「今までで一番強いハグをしていただきました」
11月2日(日本時間)、こうコメントしたのはドジャースの山本由伸選手(27)。2年連続のワールドシリーズ優勝を果たしMVPに選出された彼を讃えたのは、今季限りの引退を表明していた先輩選手だった。
山本を力強く抱きしめたのは、クレイトン・カーショー選手(37)。‘06年の入団以来ドジャース一筋を貫いた、いわば“ミスタードジャース”ともいえる存在だ。4日、LAでの優勝パレード後、ドジャースタジアムでの祝勝イベントのトリでカーショーは「チームメートのみんな、本当にありがとう。君たちは世界一の仲間」とねぎらい、最後にこう締めた。
「そして僕は分かってる。来年、また優勝するってことを。その時は、僕もみんなと同じように観客席から見守ります」
スポーツ紙記者は言う。
「実はカーショー選手は、山本選手を非常にかわいがってきました。山本選手がドジャースに入団してから2年の付き合いですが、彼らにとってはかなり濃い月日だったようです」
ドジャースの最古参と若手は、相思相愛の関係だったようで……。
「カーショー選手は山本選手について、『これまで見たなかでも最も効率的で美しい投球の持ち主の1人』と絶賛していました。息子のチャーリーくんに『彼を手本にするんだ。これが模範的な投球だよ』と指導するほど。
ただ、カーショー選手の愛情はこれに留まりませんでした。山本選手が昨年9月、怪我から復帰したばかりでカーブがうまく決まらない時期がありました。見かねたカーショー選手は『もっとリリースを前で離してみたらどうか』とアドバイス。これを受けて山本選手はカーブの感覚を取り戻したといいます。長くカーショー選手を取材する記者は、“カーショー選手が直接指導するなんて珍しい”と驚いていましたが、それほど山本選手の能力を見込んでいたということでしょう。キャッチボールの相手に山本選手を指名することもありました」(前出・スポーツ紙記者)
いっぽうの山本も、カーショーを敬愛してやまなかった。
「“トレーニングルームに行くと、いつもカーショーが先にいて練習している”と、熱心な姿に山本選手は舌を巻いていました。メジャー1年目のときから気にかけてくれたとカーショー選手の人間性にも感銘を受け、“自分もカーショーのようなエースピッチャーになりたい”と話していました。
大谷翔平選手(31)とドジャースの契約は10年ですが、実は山本選手はそれより長い12年。このままいけば、山本選手のほうが長くドジャースに在籍することになります。“ミスタードジャース”のカーショー選手は、その後継には山本選手がふさわしいと思い、目をかけていたのでしょう」(前出・スポーツ紙記者)
10月、カーショーについて「輝かしいキャリアを締めくくるにはワールドシリーズ優勝というのが一番似合う」と語っていた山本。その言葉通り、優勝に貢献した――。“ミスタードジャース”を託すのには心強い存在となったはずだ。
