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連載第16回
ユアサが選んだ「今年のニューヨーク流行語」ベスト7

今回は、「今年のニューヨークで流行った言葉」の中から、ベスト7を挙げたいと思います(国際弁護士ユアサは奇数が好きなので、ベスト7とします)。
なにしろ、日本では「アベノミクス」「じぇじぇじぇ!」などの流行語の熱くなる季節が到来する時期ですから。
では、アメリカはと言うと、もっとずっとずっと気が早いです。
ニューヨークでは、「来年の流行語トップは?」という話が、今からすでにパーティ・トークの中心となっています。
ウォール街の株式市場が半年後の経済を予想して動くことに慣れたニューヨーカーたちにとっては、「来年の流行語」を語ることこそ「今でしょ!」となります。
今、今年の流行語と来年の流行語を、丁々発止、語ることこそ、パーティの話題の豊富さの「倍返し」となるわけです。

 

では、順に発表いたします。

No.7 「ロング・ディスタンス・リレーションシップ」

 

日本語では、「遠距離恋愛」と言われる、遠隔地の恋人同士の関係をこう呼びます。
「リレーションシップ」とは、「関係」という意味です。
ハリウッドで遠距離セレブ恋愛といったら、一番有名なのはもちろん・・・忙しい仕事や遠距離をモノともせず、常に固い絆で、人生のパートナーとなるにいたったブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの幸せなカップルと、ユアサ分析。
世界の深刻な社会問題に強い関心を寄せ、献身的に世界を飛び回り、解決に日々努力するアンジー。ユアサの親友のアメリカ人弁護士のパーティで彼女に会った折、ブラッドとの盤石の遠距離「夫婦」愛の基本には素晴らしい「知性」があると、その頭脳明晰さに心の底から深く感嘆しました。
現在、ニューヨークでもアメリカでも、メディアで「ロング・ディスタンス・リレーションシップが、中心的位置を占めない日はない!と言えます。特にウォール街だと、西海岸という遠隔地との恋愛が、非常に多いのがただでさえ伝統です。
おまけに、ネット時代の真っただ中の今、SNSなどを通じた「遠距離恋愛」こそ「まさしく時代の流行語」であると広く語られています。

 

 

No.6 「#ソーリーノットソーリー」

 

英語ですと、たとえば「#sorrynotsorry」と書きます。英会話でよりも、完全にソーシャル・メディアでの流行語とユアサは分析します。
ツイッターで、今や毎日全米で、頻繁に見られるほか、あらゆるソーシャル・メディアで、一大ブームと化しています。
「#」記号は「ハッシュマーク」などと読みます。たとえば、ツイッターでそのあとに単語などが続いて使用されると、そのかたまりを「ハッシュタグ」と呼びます。ツイッターでは、2011年から「日本語ハッシュタグ」も幅広く活用されています。
上記のハッシュタグの「#ソーリーノットソーリー」という全米の流行語を、ニュアンスをくんで、ユアサ和訳すると、「#」 相手や人からは悪いと思われてるだろうな、でも、言い訳するようだけど、悪いとは思ってません・・・からの・・・
となります。
もともと「ソーリー」が強く非を認めている言葉なので、「#ソーリーノットソーリー」全体としては、悪いことをした感じというニュアンスが一般的・客観的にはあるでしょう、とユアサ分析。

 

 

No.5 「マット・ルブランク」(*英語圏の発音はルブランク、フランス語圏はルブラン)

 

アメリカのお茶の間を長年楽しませたテレビドラマ『フレンズ』が生んだ架空の、売れない、頑張る俳優「ジョーイ・トリビアーニ(Joey Tribbiani) の役を10年以上も名演したコメディの大スター、マット・ルブランク(俳優&プロデューサー Matt LeBlanc 46歳)。彼は大スター「マット・ルブランク」という自分の役を、自ら演じるセルフパロディなコメデイドラマ『マット・ルブランの元気か~い?ハリウッド!』(原題『Episodes』日本ではWOWOWが配信)で、昨年のゴールデングローブ賞で主演男優賞(ミュージカル/コメディ部門)を受賞しました。今、彼はテレビ・コメディアンとして、生きながらにして「伝説」であり、旬の「流行語」とも言えます。
おかげで、マットの『フレンズ』時代の女性を口説く、明るい決めぜりふ「ハウ・ユー・ドゥーイン?(調子どう?)も、今再び「流行語」の一つとしてニューヨークでは人々の間で復活しています。
憎めない朗らかなキャラクターをハリウッドに根付かせ、そのキャラクターを脱皮しつつ、さらにまた憎めない新キャラクターである自分「マット・ルブランク」を演じる・・・二重三重、いや四重五重にひねりのきいた「マット・ルブランク」。
マットの、いわゆるイタリア系的な「女性へのめげない積極さ」と、ハリウッドでコメディアンの成功者が非常に多いカナダ系的な「のんびりした笑いの空気」の2つが、テレビ画面の中のマットの個性に常に生きていると、ユアサは推理分析。

 

 

No.4 「ファンシー」

 

ユアサが当連載の11回めで、ニューヨークのスイーツやお菓子を形容する最新の言葉として紹介し、実際にユアサのアメリカ人美女の親友たちが、毎日使っている言葉「fancy」。英語で、「おしゃれな」「素敵な」という意味ですが、「流行語」として、さまざまなアメリカメディアでトップクラスの頻度を誇り、「さすがユアサの親友美女たち!」という個人的な感激を込めて、ユアサ選択のナンバー4、とします。

 

 

No.3 「ミンティド」

 

この英語は、イギリスからウォール街に輸入され、今やウォール街の「流行語」となっています。動詞「ミント」の過去分詞が「ミンティド(minted)」。
ミントと言っても、ミント味のミントとは語源的に無関係で、ここでのミントの意味は「(貨幣を)鋳造する」です。
このニュアンスを盛り込んで「ミンティド」をユアサ和訳をすると、「おっ金持ち」、もしくは「あれっ、突然にお金持ち」となります。
アメリカの学生たちが9月からウォール街で新卒雇用されると、アメリカの東海岸の新聞は「新卒ミンティド」(新卒お金持ちたち)と書き立てました。
ヨーロッパでも、何億円もの宝くじ当選券を落とした持ち主が現れないニュースで、やはり「ミンティド(お金持ち)になってるはずの当選者はどこに?」と報道。ニュースメディアはこの言葉を、今すごく多用しています。

 

 

No.2 「ソーシャル・ラーニング」

 

ニューヨーク流行語No.2は、IT時代の申し子のような流行語です。
日本語に訳すと「社会的学習」。もう少し詳しく言うと、「社会的観察などによって、仕事などの技術を学習するが、必ずしも自分の行動様式などを自ら変更するとは限らない」という意味となります。
この言葉は、もともとアメリカの心理学会の大御所が用いた心理学の専門用語「ソーシャル・ラーニング理論」に由来し、今年、全米ITメディア界の流行語のトップクラスに位置しています。
「ソーシャル・ラーニング理論」は心理学の専門用語としては、20世紀半ば以来の学問の積み重ねとして重みのある、さらに複雑な内容であります。
ただ、この理論が生まれた20世紀半ばは、「ソーシャル・メディア」という言葉はもちろん、コンピューターすらなかった時代です。しかし、現在のITメディアでの流行語「ソーシャル・ラーニング
に多大な影響を与えていて、21世紀の今の状況にも見事に当てはまるので、「なるほど」感がユアサ的には大いにあります。同時に一過性の言葉ではないと、ウォール街の銀行法とともにIT法も長年専門とする国際弁護士ユアサは断言します。

 

 

No.1 「フォーキャスター」

 

日本語にすると「予報者」です。
予報者と言うと、普通はアメリカでも天気予報のことですが、ウォール街では異なります。
この場合は、予報するのはお天気ではなくて、マーケットなどの見通しです。
先日、ジャネット・イエレンが女性初のアメリカ連邦準備制度理事会の次期議長に、オバマ大統領によって指名されました。アメリカの中央銀行であるFRBの新議長に、何人もの天才専門家の中からイエレンが選考された決め手の一つが、リーマンショックより前にそのマーケット暴落を警告していた、彼女の「予報者」としての天賦の論理的才能にあったことは、ウォール街の常識と言えるでしょう。
「フォーキャスター」こそ、まさしく、たった今現在の流行語のトップにふさわしいと、ユアサは分析します。

 

 

さて、以上見てきた流行語で日米文化を比較しますと、日本の流行語は競争がとても激しいのですが、一度軌道に乗ると、語呂の良さやキャラクターの魅力があれよあれよと独り歩きして、その年を代表する「流行語」になるという「年中行事」的なムードが、日本社会のコンセンサスとしてあります。
とくに、その一年の中での勢いが重要とみなされるのが「流行語の日本文化」であると同時に、日本的な「勢い文化」と考えられ、比較文化的にはユアサの興味が尽きません。
ところが、アメリカは何を論じるにあたっても、個人主義の強烈さが特徴の社会です。
個人の好みも千差万別。結果的に「出るくいは打たれる」どころか、むしろ「出る流行語は何だろうとたたき潰される」くらいのアメリカの競争社会で、日本的ムードとは一味違う「クールさ」を伴う「イケテル感」がアメリカ社会の流行語にはある、とユアサ分析。
「クール」なる流行語が、未来を温かく照らすとしたら、それがアメリカ社会における流行語の存在意義であると、国際弁護士ユアサはここに断言します。     (了)

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