栃木県上三川(かみのかわ)町の住宅で、富山英子さんが殺害された事件で、栃木県警下野署の捜査本部は、強盗殺人容疑で横浜市港北区に住む無職の竹前海斗容疑者(28)と、妻の美結容疑者(25)を逮捕した。また、竹前容疑者らに指示された実行犯として、4人の高校生が逮捕された。
連日のように報じられる“闇バイト”を使ったトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の犯罪だが、なぜ高校生が実行役になったのだろうか。元神奈川県警の刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は次のように分析する。
「警察は、身分を隠して闇バイトに応募し、犯罪グループに接触する『仮装身分捜査』をおこなっており、犯行グループはこれを警戒しているようです。元犯罪グループの人物に取材したことがありますが、その人物もこの仮装身分捜査をかなり心配していましたね。そのため、高校生限定で募集をかけて、刑事を紛れ込ませなくするケースが多いようです。そのうえ、高校生なら学生証もあります。1人、高校生を引き込むことができれば、あとは同級生を連れてこいと言える。高校生なら、言うことを聞かせやすいでしょう」(以下「」内は小川氏)
今回の事件では、実行犯とはほかに、指示役として竹前容疑者が逮捕されているが、神奈川県在住の無職の夫婦が、栃木県で強盗殺人を計画するのはいささか信じられない。小川氏は、竹前容疑者のさらにその上に“指示役”がいるとみている。
「竹前容疑者は、韓国を経由してタイに逃亡しようとして、空港で逮捕されました。もしかしたら、タイからさらにカンボジアに移動しようとしていたのかもしれません。それらの東南アジア諸国には、トクリュウの犯行グループの拠点があり、そこに逃げようとした可能性があります。本当の黒幕は、そうした海外にいるとみられますが、名前も連絡先も居場所も、わからないことが多いです。
今回の事件では、富山さん宅を“下見”をしていた渡辺昌英(まさひで)容疑者が事前に逮捕されていました。本来なら、そこで強盗の実行計画は中止にするはずですが、『失敗してもよいからとにかくやれ』と指示され、実行したとみられます。実行犯が失敗しようが逮捕されようが、黒幕にとっては関係ない。なぜなら自分は、逮捕されないとたかをくくっているからです」
なぜこうした凄惨な事件は減らないのか。
「闇バイトの事件数は、じつは以前より減っているんです。相変わらず闇バイトの募集はありますが、応募する側が、危険性を理解してきたからだと思います。高額のバイト募集も減っています。高額だと危険なバイトだとわかってきたからです。むしろ、報酬が1万5000円ぐらいで募集をかけているものが増えています。
とはいえ、警察は闇バイトの危険性をもっとアピールすべきです。栃木の強盗殺人事件については、毎日のようにワイドショーで報じられていますが、今回の実行犯になった高校生や、20代の若い世代はテレビのニュースをほとんど見ていません。だからこそ警察は、YouTubeなど、若い世代が接するSNSで、闇バイトへの警告を発信すべきでしょう。闇バイトにかかわりそうになったら、すぐに警察に相談してほしいと。警察は必ず保護すると言ってほしいです」
警察庁の発表によると、2025年11月末時点で闇バイトに応募したとして保護した人の数は、計544件に上ったという。事前に犯罪を防ぐためにも、周知の強化を進められるべきだ。
画像ページ >【写真】生々しい強盗の痕跡 塀に残された足跡(他4枚)
