「検挙率は、警察の捜査対象となっている事件の数(認知件数)に対しての、検挙件数の割合です。分母である認知件数には、万引きなどの比較的軽い罪も含まれるため、大都市圏は検挙率が低くなる傾向があります」
警察に詳しいジャーナリストの寺澤有さんは、今年8月に発行された「警察白書」の「検挙率」の背景についてこう語る。同白書には、例年通り都道府県別の検挙率が掲載されている。
検挙率の全国平均が38.9%となるなか、ベスト1位は74.3%の山形県、ベスト2位が72.2%の福井県、ベスト3位が67.8%の島根県だった。一方で、昨年に続きワースト1位となったのは、検挙率25.4%の大阪府である。続くワースト2位は29.4%の愛知県、ワースト3位は31.2%の栃木県という結果になった(ワーストランキング表参照)。
「今回も、ワースト1位だった大阪府は、例年、検挙率が低いことで知られています。さらに、自転車泥棒や無銭飲食などは被害の届け出もされないケースが多いため、実際の検挙率はさらに低いのが現状でしょう」(寺澤さん、以下同)
元警察官も「都道府県警の幹部にとっては、成績表のようなもので気にしている」と語るように、警察組織にとって、この検挙率は特別な意味を持っているようだ。だからこそ、成績を求めるあまりに歪んだ方向へ進むこともあるという。
「まず、分母である認知件数を減らせば、検挙率は上がります。警察が純粋に防犯に力を入れてくれればいいのですが、大阪府警は2008年~「2012年の5年間で、窃盗や器物損壊などの犯罪の認知件数を8万件も計上しなかったことが、2014年に大きなニュースになりました」
大阪府警では長くワースト1位が続いたことから、現場担当者が被害の認知件数を計上しにくい雰囲気があったと、報じられている。
■「検挙率を追うあまり、簡単な事件ばかり追うのが現状」
さらに、分子である「検挙数」を意図的に増やす手法も存在するという。
「簡単に言えば、職質に力を入れて自転車泥棒や下着泥棒などを捕まえたりすることです。窃盗犯を見つけることは重要です。しかし、数字の見栄えを良くする目的で比較的軽い窃盗犯ばかり検挙するのは問題でしょう。
実際に、検挙率を上げるために、警察が軽微な犯罪の捜査にばかり力を入れることがあるのか、ある県警本部長に聞いたことがあります。てっきり否定されると思っていたのですが、意外にもあっさりと『そういうことはあるだろうね』と肯定したので、驚かされました。
特殊詐欺においても、末端の受け子ばかりを捕まえていますが、それでは一時的に検挙率は上がりますが、組織の上層部に捜査のメスを入れなければ犯罪は減りません。検挙率という数字を追い求めるあまり、簡単な事件ばかり追うようなことになっているのが現状です」
検挙率至上主義が生み出す歪みは、これだけにとどまらない。現場ではより悪質な“高等テクニック”が使われることもあるという。
「下着泥棒などの比較的軽い事件の容疑者を検挙したら、未解決の類似事件の容疑も被せて検挙したことにするケースです。近所で起きた2、3件の被害を認めさせても、結局、不起訴になったりして、罪が重くなることはありません。『あとは悪いようにしないから』とそそのかす方法は、たとえば、かつて北海道警の裏金問題を告発した元警視長の故・原田宏二さんなどから聞いています」
治安を維持し、犯罪を正しく解決に導くのが警察の本来の使命。見栄えの良い数字を追い求めるのではなく、重大な事件の解決や犯罪の発生を未然に防ぐことに力を注いでほしい。
画像ページ >【一覧あり】各都道府県の令和7年の犯罪検挙率の状況(他1枚)
