第46話 母の黒い猜疑心
母の混乱の最たるものは、日にち、曜日、お金、そして、季節だろう。
毎日、毎日、家で引きこもっているので、何日かも何曜日かもあやふやになっている。さらに、母は、季節も分からなくなりつつある。
2011年元旦。
もちろん、母は、元旦であることを忘れていた。昼過ぎになって、トイレに起きて来た母は、外出の支度をし終わった私と息子を見ると、途端に機嫌が悪くなった。
機嫌が、悪くなる理由は、分かっている。
私が、妹一家と一緒に出かける、というだけで、機嫌が、悪くなるのだ。このことに気が付いたのは、2年ほど前だった。
毎年12月から1月にかけて、息子と一緒に横浜に滞在する期間は、決まって日曜日になると妹一家と出かけていた。しかし、帰宅すると、母の機嫌が、悪く閉口させられた。
理由が、どうやら私が妹一家と出かけることだ、と分かってからは、息子だけ行かせるようにした。息子だけ出かけるのは、大丈夫、というのも面白い。
今年の元旦も例外ではなかった。
ただ、元旦だけは、関口家のお墓参りをし、神社にお札をもらいに行くという恒例行事が、あるので、私も妹一家と出かけることにしている。
内心、来年は、行けるかなあ、と思いながらー。
思えば、母の猜疑心は、私が、妹一家と外で楽しい思いをしているのではないか、という1点だけだ。
そして、この黒い猜疑心は、アルツハイマー病発症後、かなり強く出てきている。
妹と妹の連れ合いに対して、絶対に許せないという気持ち。
そのマイナスの気持ちが、母の猜疑心を大きく膨らませる。
やっぱり、アルツハイマー病発症前の親子関係が、何らかの形で解決していないので、そのことを引きずってしまうんだろうなあ。
いや、私だって妹と同じ穴のムジナだ。
ただ、そんな母と向き合おうとは、している。
しかし・・・私の手には、カメラがある。
そんな私に時々気が付く母が、大いに嫌がるのは、ムリもないことだ、とは思いますねえ。
2011.2.26 (土)更新予定!<動画45:アルツハイマー病の母抜きの元旦の外出>