「これまで、長期金利の変動幅の上限を0.5%だとしていた日銀総裁が、上限を超えることを容認したことで、長期金利の指標となる新発10年債の利回りが0.605%と9年ぶりの高水準に。大手4行の住宅ローン固定金利も引き上げられました」(全国紙記者)
通常、金利が上がると、物価上昇が抑制されるといわれている。昨年から苦しめられている値上げラッシュも少しは落ち着くのだろうか。
経済評論家の加谷珪一さんが予測する。
「たしかに金利が上がると、ローンを組んだ買い物などがしにくくなり、消費活動は停滞。景気が冷え、物価上昇を抑制します。ところが日本の場合、物価上昇率は4%を超えることもあるのに、長期金利の上昇はあくまで小幅で低い水準。物価上昇を抑制するほどのインパクトはありません」
それを裏付けるように、日本の金利が上がれば円高に振れるともいわれているが、物価同様、円安傾向に歯止めがかからない状況だ。
「円安が加速すると原油の購入負担が増え、輸送費を含め、さまざまなコスト高に」(加谷さん)
特に注目されるのが「10月」といわれている。
「秋は、企業が来年度の業績を見通すため、値段の見直しをする時期。すでに値上げを発表している品目もあります」(加谷さん)
経済ジャーナリストの荻原博子さんも、次のように指摘する。
「円安の影響は2カ月ほどして顕在化してきます。政府によるガソリン代や電気代の補助金制度も9月に終わるため、10月からの家計負担増は懸念されるところです」
では、きたるべき「10月値上げ」はどれほど家計を苦しめるのか。
昨年10月の総務省・家計調査での50代世帯の統計資料をもとにファイナンシャルプランナーの内山貴博さんに試算してもらった。
「まず、家計調査の項目の中でも、物価上昇の影響が強いものを抽出しました。日銀は物価上昇値率が2%前後に落ち着くとしていますが、7月の都内の消費者物価指数が3%上昇だったので、3%値上がりすると仮定しました。昨年10月の食品の平均支出額は8万8558円だったため、3%増えるとすると9万1215円と、1年前と比べると2657円も負担増となります」
同様の計算をすると、外食費は502円増、被服費は443円増、娯楽費は922円増、洗剤などの家事用消耗品は110円増、シャンプーやせっけんなどの理美容用品は177円増で、合計4811円も負担増となる結果だった。
10月に補助金がなくなる予定のガソリン代や電気代はどうか。
「ガソリンは小売価格が1リットル170円を超えると、一部、補助金が出る仕組みです。経産省によると7月のレギュラー価格の全国平均が176円70銭で、15年ぶりの高値でした。これまで、1リットル8~10円ほど補助が出ており、もし補助金がなければ186円になるといわれています」(内山さん)
今後もガソリンそのものの値段も上がり続ける。7月も前月から1円以上値上がり。10月までに毎月1円ずつ上がり、また10円の補助金がなくなると仮定すると、1リットルあたり12円の負担増だ。
「昨年10月の家計調査では、平均購入量は48.776リットルなので、1カ月585円もガソリン代が増える計算です」(内山さん)