり、3万件を超えるコメントが殺到している。その多くが彼の申し出と主張に不快感を示すものだ。
《これはひどいマンスプレイニングだ。この女性は他の席に移りたかっただろうな》
《どうかしている。彼女はせっかくファーストクラスに乗ったのに、1人のバカがパーソナルスペースを侵して来たせいで台無しだ》
また、マスクを外すから10万ドルが欲しいという人からは「ぜひ隣に座りたいから、次のフライトが決まったら教えて」といったコメントも寄せられた。
反響を受けてカーシュは、隣の乗客との実際のやり取りについて自身のブログで説明した。
「会話は全て友好的なものでした。このツイートを彼女に見せたほどです。私の疑問はシンプルで、マスクが自分を守ってくれるという誤った神話を、人々がどれだけ強く信じているのか、ということだけでした。私は単に仮定の質問をしたのです。『もしあなたがXドルを提供されたら、数時間Yをしますか?』と。私は彼女がやりたくないことを強制しようとしたわけではありません。私の中で芽生えたさらに大きな疑問は『アメリカではもはや、“変人”のレッテルを貼られることなく、人に仮定の質問すらできないのか』ということです」