「消費者の価格への関心度が上がっているなかでは、(8%から1%へ)7%分下がった喜びというのは、多分、1カ月もたない」
「2年後に上がるときのダメージはすごい大きい」
10月27日、政府が来年4月の実施を目指す飲食料品の消費税減税を巡り、衆議院財務金融委員会は、テレビの情報番組などでもお馴染みのスーパーマーケット「アキダイ」の秋葉弘道社長(58)を呼んで、参考人質疑をおこなった。
秋葉社長は初の国会出席にもかかわらず、庶民目線で堂々と持論を述べたことが大きな話題に。
トレードマークのエプロンを脱ぎ、ジャケット姿で登場した秋葉社長。委員会終了翌日、本誌の直撃インタビューに応じ、急転直下の国会出席の舞台裏から、発言に込めた真意、そして一部で囁かれる“政界進出”について語ってくれた。
■「数字やデータではなく、現場の“心”を伝えたかった」
今回の参考人招致のオファーは、なんと当日の2日前だった―――。
「連絡があったのは直前の25日日曜日。本当に急な話でした。与野党双方からの推薦のような形で、最終的には国民民主党の玉木雄一郎代表(57)から直接の打診がありました」(秋葉社長、以下同)
急なオファーに驚きつつも出席を決断した背景には、強い危機感があったから。
「国会の政策議論はどうしても数字やデータ、理論ばかりに偏りがちです。でも、商売や暮らしにあるのはそれだけじゃない。“現場の心”や生活者の実感を自分の言葉で直接伝えられるなら、行く価値があると思ったんです」
国会に向かう直前までお店に立っていたので、エプロン姿のまま向かうことも考えたが、胸元に店名が入っているため宣伝と受け取られかねない、そう判断した秋葉社長は、急遽店で着替えてジャケットを羽織り、委員会に臨んだという。
「緊張はまったくしなかったですね。むしろ言いたいことが山ほどあったので、早く話したいとウズウズしてました(笑)。意見を述べる途中で“そろそろ終了してください”と紙を出されたくらいで」
と苦笑いを見せる。最も訴えたかったのは、2年間に限定された減税がもたらす副作用と、その先にある生活へのダメージだ。秋葉社長は消費税減税そのものを反対しているわけではない。
「税率が下がればお客さんの出費が減り、買いやすくなる。販売現場としてもありがたい話です。ただ、7%下がったうれしさなんて、1カ月もすれば当たり前になってしまう。物価高が続くなかで2年が経ち、慣れたころに再び8%へ戻されたらどうなるか。その時のショックと負担は計り知れません」
「アキダイ」を始めて35年。かつては特売前の行列は100人ほどだったが、近年の物価高で今は200人近くに膨れ上がっているという。消費者が1円、2円の差に敏感になっている現状を日々痛感しているという。
「私たちは、家庭のテーブルからおかずが一品でも減らないよう、毎日必死に仕入れや特売の工夫をしています。
一度減ってしまったおかずは、簡単には戻りません。食卓の品数が減れば栄養バランスが崩れ、5年後、10年後の国民の健康被害や医療費増大にも繋がりかねない。一過性の減税は一時的にうれしくても、将来への“安心”にはならないんです」
さらに、税率が短期間で上下することによる小売現場の値札貼り替え作業の負担や、減税効果が本当に隅々まで消費者に還元されるのかという制度上の課題についても、現場を知る者として疑問を投げかける。
では、巨額の減税財源があるのなら、どこへ充てるべきなのか。秋葉社長が最も力を込めて主張したのは、食の土台を支える「一次産業・生産者への支援」だった。
「円安や世界情勢の影響で、肥料や家畜の飼料価格が高騰し、農家や畜産業者は赤字に苦しんでいます。自分の代で赤字なのに、子供に“継いでくれ”とは言えない。このままでは生産者がどんどん減ってしまいます。
単発の現金を配るのではなく、肥料や飼料を国が安く安定して提供できるような恒久的な支援の仕組みを作ってほしい」
農産物は工業製品と違い、価格が上がったからといってすぐに増産できるものではない。秋葉社長は、AIなどを活用して全国の需給計画を取りまとめ、極端な価格暴落や高騰を防ぐ体制づくりも提言した。
「生産基盤さえしっかり守られれば、将来的な食材の高騰や供給不足を防ぐことができる。5年後、10年後に花が開くような生きたお金の使い方をしてほしいんです」
■政界進出の色気は「ゼロ」現場と生産者の声を繋ぐ架け橋へ
国会という大舞台で堂々と持論を展開したことで、周囲からは早くも“政界進出”を期待する声が上がっている。実際、過去には他党の大物議員らから国政挑戦を打診された経験もあるという。しかし、本人の意志は極めて明快だ。
「政界進出? まったく魅力は感じていません。政党に入ってしまえばしがらみが増え、自由に動けなくなってしまう。誰かの票集めや地道な党勢拡大に縛られるのは私の性分に合いません」
秋葉社長の視線は、あくまで“商売”と“生産地”に向いている。
「今はスーパーの仕事が本当に楽しいんです。
それに、私は今、山形や石川、熊本、群馬など全国各地の産地を回って生産者と対話し、講演もさせてもらっています。
消費者のお客さんも大切ですが、食材を作ってくれる生産者も同じくらい大切。どちらか一方に偏るのではなく、双方が幸せになれるバランスを考えていきたい」
国会議員という肩書を持つことよりも、エプロンを締め、市場に通い、土に触れる生産者と買い物を楽しむ消費者の双方の思いをありのままに代弁する―――。名物社長は、これからもブレることなく現場の最前線に立つと宣言。
国会初の“エプロン議員”誕生はまだまだ先の話のようだ。
画像ページ >【写真あり】「1%に減税したときの喜びは1カ月もたない」という秋葉社長(他1枚)
