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連載第13回
ウォール街が冷静に分析!オリンピック決定は日本の景気回復にどう影響するの?

アメリカ中の人々の度胆を抜いたのは、2020年東京オリンピック決定のニュースと同時に喜びに沸く、日本の人々の笑顔でした。日本人が、自身を感情表現が苦手だというのは、謙遜以外の何物でもないと、ユアサの知り合いのニューヨーカーの多くが評していました。
心打つ笑顔のパワーの次にはクール(冷静沈着)なパワーが求められる、というルールがウォール街では支配的です。
今回は、日本のオリンピック招致成功の高揚感さえもウォール街のクールなまな板の上にのせ、日本の景気回復への経済効果に絞り込み、ユアサ分析をしてみたいと思います。

 

 

まず短期的インパクトについて。
招致成功が景気動向に与えるインパクトを株式市場が前向きに受け止めたのは明らかです。
株式市場は一般的に、半年先の景気動向に対応して動くとされています。
「東京決定」のニュースを受け、東京株式市場(以下、東京株式市場というときは、東証日経平均を指すこととします)は連日、急上昇を見せました。しかし、しばらくすると、「オリンピック高揚感も市場ではやや落ち着き」との報道が目立ちました。
実際、インパクトを受け止める側の東京株式市場の市場環境をウォール街は、「オリンピックで高揚といっても、人々の心の内はさまざまなのでは?」と見ています。
また、どんな好材料も「利益確定売りのチャンスはいつ?」と、ステレオタイプに見てしまいがちな東京株式市場の空気が一方にある、との声もウォール街ではよく耳にします。
のれんに腕押しならぬ、〝利益確定売りの空気に東京オリンピック〟は言いすぎですが、そういう手ごたえの感じられない状況になることがあるかもしれない、と一言付け加えておきましょう。

 

 

日本の景気回復に開催決定が与える短期的インパクトをまとめると、利益確定売りを求める深層心理と相まって、一定のジグザグな株価変動を見せていくであろう、というのがユアサ分析。
日本のメディアで深層心理などというと、真っ先に思い浮かぶのは恋愛診断や相性テストでしょうが、ウォール街は長年あらゆる学問を結集してマーケットのココロと向き合ってきています。株式マーケットは、どこの国でも、特に短期的には、情緒的な面を示すことが当たり前であり、コンピュータサイエンスにとどまらず、多様な学問のサポートが必要とされる分野でもあります。

 

 

今度は、景気動向への長期的なインパクトを見てみると、実は、これはインパクト大!と、ユアサは分析しています。
だからといって、オリンピックが日本の景気動向に与える長期的インパクトが、近視眼的な傾向の強い、クールなウォール街に今後どこまで評価されていくか、についてはまだ疑問符が付きます。ウォール街的に言うと、〝アメリカン インペイシャンス〟(アメリカ人は我慢するのが大キライ)の現実があるからです。

 

 

近年のトレンドとして、東京株式市場と円安、円高のリンケージ(連関)は強い、というのは自明のことです。となってくると、仮のシナリオとして、円安とオリンピックインパクトが並存すれば、利益確定売りのジグザグをたどりつつも、東証日経平均は上昇的方向性を歩むことになるでしょう。
ところが、〝円高とオリンピックの景気動向へのインパクトの対決〟となるとどうでしょうか? この文脈だけに絞り込み、他の要素を除去して考えると、円高による東証日経平均下振れリスクのほうが、オリンピックの短期的インパクトより強い局面がしばしばあると見るべき、とユアサは推理分析します。

 

 

たとえば、オリンピックの景気動向への長期的インパクトは大きく、日本の景気は未来のあるマラソンランナーに変身しつつあると言えるかもしれません。
しかし、円高という〝重し〟が加わると、バーベルを持ちながらのランニングのようで、東京株式市場はまだまだぜい弱だと言えるでしょう。バーベルを抱えていては〝歩き〟が入ってくるのが自然です。
それなりに利益確定売りのジレンマも抱えつつ、短期的にも長期的にも与えるインパクトはトータルでいえば限定的、というのが最終的なユアサ分析です。

 

 

それでは、冒頭に言及したニューヨーカーも驚がくした、東京オリンピック開催決定に沸く日本人の笑顔のパワーとは単なるの民族的な高揚だったのでしょうか?
ユアサの答えはNOです。
アメリカのメディアに注意深く目を通すと、彼らが注目したのは、日本人女性たちの笑顔のパワーだったのです。
世界が認めた日本女性の笑顔のパワーをユアサ分析することで、今回のテーマ「オリンピック決定は日本の景気回復にどう影響するの?」を別角度から見てみたいと思います。

 

 

オリンピックはパワーと同時に、英知と心の戦いです。
その成功へのヒントは、私たちの目の前にあるとユアサは考えます。
具体的には、今回東京オリンピック決定の大きな推進力となったと報じられた「おもてなし」と呼ばれる心遣いです。
実は、この「おもてなし」こそ、一種無形の知的財産であると、知的所有権法を長年、ウォール街の銀行法とともに専門としてきている国際弁護士ユアサは分析します。
おもてなしの心をビジネスに生かし、マーケットにも強烈な新鮮味を与えれば、日本の景気動向へのオリンピックのインパクトもさらに高まっていくでしょう。

 

 

夏季ではないですが、冬季オリンピックでアルペン競技のスキーのスラロームの選手たちが回転競技の旗門を覚えながら、手袋をしたままの手の指を器用に動かして、コースの攻め方を自己イメージしている姿をテレビ番組でご覧になった方々も多いと思います。あの作業は、自分が自身に提供している、一種の「おもてなし」と見ることができます。
これをビジネスの分野で顧客サービスとして発想すれば、立派なビジネスのノウハウ(要領やテクニック)として、大きな経済的価値を持たせることができます。

 

 

さらに具体例を挙げましょう。
日本の建設、建築、リノベーションなどの技術力は、アジアを含む世界で高い評価を受けています。それは専門家同士の間の高い評価にとどまらず、オフィスや居住空間での日本の「おもてなし」技術への現地の利用者や居住者の高い評価によっても証明されています。洗面所の蛇口や排水の工夫ひとつをとっても、日本の技術には他国には見られない「おもてなしの伝統」が生かされています。
欧米では「我が家とは城なり!」が伝統のコンセプトですが、日本の居住空間では、それと同時に「癒し」と「おもてなしの心遣い」が共存するのです。

 

 

アジア出張からウォール街に戻ってきたニューヨーカーの友人たちが、「日本の業界は、おもてなし技術でもっと世界に進出できるチャンスがあるだろう」と、しばしばユアサに提案をしてくれます。
これまでつないできた日本の良き伝統を土台に、さらに人間味のある『アット・ホーム』な雰囲気を形にするパワーと独自の工夫において、日本人女性の持つノウハウは世界の第一線で勝負できる最高レベルにある、とユアサ分析。幅広い分野や領域で、今後日本人女性が活躍するスペースは、ぐんぐん広がっていくことでしょう。

 

 

日本の景気動向への、オリンピックの短期的&長期的インパクトをつなぐ希望の懸け橋は、実は、日本における女性パワーのさらなる活躍の場の飛躍的拡大である、と国際弁護士ユアサはここに断言します。              (了)

 

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