「『白い巨塔』に出演したのは、ボクがデビューしてから10?11年たったころで、“殺人的なスケジュール”に入ってきた作品。撮影中に1日だけ休みがあったのですが、そこにレギュラー出演していた『必殺』シリーズのスタッフから『スペシャル版をやるので、1日だけ参加してください。負担が少ないよう、最高の待遇にしますから』と声をかけていただいたんです。断腸の思いでお断りしたのは、それだけ『白い巨塔』への思い入れが強く、真剣に向き合いたかったからです」
こう語るのは村上弘明さんだ。原作小説に出合ったのは、浪人時代だったという。
「ボクは医学部を目指していて、そのとき友人から『医学部に入るのだったら、面白い小説があるよ』って言われて読みました。人間の生々しい欲望の渦がひしめき合っている大学病院で、有能で野心家な財前五郎という主役に魅かれたんです」
ドラマは前後編の2話だったが、合計すると5時間の超大作。制作発表のとき、プロデューサーが記者に向かって「テレビ朝日が今年、いちばん力を入れて、いちばん制作費をかけているドラマ」と公言するほどだったという。
「一つの作品どころか、社運を背負うようなプレッシャーもありました。出演者も豪華で、若輩の私が主演するのは恐縮するくらいでした」
撮影期間は2カ月ほどだった。役に集中するためホテル住まいをして、とにかく台本と向き合ったという。
「時間があれば、当時の付き人とセリフ合わせをしていました。ただ、財前五郎というキャラは、威圧感があって、傲慢で、吐く言葉が強烈。その人格が私に乗り移ったのか、付き人も距離をとるようになったんですね。役作りとしては成功したのではないかと思います(笑)」
精神面ばかりでなく、体力面での勝負でもあったと振り返る。
「台本の順番どおりに撮影を行う順撮りでした。というのも、財前はドラマの最後、がんで亡くなります。それに向けて、自然と痩せていかなくてはいけない。朝食は普通に食べて、昼食もロケ弁。でも夕飯はサラダだけにして、最終的には6kgほどのダイエットに成功しました。ただ、やっぱり食生活が偏って免疫力が低下したのか、後半は風邪気味なことが多かったです。24時間体制で財前五郎という一つの役になりきるのは、俳優として得難い経験でした」
『白い巨塔』(テレビ朝日系・1990年)
教授選挙や医療ミス裁判を通して医学界の腐敗を鋭く追求した山崎豊子の同名の長編小説が原作。何度も映像化され、その度に話題となる不朽の名作。村上弘明版は全2話のスペシャルドラマとして制作され、2026年8月にもCSのホームドラマチャンネルにて再放送された。
【PROFILE】
むらかみ・ひろあき
1956年生まれ、岩手県出身。大学生のときに『仮面ライダー(スカイライダー)』の主人公役でデビュー。以後、数多くのドラマや映画で活躍する。
画像ページ >【写真あり】イケメンすぎる! 『白い巨塔』出演当時の村上弘明(他1枚)
