6月19日に発生した東京都北区立滝野川第三小学校の火災。児童と教職員ら11人が重軽傷を負った火災では、女性教員が「サーキュレーター(送風機)を使って洗濯物を乾かしていた」との趣旨を警視庁滝野川署に説明していたことがわかった。
4階建ての校舎は損傷が激しく、同校の高草木政浩校長は臨時の保護者会で建て替えを検討しているといい、完成までおおむね5年を見込んでいると明らかにした。また、7月初めごろに3年生以上は近隣の学校に分散して登校する方向で調整していることも報告した。
警視庁では引き続き失火容疑と火災との因果関係を捜査しているといい、「女性教師はこれから刑事責任、行政処分、民事責任の3つの法的・社会的責任が問われます」と指摘するのは、芝綜合法律事務所の弁護士・牧野和夫さん。
「過失によって建造物を焼損した場合に『失火罪』(刑法第116条)または『重過失失火罪』(刑法第117条の2)などの刑事責任が火災を起こした個人に問われます。失火罪は罰金50万円に対して、重過失失火罪は3年以下の拘禁刑(懲役・禁錮)または150万円以下の罰金というかなり重い刑罰が科されます。通常の不注意(過失)であるか、わずかな注意を払えば火災を防げたのにもかかわらず、それを怠った「重大な過失」と判断されるかどうかが『失火罪』と『重過失失火罪』の区別のポイントになります」(牧野さん、以下同)
今回のケースは電気ストーブで洗濯物を乾かす行為が問題視されている。
「NITE・製品評価技術基盤機構が電気ストーブの周辺に洗濯物など可燃物を置くことについて、火災の危険があるとして繰り返し注意を呼びかけていますので、わずかな注意を払えば火災を防げた場合には「重過失」と認定され『重過失失火罪』が適用される可能性が高いと思われます。仮に実刑は回避されたとしても執行猶予付きの拘禁刑が言い渡されることもあるでしょう」
それだけではない。今回の火災が女性教員の重大な過失と認められると、「地方公務員法第33条信用失墜行為の禁止」に抵触し、最も重い処分が科せられる可能性もある。
「公務員の懲戒処分の種類は、法律で定められており、約200平方メートルの校舎焼損と11人の負傷者という被害規模を考慮すると、最も処分が重い懲戒免職になることも十分考えられます。
それと同時に、電気ストーブで洗濯物を乾かす行為が前から行われていて、学校側が止めさせる努力をしなかったとしたら、学校(地方公共団体)側の重過失責任が問われる可能性があります。また、火災のとき、女性教師は音楽教室の窓から外のひさしに児童を避難させる判断をしたと言われていますが、教室には窓から地上へ降りる避難器具『救助袋』があったはずです。
報道によりますと、それがうまく使うことができなかったと書かれていました。その点は学校(地方公共団体)側の重過失責任が問われる可能性があると思います」
そして民事の損害賠償責任については、原則として公務員が職務上、故意や過失によって他人に損害を与えた場合、被害者は国家賠償法1条1項に基づき、学校(地方公共団体)に対して損害賠償を請求することができる。
また、失火の場合には、火災被害から失火者を保護する目的で定められた失火責任法が適用され、公務員が失火(過失による火災)を起こして他人に損害を与えた場合でも、国や地方公共団体は原則として損害賠償責任を負わない。ただし、公務員に「重過失」があった場合は失火責任法の免責が適用されず損害賠償責任を負うことになる。
つまり、わずかな注意を払えば火災を防げた「重過失」があったか、通常の注意を払えば火災を防げた「過失」があったかで民事の損害賠償責任が大きく異なる。
「重過失」と認められると火災保険は適用できなくなるほか、失火責任法の免責が適用されないので、校舎の解体・建て替えにかかる費用や負傷した児童の治療費、約40人の児童の精神的損害や慰謝料など、多くの損害賠償責任を負う恐れがあるというのだ。
「さらに、その公務員に『故意または重大な過失』があれば、学校(地方公共団体)は一部または全部をその公務員に返還請求(求償)できますので、『重過失』かどうかで女性教師の損害賠償責任は大きく異なります」
女性教師は避難する際に転倒して骨盤を折って現在も入院中で、児童や教員の安否を尋ね、「深く反省している」との言葉を口にしているというが、不注意が招いた代償はあまりにも大きい。
画像ページ >【写真あり】出火元教室は窓が吹き飛び…生々しい火災の痕跡(他4枚)
