第18話 母の激しい拒絶
母の<初期のアルツハイマー病である>と言う所見から、早2週間がたった。
この時点で、母は、最初に一緒に住み始めた頃のような鬱症状から脱却し、明るく、ほがらかに日常生活を送ってくれていた。
これは、会話の効用もあるのではないか。
母と会話をする、これが、最重要課題だとつくづく思う。
ただ、母の感情の起伏や繊細さは、まるで子供のようだった。いや、もう子供返りをしているのかも知れない。この頃友人に
「本来ならば、親が子供にカメラを向けるのにねえ。」
と言われたのだが、まさしく、私が、親の立場になりつつあり、母は、子供の立場に戻っている。そういう観点からすれば、親が子供の記録を撮っているということになる。母は、いずれ、おしめをするようになるかも知れない。これだって母は、さんざん私のおしめを替えてくれた訳で、今度は、私が母のおしめを替える番になる、ということなんだろう。
まるで映画「ベンジャミン・バトン~数奇な人生~」のようではないか!
人生の一巡(フル・サークル)だ、なんて、昔から空想癖の強かった私は、考える。
ただ、目の前に迫ってきているのは、母を今一度、脳神経外科に連れ出す、ということだった。3mgのアリセプトが、母に合っているのかどうか、診てもらうためだ。
しかし、これは、私の空想の世界の中での展開のように、そう、うまくは、いかないだろうなあ。
いや、かなりやっかいになりそうだ、という予感があった。
ドキュメンタリー映像作家 関口祐加 最新作 『此岸
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