(撮影:千葉タイチ) 画像を見る

「この作品はアニメで知りましたが、一般的にあまり知られていない美術の世界を描いているところにすごく興味が湧きました。主人公の八虎の性格が自分と似ているなあと思いながら見ていたので、今回、お話をいただいたときは驚きました」

 

映画『ブルーピリオド』で主演を務めた眞栄田郷敦(24)。アニメ化や、YOASOBIの楽曲『群青』とのコラボレーションなどで注目を集めた人気漫画がついに実写映画化。成績優秀でまわりの空気を読みながら器用に生きている高校生・矢口八虎を演じた眞栄田は、どこか空虚な焦燥感に駆られた八虎に自分を重ねたという。

 

「僕自身、勉強もスポーツもそれなりにできて、TPOに合わせて自分を変えるようなところがあって、どれが本当の自分なんだろう? って考えるような少年だったんです。なので、八虎を見ていると、高校生のころの自分を見ているようで。また、やると決めたらとことん努力するところも似ていて、役に入りやすかったですね」

 

1枚の絵との出合いをきっかけに美術の面白さに目覚め、東京藝術大学を目指す八虎。眞栄田自身の人生を変えた出来事は?

 

「デビュー作となった映画は大きなターニングポイントで、あれがなかったら、いま、この仕事をしていないと思います。僕は、何か新しいことを始めるとき、負けず嫌いの気持ちから入ることが多くて。できないことがあると、逆に気になってやりたくなる性格なんです。いま、役者を続けるうえでいちばんモチベーションになっているのも、常に自分の成長を実感できるところですね」

 

学生時代にプロのサックス奏者を目指すも、藝大受験に失敗した過去を持つ眞栄田。八虎を演じるうえで、その経験も生かされた。

 

「受験は時間が限られているし、芸術は正解のない世界なので、自分が本当に成長しているのか明確でない。そのせいで人と比べたり、努力と才能について考えたりすることが多い高校生活だったので、八虎の挫折や苦悩は大いに共感できました。好きなことをやるって楽しいだけじゃないという、作品の核になる部分をしっかりと表現したいと思いました」

 

役づくりのため、クランクインの半年前から絵の練習をスタート。レッスン初日から時間を忘れるほど没頭し、劇中では自身が描いた絵も披露している。

 

「テーマが勝利だったので、まず、自分にとって勝利とはなんだろうと考えたとき、自由に、ストレスフリーに生きることだったんです。それで、鳥をモチーフにしたのですが、意外にうまく描けたなあってビックリ(笑)。芸術を極めるのは本当に難しくて、終わりがないからこそ抜け出せなくなる気持ちはとても理解できるし、それは役者も同じ。厳しい世界に足を踏み入れちゃったんだなあ、と今さらながらに痛感します」

 

『ブルーピリオド』

8月9日公開(配給:ワーナー・ブラザース映画)。

高校2年生の矢口八虎は、授業で描いた「私の好きな風景」という1枚の絵を通して、生まれて初めて本当の自分を曝け出せたことに気づく。美術の面白さに目覚めた八虎は、国内最難関の東京藝術大学の受験を決意するのだが……。

 

(ヘアメーク:MISU〈SANJU〉/ スタイリング:MASAYA / 衣装協力:MSGM)

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