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連載第12回
今、なぜ、キャロライン?

いよいよキャロライン・ケネディ新駐日アメリカ大使が着任します。
以前、ユアサは長年の親友フォージャー弁護士を通じて会ったときの、彼女の圧倒的美しさをこの連載で述べたことがあります。
しかし、キャロラインは美しいと同時に知性の人であり、高潔の人でもあります。
弁護士キャロラインの法律家としての特徴は、躍動的であると同時に知識型でもあるという、近頃ニューヨークではめったにいなくなりつつあるタイプです。まあ、落ち着いていては厳しいウォール街では絶滅するしかないともいえますが。
政府などでの政治経験が少ないと批判をしたいメディアにはさせておけばいいでしょう。キャロラインの叔父ボビー(ロバート・ケネディ)は凄腕の司法長官として有名でしたが、彼女の法律家としての力量は叔父に勝るとも劣らない、とユアサは断言します。
そのキャロラインが日本に来る理由は・・・?
答えは、オバマ大統領とキャロライン自身がそれを望んだから。
さらに、日本の方々は、もう一度聞きたいはずです。
「なぜ、今?」と。

 

 

この問いに対するユアサの究極の答えは後で述べるとして、まずは現在の日米関係の視点からキャロライン来日を分析してみましょう。
ある意味でキャロライン新大使就任は、天才オバマが構想した〝ケネディ王室外交〟のはじまりと言えます。
現代のアメリカに王室があるとしたら、ケネディ家以外に考えられません。
ウォール街を代表する名門エスタブリッシュメントであるロックフェラー家を知り尽くしているユアサ①が言うのですから間違いありません。
ケネディ家とかロックフェラー家という名門家系の話には、きまってWASP(ワスプ)という言葉がついてまわります。ざっくり説明すると、ロックフェラー家は代々プロテスタントで、ケネディ家はカソリックです。アメリカの支配層と言われるWASP(ホワイト アングロサクソン プロテスタント)的には、ロックフェラー家の方が自分たちにより近いと感じることでしょう。
しかし、ケネディ家はそのWASPすら超えた魅力があります。
ジョン・F・ケネディの後、レーガン、クリントン、オバマ②と雄弁を謳われるアメリカ大統領はみなケネディと同じアイルランド系でもあります。そのケネディの愛娘キャロラインこそ、格という点で、現在進行形のアメリカ社会の頂点に立つ存在なのです。
オバマ大統領が世界中の駐在大使をはるかに上回るビッグネームであるキャロラインを新駐日大使に選んだことは、日米関係の今後を左右する大きな意味があると思われるのです。

 

 

またニューヨークなどで公共教育の分野で多大な仕事と業績を積み重ねてきたキャロラインの存在は、一定の時間の経過が必要ですが、日本の教育がより安全で、より平等な方向性を目指すうえで大きな波及効果を与えるだろうと考えることができます。
もっと具体的には、女性を含めた日本の若者がアメリカへ学業や文化を学びに行く機会がほぼ確実に拡大するだろうとユアサはみています。
日米の相互理解の礎は教育や文化の相互交流にあるというのが、オバマ政権の信念であり、この責務を担うのにキャロラインよりふさわしい人物はいません。
少し夢のような話ですが、日米の交流や留学プログラムを、あらゆる日本やアメリカの人々にチャンスを与えるような、懐ろの深い、幅広いプログラムの数々が生まれることを、キャロラインのニューヨークで蓄積した教育制度関係での実績から期待したいところです。
しかし、現実にはアメリカがここ十年以上、中国を中心とするアジアの留学生を増やし、日本の留学生の影が薄くなったと嘆く声も耳に入っています。
同時に日本社会でも、アメリカなど外国に留学や仕事で赴任を希望する人の数が、ひと昔前と比べると統計的に少なくなってきているとのニュースにも接します。
こうした流れを変えるどころか、逆転満塁ホームランを生むパワーがキャロラインにはあり、彼女が動くときにはオバマが強烈にプッシュするだろうことは間違いないとユアサは確信しています。

 

 

ここで興味深いのは、キャロラインが日本通でないことがアメリカで議論の対象になっていますが、主要メディアのほとんどが問題にならないだろうとみていることです。
このアメリカの反応は正しいといえます。ユアサの考えでは、外国人が日本を理解するのに予備知識はまったく必要ありません。それには根拠があります。
個人的な話で恐縮ですが、実は、ユアサが好きなアメリカ人女性のタイプは、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールでの学生時代から、国際弁護士としてニューヨークや西海岸で活動する現在まで、どういうわけか、僕と出会うまでは日本のことをまったく知らないし、関心もない、いわゆる国内派ばかりなのです。そして、彼女たちはユアサと交遊が深まるにつれ、日本を深く理解してくれるようになるのです。例外がない原則はないはずなのに、この友人美女のパターンだけは一貫しています。
よく東京の人が地方に出張して地元のテレビや新聞を見ると、話題が地元目線なので新鮮さを感じますが、ニューヨークだとそれ以上で、ビジネスでも巨大な仕事は、朝から晩までウォール街の内輪の複雑な実務のみ! というのが一般的です。それだけでもやたらと儲かるのがウォール街の長年のパターンですから仕方ありません。
ですから、私の友人美女たちが日本に関心がないからとお怒りにならないでください。ユアサは、日本通であることうんぬんが論点ではなく、ハートがある人物かどうかが大切なのだと言いたいのです。
ユアサが断言できるのは、日本通とは言えないキャロラインの考え方はユニークかもしれませんが、日本には彼女のハートと知性が、力強いサポートや心強い癒しを与えてくれるものと確信しています。

 

 

キャロラインはアメリカでは初めての女性駐日大使となります。
しかしこの就任は、ユアサ的には想定内のことでした。と言いますのは、アメリカ国内でこれまでの駐日大使の中で最も成功したと評されるのは、ジョン・F・ケネディが送り込んだエドウィン・ライシャワー大使と、マイケル・マンスフィールド大使の2人です。
マイクは、会うと必ずユアサを褒めてくれたので、意外と照れ屋なところもあるユアサはこそばゆかったことを覚えています。
ライシャワー大使の学者時代の弟子の1人とユアサは親友なので人柄も伝え聞いていますが、この2人の大使の成功の最大の要因は、それぞれの奥様方の日本での外交的で、目立たないものの猛烈な行動力にあったとユアサは確信しています。
ですから、これまでの人生において、決めるところはピシッと確実に決めてきた弁護士キャロラインこそ、この難しい職に最適任なのだ、とユアサは分析するのです。

 

 

いよいよ冒頭のギモンに立ちかえります!
「キャロラインはなぜ、今、日本に来るのか?」
もちろん、それはキャロラインが将来の大統領候補に躍り出る布石となるという政治的理由以外の何ものでもありません。
しかし長年、国際弁護士として現代史の表も裏もしばしば現場で覗いてきたユアサは、彼女がこの時期に来日するもう一つの究極の理由があると感じています。
ユアサは、キャロラインの叔父ロバート・ケネディ司法長官が来日時に演説していたニュースを、リアルタイムで見て記憶しています。
ロバートは当時反米デモが盛んだった時代の日本で、日米の友情の絆を生みました。熱烈な歓迎に丁寧に応える一方で、意見を激しく異にする学生たちにも、ロバートは周りを驚かせる冷静さで語りかけ、多くの日本国民の心にそれまでメディアに出てこなかった〝ケネディのハート〟を直接伝えたのです。
本来は、ジョン・F・ケネディ自身が初の大統領在職時の訪日を狙っており、その準備も兼ねてロバートを送り込んだのに、最後はダラスの凶弾に倒れて果たせませんでした。その後、大統領を目指したロバートも暗殺されてしまいます。
ロバートが亡くなったとき、彼と同じニューヨーク州上院議員の職にいったんは立候補の意思を明らかにしながら、身内の看病のために取りやめたキャロライン。
JFK暗殺からちょうど50年目にあたるこの秋、彼の愛娘が日米と国際社会の平和と絆のために日本に着任する。
キャロラインを真に日本に突き動かしたのはアメリカの高潔なる良心と、父ジョン・F・ケネディと叔父ボビー(ロバート・ケネディ)の2人の偉人に捧げる〝究極のケネディ愛〟である。だからこそ、アメリカ大統領を目指す前にキャロラインは日本に来たのだ、とここに記したいと思います。              (了)

 

 

①ロックフェラー家を知り尽くしているユアサ

・・・・’80年代後半のロックフェラーセンターなどの日本への複雑な売却取引で国際弁護士ユアサは、ロックフェラーグループ中枢にアドバイスし、活躍しました。

②オバマ

・・・・オバマ大統領はアフリカ系であると同時にアイルランド系でもあります。

 

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