「私は関節リウマチを患っているので、ロキソニンなどの鎮痛剤を保険適用外にされると死活問題です。働きながら子育てをしているのに、薬代が高くなって服用を続けられなくなると、生活もままなりません……」(30代・女性)
“OTC類似薬”とは、効能や成分は市販薬とほぼ同じだが、医療機関で処方され、保険適用となる薬のこと。約7千種類あるという。
ところが今年6月に、「OTC類似薬の一部を保険適用から外すことで、医療費を約1兆円削減できる」として、自公・維新の3党により“OTC類似薬の保険外し”の協議が進められてきた。
「今年4月、維新の猪瀬直樹議員が自身のサイトで、保険適用から除外を検討すべき28の薬剤名を公表。
このなかには、アトピー性皮膚炎等に使用するヘパリン類似物質や、解熱鎮痛薬のロキソニン錠、去痰剤のムコダイン錠、便秘薬のマグミット錠など、おなじみの薬が多数含まれていました」(全国紙記者)
今月20日、自民党と日本維新の会が連立政権を正式合意したことで、保険外しの流れは加速するとして危機感を募らせている患者や医療関係者は少なくないという。
開業医や勤務医らが加盟する全国保険医団体連合会(以下、保団連)が9月下旬から10月初旬に行った約5千600人の患者アンケートでも、95%がOTC類似薬の保険外しに“反対”だった。アンケートの自由記載欄には、冒頭の女性のように「月の薬代が何十倍にもなったら購入できない」「治療を続けられない」といった悲痛な声が並んでいる。
患者アンケートに協力した、保団連・事務局の山口浩太さんは、こう懸念を示す。
「今回、保険適用から外されようとしているヘパリン類似物質や、便秘薬のマグミット錠、解熱鎮痛剤のロキソニン錠といった薬は、希少疾患やがん患者が、薬の副作用を抑えるために長期間使用しているケースが少なくありません。
これらが保険適用外になると、『痛み止めは薬局で買ってください』ということになり、患者の精神的、経済的負担は計りしれないほど大きくなります」
皮膚科が専門のドクターケンクリニック(千葉県)院長の中村健一さんも、「患者が負担する薬代は20~30倍に増える」として、こう警鐘を鳴らす。
「ヘパリン類似物質は、クリニックで処方されると、薬価代は3割負担で60g66円ですが、薬局ではヒルマイルド等の名称で、60g約2千円前後で販売されています。さらに、湿疹・皮膚炎でに使用するリンデロンVG軟膏というステロイド剤も、処方されると3割負担で10g約83円、市販薬を買うと10g2千円前後。
重度のアトピー患者やがん患者は大量に使用しますので、20~25倍も負担増となると、治療を続けられなくなるケースも想定されます」
“保険から外れる”と聞くと、10割負担になるのか、と思いきや、そうではないのだ。
「処方薬の場合は厚生労働省が薬価を決めていますが、市販薬はメーカーが自由に小売価格を決められるので、何十倍にもなる可能性もあるのです」(前出・中村医師)
また、アトピー性皮膚炎等で通院している子どもがいる家庭では、「医療費は自治体の助成で無料だが、薬代だけは自己負担」になってしまう場合があり、結果的に現役世代の家計も圧迫することに。「私たち家族を殺す気なのでしょうか」とうなだれる患者もいる。
