労働組合の中央組織である「連合」(日本労働組合総連合会)は10月18日、年金の「第3号被保険者制度の廃止」を政府に提案する方針を固めました。
第3号被保険者制度は、会社員や公務員などに扶養される配偶者が、年金保険料を払わなくても老後の国民年金を受け取れる仕組みです。原則、年収130万円未満の配偶者が対象ですが、2024年10月以降は従業員数51人以上の企業で働く年収106万円以上の人は社会保険への加入が義務化され対象から外れました。第3号被保険者は2021年度末時点で763万人。その98%が女性です(厚生労働省)。
そもそも第3号被保険者制度は1985年に始まりました。当時はバブル経済が始まるころで、夫は外で長時間働き、妻は家で家事や育児、介護などを担う“家庭内分業”が一般的。だから「夫が夫婦2人分の保険料を納める」という考え方が受け入れられたのです。
ですが2000年ころ、共働き世帯数が片働き世帯を超えました。いまや夫婦のいる世帯の約70%が共働きです(2022年、厚生労働省)。
共働きで夫婦2人とも年金保険料を払っていると、年金保険料を納めずに年金を受け取る方に不公平感を持つこともあるでしょう。また、保険料負担を避けるために“年収の壁”を超えないよう労働時間を調整するパート労働者も多く、女性の働く意欲を奪う制度だともいわれます。今後、見直しは必要だと思います。
■55歳以上は年金受給が始まる“逃げ切り世代”
ただ、第3号被保険者制度の廃止はいますぐではありません。
というのも連合の廃止案は、移行期間が10年程度、段階的に進めるものです。
具体的には、(1)新たな第3号被保険者をつくらず、(2)第3号被保険者が女性の場合「夫の年収が850万円未満、子どもを育てる親など」にあたらない方から第1号被保険者に移行。(3)同時にパートの厚生年金加入拡大を進め、(4)最終的に全員を第1号に移行して制度を廃止します。
いっぽう国は、将来的に、勤め先の大小などに関係なく一定の年収があるパート労働者は全員、厚生年金加入を義務化する方針は示しています。しかし、第3号被保険者制度には現時点で何も言及していません。今後、国が動きだすまでに5?10年かかるのでは。
仮に10年後に廃止が決まっても、いま55歳以上の方は年金受給がすでに始まる“逃げ切り世代”です。連合案に従い10年の経過措置がとられると、いま50歳前後の方も大きな影響はないでしょう。それより若い世代は共働きが多く影響は限定的だと思います。
ただし、制度の廃止だけでなく、子どもの多い家庭で実際に働けない方などへの目配りは欠かせません。給付金など子育て世帯を支える仕組みが必要です。
女性の働き方などが取り沙汰される第3号被保険者制度の廃止ですが、単に年金保険料を支払う人を増やすためだけの施策とならないよう注視したいと思います。