「責任ある積極財政」を基に来年度の概算要求が143兆円超に(写真:共同通信) 画像を見る

「政府・公的部門の根深い問題構造と、金利上昇という新たな経済状況を無視した膨張だ」

 

そう警鐘を鳴らすのは、元財務官僚で明治大学公共政策大学院の田中秀明教授(65)だ。

 

高市早苗首相(65)が2027年度を「責任ある積極財政元年」と位置付けたことで、国の一般会計予算の概算要求総額は過去最大の143兆円台に達した。

 

概算要求はあくまで要求であり、年末に固める予算案では金額が減らされたり、認められなかったりすることもある。しかし、「強く豊かな日本」投資枠などの目玉政策や、金額を提示しない事項要求も相次ぎ、突出感が極めて強い。

 

「そもそも民間企業であれば、利益を上げられなければ評価されず、経営責任を問われます。ところが、政府や役所の場合、目標を達成できなくても組織のトップや担当者が解任されるわけではない。むしろ『より多くの予算を獲得し、使い切った者ほど評価される』という構造が根底にあるのが大きな問題なのです」(田中教授、以下同)

 

これまでは当初予算で格好がつくように、補正予算で効果の乏しい予算や優先順位の低い政策を手当てする手法が横行していた。今回は「原則として補正予算はやらない」との方針が出されたことで、従来なら補正に積まれていた予算まで一括して当初予算の要求へ雪崩れ込んだ。

 

これが143兆円超という膨大な数字のカラクリである。

 

さらに高市首相や政権側が「シーリング(天井)にとらわれず要求せよ」との方針を掲げたことで、各省庁は待っていましたとばかりに要求を膨らませた。

 

厚生労働省は、少子高齢化に伴う社会保障関係費の自然増として、前年度より1.5兆多い36.6兆円を要求した。

 

地方のDX推進に対応するため地方交付税などを4%増額した総務省は、過去最大の約21.9兆円を要求している。

 

防衛省はAIや無人機を活用した「新しい戦い方」を推進するため、過去最大の要求額8.9兆円を決定した。

 

経済産業省は、当初予算の約3兆円から2.5倍の約7.8兆円を要求した。このうち「強く豊かな日本」投資枠には約6兆円を盛り込んでいる。「強く豊かな日本投資枠」の内訳は、半導体やAI、ロボットの分野に約1.4兆円、AI半導体基盤強化などに約5300億円となっている。

 

元経産省事務次官で、現在は内閣総理大臣秘書官を務める飯田祐二氏(63)が力を入れてきたのが半導体産業の再興で、政府と日本の大手企業が設立した「ラピダス」に対し、1500億円を盛り込んだ。補助金などを含めた民間への国の支援額は約3兆円にのぼる。

 

このほかにも、こども家庭庁では若い世代の結婚や出会いを支援するため、マッチングアプリの普及啓発などに関連する予算を計上した。

 

批判が殺到している内閣広報室の予算は、今年度予算(約7億円)と比べて10倍超の約72億円を盛り込んでいる。前出の田中教授はこう語る。

 

「また、国会の審議では予算や決算の本質的なチェックはなく政治家のスキャンダル追及になっています。会計検査院も金額の合致(金勘定)が中心で、政策の効果そのものを検証する機能は乏しいのが問題です。

 

少子高齢化が進むなか、最も必要なのは構造改革のはずです。しかし現行の予算要求を見る限り、各省庁の『お題目』のような作文と、族議員や関係業界への利益誘導、効果が疑わしい補助金のばらまきが目立ちます」

 

大きな問題は歳入(税金)では補いきれないことで、ABC経済研究所代表エコノミストの熊野英生氏によると、財政赤字が43兆円に膨らむ見通しであることを指摘している。

 

低金利時代であれば、借金を重ねても表面上の利払い負担は抑えられていた。しかし、足元では長期金利が上昇傾向に転じている。金利が上がれば国債の利払い費は急速に膨らみ、民間では住宅ローン金利の上昇などを通じて国民生活に影響する。

 

「世の中にフリーランチ(タダの飯)はありません。財政赤字が増えても、将来への投資、特に人への投資が増えるならばよいですが、そのような投資が実際にできるでしょうか。高市政権は17分野で投資を拡充するとしていますが、それは、全ての関係者にお金を配分することを意味します。政治家にとっては、選挙に勝つことが重要で、そのために予算を配るのです。効果が乏しければ、その負担は国民が負うことになります」

 

膨らみ続ける予算に対し、チェック機能は働いていない。過去の政策を評価し、「成果が上がらなかったから予算を削減・廃止する」というインセンティブは役所にはない。政策評価を行えば自分たちの予算が削られるため、実効性のある振り返りが行われることはなく予算が決められる。高市政権は、各府省に対して予算や租税特別措置(税負担を軽減するもの)の見直しも求めたが、予算の節約額は極めて少なく、各府省はまじめに対応しなかった。

 

危機が目に見える形にならないまま、日本は“ゆでガエル”状態のようにジワジワと沈没に向かっている。国民自身が「そのツケを誰が払うのか」に関心を持ち、厳しい目を向けていくことが求められている。

 

画像ページ >【写真あり】高市政権は何をそんなに広報するというのか(他6枚)

出典元:

WEB女性自身

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