【動画49】アルツハイマー病の母と息子が、オーストラリアに戻る日
母の混乱ぶりは、息子が、シドニーに戻るその日まで、続いた。
母は、心の中で息子が、自分の傍を、日本を離れる事が、信じられず、それが、<帰る>という事実を拒否した、としか説明がつかなかった。
この映像の中の母は、息子が、シドニーに戻る事に対して、ひたすら納得出来ない、腑に落ちない、そんな感じだ。
一方、息子は、俯いて、私が、シドニーで使っていた携帯電話をいじっている。
そんな2人を撮っている私も、何となく気まずく、いつカメラを回すのを止めようか、と思っているところに母の爆弾宣言が、飛び出した。
「(私に向かって)子供に棄てられたのか。」
とっさに私は、母が、私に棄てられた、とずうっと思ってきているのだ、と気が付いた!
そうだったのか・・・
私は、カメラを回し続け、今度は、間髪を入れず、息子に聞いてみた。
「(お母さんのことを)棄てたの?」
息子の返事は、ウン、棄てた、だった。
この答えは、私をホッとさせた。
そう言った後、息子は、少し照れながら、「分かんない。」と言った。
天晴れ、息子よ!
こんな時に、答えづらいことを平気で聞く母を許せ。
ああ、この子もクリエーターの仕事をするようになるのではないか、そんなことを思った瞬間だった。
しかし、息子と別れる瞬間、ふて腐れたまま、こたつから出ずに挨拶した我が母も、これまた天晴れだったなあ。
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