10月2日に開かれたG7オンライン首脳会議を、高市早苗首相(65)が欠席した問題が波紋を広げている。欠席理由について、高市首相は国会で説明したものの、政府側の説明には不明な点が残されている。
政治部記者が解説する。
「高市首相は10月16日の参議院予算委員会で、開催時刻が直前まで確定せず、通信回線や機材の準備が間に合わなかったと説明しました。また、議題が主に米欧間の問題だったため、代理出席でよいとの説明を受けたとも述べています。
一方、茂木敏充外相(71)は10月27日の参議院外交防衛委員会で、会議が約30分と短く、議題や事前調整の状況などを総合的に判断し、外務審議官の代理出席が適切だったと説明しました。
しかし、首相が出席しないと決まった具体的な経緯は明らかになっていません」
G7首脳会議の欠席は、今後の日本外交にどのような影響を及ぼすのかーー。
「最初にこの報道を知ったときは、『日本がそんなことをするんだ』と驚きました」
そう語るのは、外交問題に詳しい新外交イニシアティブ(ND)代表で弁護士の猿田佐世氏だ。驚いた理由をこう続ける。
「日本が単独で何かを主張するよりも、その一員としてほかの国々と一緒に行動することで、発言力を強めることもできるのがG7です。
また、日本政府はG7について、欧米ばかりの中に日本だけが入っているという “プライド”を示す場としてふるまってきました」
■5分後、10分後でも会議ができるようにすべき
欠席理由についても、猿田氏は疑問を呈する。
「問題は二つあります。一つは、嘘をついてはいけないということ。機器が整っていなかったとか、外務省から出席しなくても大丈夫だと説明されたとか、二転三転しています。政府内部で説明のすり合わせもできていません。
もう一つは、本当に急なオンライン会議に対応できないのなら、日本の危機管理システムは大丈夫なのかという問題です」
大規模テロや震災など、緊急の首脳会議が必要になる事態はいつ起きてもおかしくない。
「総理大臣なら、必要になったときに5分後、10分後でもオンライン会議ができるよう、設備を整えておかなければ困ります。それを『機器の準備ができませんでした』という、後にすぐ嘘とわかるような答弁で済ませてしまう。高い支持率に支えられ、それでも通用するというおごりが出ているのではないでしょうか」
さらに、約30分という会議時間についても、猿田氏は「決して短いものではない」と、こう続ける。
「世界でも特に忙しい首脳たちが、30分でも集まって意思を確認できる。それがオンライン会議の利点です。『30分だから』『1回しか発言できないから』というのでは、オンライン会議を活用する意味がありません」
高市首相は、議題が主に米欧のディーゼル価格問題だったことにも言及している。しかし、猿田氏は日本に直接関係の薄い議題でも出席する意味があると説く。
「例えば日本が北朝鮮の拉致問題をG7で議論したいとき、イギリスやドイツ、フランスが『うちは関係ない』と欠席したらどう思いますか。
アメリカと日本だけが首脳を出し、ほかは外務審議官が代理出席する。そんなことになれば、G7が発表する声明の重みは地に落ちます。日本はアジアの問題を提起できる唯一のG7参加国でもあるんです」
■アメリカには必死なのに、G7ではなぜ気合が違うのか
国際会議では、首脳同士の人間関係を築くことも重要だという。猿田氏は、自身の経験を交えてこう語る。
「私自身、国際会議の場では、会議のちょっとした合間にも各国の代表者に一生懸命話しかけます。でも、カナダ人やイギリス人、英語ネイティブ並みのドイツ人などが、ものすごい勢いで英語を話していると、ついていくのは本当に大変。ニコニコしながら必死に聞き取って、途中で会話に入っていく。私もすごく頑張って人間関係を作っていきます。
高市さんの英語力が実際にどの程度なのかは存じ上げませんが、国際会議で存在感を示すのは簡単ではありません。だからこそ、一回一回の会議に出席して、努力して、努力して、やっと人間関係ができるものなんです」
ただし、英語力だけが問題になるのではないという。
「首脳会議では同時通訳も入りますし、事前の準備もしてもらえます。大切なのは、相手の話を聞き、情報を交換し、関係を築いていくことです。
G7は官僚レベルで根回しした案件について、最後に首脳同士がニュアンスを調整したり、直接頼み込んだりする勝負の場所でもあります。外交は、最後は人間と人間の、その場での反応によってつくり上げられるものなんです」
一方、猿田氏が問題視するのは、米国との二国間外交と多国間外交への姿勢の違いだ。
「高市さんはドナルド・トランプ大統領(80)との会談には非常に力を入れています。ところが、G7のような多国間外交になると今回のような対応になってしまう。
カナダのマーク・カーニー首相(61)は、ミドルパワーの国々が連携して国際秩序を守ろうと呼びかけています。そうしたなかで、アメリカとの二国間外交にはあれほど力を入れるのに、G7ですら、どうしてこんなに気合の入り方が違うのでしょうか」
「日本の経済力が相対的に低下するなか、日本にとってG7の重要性はむしろ増している」と猿田氏は語る。
「日本はかつて世界第2位の経済大国でしたが、来年にはGDPで世界第6位に転落すると予測されています。経済力だけで国際的な存在感を示せる時代ではなくなってきている。だからこそ、G7を含む多国間の外交の場を大切にしなければいけない。
国力があるときは、それだけで存在感を示せるかもしれません。でも、そうではなくなったら、本当に丁寧に人と人との関係を紡いでいけるかどうかの勝負だと思います」
画像ページ >【写真あり】高市首相と茂木敏充外務大臣の欠席理由の説明は微妙に異なっている(他2枚)
