TBS『3年B組金八先生』シリーズやNHK連続テレビ小説『マー姉ちゃん』、NHK大河ドラマ『徳川家康』などのヒットドラマで知られる脚本家・小山内美江子さんが5月2日、老衰のため死去した。長男で俳優の利重剛(61)が自身のホームページ「利重人格」で次のように発表した。
《5月2日、母、小山内美江子が天命を全う致しました。老衰による穏やかな逝去でした。94歳でした。やりたいことをやり、言いたいことを言い、多くの人々に愛された、幸せな人生だったと思います。生前のご厚情を深く感謝いたします。本当にありがとうございました》
小山内さんは米寿を迎えた18年、本誌のインタビューに応じ、自身の“これからの生き方”について次のように語っていた。
「正直、貯金は全部使い切ってあの世へ行くつもり。それもあって、終活と呼ばれるようなことは具体的には何もしていません。明日逝っちゃうかもしれないのに、ジタバタしたってしょうがない。高齢者が蓄財しようとして詐欺に引っかかるなんてニュースも頻繁に見るけれど、それも必要以上に『終活しなければ』と不安に駆られているからですよ」
息子の利重からも「借金は困るけど、それ以外は何も残してくれなくていい」という言葉を受け取っていたという。お墓や遺言の準備、財産相続などの就活をしなかったおかげで、「還暦後の人生がますます豊かになった」とも話していた。
数多くの名作を世に送り出す一方で、還暦を迎えた90年から始めた海外ボランティアにも注力。認定NPO法人「JHP・学校をつくる会」の代表理事を務め、カンボジアに350校以上、ネパールには14もの学校を作った。このときの本誌の取材の前にも、海外に足を運んだばかりだった。
「つい先月も1週間ほどカンボジアに滞在しました。まわりは私の体調を心配して『行くな』と引き留めたけど、気にしません(笑)」
JHPを共に立ち上げた盟友・二谷英明さん(享年81)をはじめ、何人もの旅立ちを見送っていた小山内さんは、次のような死生観も明かしている。
「次は自分の番でしょうね。自分の思うような生き方を貫いてきたから、それでいい。ただ、あれをやらないで失敗したと思うのはつまらないですよね」
インタビュー後、写真撮影に入ると、小山内さんは鮮やかな赤色のリップを唇にひと塗り。「ちょっと色っぽくなったかしら」と華やかな笑顔を浮かべ、まっすぐにカメラを見つめていた。そのチャーミングな人柄と、時代を彩った名作の数々は、多くの人々の記憶の中で生き続ける――。