(撮影:木村哲夫) 画像を見る

伊藤沙莉さんはじめ役者さん、スタッフさん、尾野真千子さんの語り、主題歌・音楽とすべてに恵まれて、最後まで楽しく脚本を書くことができました」

 

日本初の女性弁護士、のちに裁判官も務めた三淵嘉子さんをモデルに、伊藤沙莉(30)演じる主人公・佐田(猪爪)寅子の半生を描いたNHK連続テレビ小説『虎に翼』が9月27日に最終回を迎える。

 

心に芽生えた違和感や疑問を、“なきこと”にせずに「はて?」と呟き物申す寅子に共感する視聴者も多く、脚本家の吉田恵里香さん(36)が紡ぐ物語は「朝ドラ史上に残る名作」との呼び声も高い。

 

「三淵さんは、人に愛される力があるからこそ、意志の強さを表に出せたのだと感じました。寅子は、頭がよくて気が強くて、毒を吐きながらも、ひたむきでおちゃめでちょっと抜けていて愛らしい。『はて?』は、寅子が世の中の不条理や不平等のテーマについて『対話』する導入の一言になればいいなと思ったんです」

 

吉田さんは、寅子を演じた伊藤に絶大な信頼を寄せていた。

 

「現場でもいつも『楽しいです!』とニコニコ笑ってらして。話をしていると私が元気をもらいます。立っているだけで寅子の感情が見えてくるし、喜怒哀楽の表情筋も素晴らしく、伊藤さんだからこそ、寅子が、視聴者のみなさんに、嫌われなかったのだと思います」

 

本作では、近代の女性が置かれていた社会進出の苦難、仕事と育児の両立の厳しさが描かれた。夫婦別姓の事実婚など寅子の歩んだ軌跡とともに、法曹界に身を置く検事・弁護士から見た朝鮮人差別、同性愛への偏見、そして原爆裁判と、社会問題も取り上げ続けた。

 

「40歳までに朝ドラを書く」ことが人生の目標の一つだった吉田さんは脚本家・作家、そして現在、4歳となる息子さんの母親でもある。

 

「声を上げることの大事さを伝えたいと、これまでも“物言うかわいげのない人”を描いてきました。気が強くて、わきまえずに声も上げていい。声を上げづらいマイノリティの人たちに代わり、エンターテインメントが、声を上げられればと思っているんです」

 

今回の『虎に翼』でも登場人物一人一人に背景や、感情を出す見せ場となる物語がつづられてきた。

 

「脚光が当たらない人も含め“透明な存在な人”は、この世には誰もいません。誰も取りこぼしたくない思いを持っていたいんです」

 

と、信条を持つ脚本家の原点と、母として仕事をする女性としての吉田さんの顔に迫った─―。

 

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