6月10日、衆議院議長公邸で皇族数確保策に関する全体会議が開かれ、皇族数の確保をめぐる「立法府の総意」がとりまとめられた。
「天皇陛下から秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下という皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないことについては、立法府としてもこれを確認するとしたうえで、(1)女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ案、(2)旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える案、が『いずれも了』とされました。
一方で、(1)の案に付随する、『女性皇族の夫や子どもを皇族とするか』という点に関しては、明記は見送られました。政府はこれを受け、皇室典範改正案を6月下旬までに閣議決定し、再度国会に上程する方向で調整が進められています」(全国紙政治部記者)
「立法府の総意」のなかには、以下のような記述がある。
《なお、象徴天皇制が国民の総意に基づくものであることに鑑み、国民の理解を得るべく、また、我が国の歴史・伝統を踏まえ(中略)慎重に制度設計を行うものとする》
皇室担当記者は、“養子案”に対して反発の声が広がっている現状があると指摘する。
「日本国憲法の第一条、《天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く》を踏まえた文章です。しかしながら、今回とりまとめられた『立法府の総意』については、特に(2)旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える案に対し、国民から反発の声も多く上がっています。
メディア各種の世論調査では、女性天皇への賛成の割合がおよそ70%ほどを占めているなか、女性天皇に関しては議題に上がらない状況が続いていました。そんななか、6月8日、森英介衆院議長が『(養子に)男の子が生まれれば、その子は皇位継承権を持つ』と発言し、波紋を広げました。
後日森議長は、『言葉足らずだった』と陳謝しましたが、《直系の愛子さまがいらっしゃるのに、なんでそこまでして「男」じゃなきゃダメなのかわかんない》《どうして天皇家のお子様を差し置いて600年前に枝分かれした旧宮家の一般人の子孫がしゃしゃりでてくることができるのだろうか?》などと、SNS上を中心に批判が殺到しており、『国民の総意』からはほど遠い現状があります」
象徴天皇制に詳しい名古屋大学大学院教授の河西秀哉さんは、今回取りまとめられた「立法府の総意」では、男系男子による皇位継承の堅持という形が鮮明に打ち出されていると語る。
「旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える案自体が、それを象徴しています。これは、悠仁親王殿下のご家族に男子が産まれなかった場合、その養子のところに産まれた男子が天皇になればいいという発想です。“天皇と血さえ繋がっている男であれば誰でもいい”“とにかく男系男子で継承する”という『万世一系』のイデオロギーが全面に出ていると思います。
『国民の総意』は、むしろ平成以降に確立していった、“国民とともにある天皇像”にあるのではないでしょうか。国民を思い、多様なご公務を担われてきた天皇皇后両陛下、上皇ご夫妻をはじめとする皇室の方々を国民は支持しているのです。だからこそ、天皇家の長女である“愛子内親王殿下に天皇になってほしい”という声の広がりにつながっているようにも考えています」
「立法府の総意」は、なぜここまで「国民の総意」と乖離してしまったのだろうか。
「特に政権与党である自民党や日本維新の会などが、極めて復古的で国家主義的な政策の方向性を打ち出していることが大きいのではないでしょうか。明治期に定められた“男系男子に限った”皇位継承のあり方を意地でも固守しようとする姿勢からは、そのころ諸外国に勝っていた輝かしい時代のあり方、“強い日本”をとにかく取り戻したいという思いが見受けられます。
こうした姿勢には、高市政権が成立を目指す国旗損壊罪にも似た印象を覚えます。女性天皇を含め、国民に寄り添う天皇では、彼らが目指す国家像に合わないのでしょう。さらに言えば、本音では“男が上で女は従うもの”というミソジニー(女性蔑視)的感覚が、保守系の議員のなかに根強くあるのだとも感じてしまいます」(前出・河西さん)
11日、宮内庁の黒田武一郎長官は定例記者会見で、「立法府の総意」の内容を天皇陛下に報告したと明かしたうえで、「国民の総意に基づくお立場から国民の皆さまの理解や納得を得られるものとなるよう願われているのではないかと拝察する」と語っている。明らかに乖離している皇室の将来に関する「立法府の総意」と「国民の総意」が一致する未来は訪れるのだろうか――。
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