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連載第18回 ニューヨーク発クリスマス最旬トレンド編
ユアサ、美女にランジェリーをプレゼントする!

「知的でいて、と~ってもセクシー」
今年のクリスマス、ニューヨークのトレンドをひと言で表すとこうなります。

 

 

ユアサが「世界一ゴージャスな訴訟弁護士」というニックネームを進呈しているアメリカ人の親友美女に、貴重な本を遠隔地から取り寄せてもらったので、(ダジャレではなく)ほんの小さなお礼を彼女にしました。ニューヨークで最高に華麗で、最高に上品な名門のお花専門店「BLOOM」(発音はブルーム)のバラを、彼女のオフィスに届けてもらう手配をしておいたのです。
数日後の朝、ユアサの携帯が鳴り、画面をタッチするや、彼女のやや上ずった声が聞こえてきました。花のお礼と、デートのお誘いでした。
ここでユアサのひと言アドバイス。深紅のバラが、ニューヨークでは今年のクリスマスにふさわしい色合いでしょう。さらに、アレンジもプロ中のプロに頼むのが、ウォール街のトレンドと言えそうです。

 

 

サンクスギビングデー①には生まれ故郷に戻ったニューヨーカーも、クリスマスの季節だけは誰も街を手放したがらない、とユアサはかねがね分析しています。
12月初旬、ユアサは親友美女と、ロックフェラーセンターのクリスマス名物であるアイススケートリンクを訪れました。混んでいたので、仕方なくセントラルパークのより空いたスケートリンクに向かったのですが、欧州出張の疲れか、ユアサは途中でけつまずき、すってんころりと転んでしまったのでした。なんとスケートリンクに立つことなく、ミッドタウンにあるユアサのプライベートスペースで、クリスマス休暇ならぬクリスマス休息をとるはめになりました。

 

 

セントラルパークの全景を隅から隅まで見下ろせる部屋を「パーフェクト・ビューの部屋
と地元では言い、パークの一部しか眺められない部屋を「パーシャル・ビューの部屋」と呼びます。もちろん、ユアサは長年「パーフェクト・ビュー」の部屋にしか住んだことがありません。世界的投資家として著名なジョージ・ソロスが、ユアサと同じビルに引っ越してきたこともありました。
さて、クリスマスの恋人たちが集うセントラルパークのリンクからもうひとりの美女(親友美女の友人でユアサとも仕事仲間)も駆けつけてきてくれました。
3人で部屋の照明を落とし、窓のほうを向くと、そこだけ暗闇に近い。はるか下方に位置するセントラルパークの中を、時折通る車のヘッドライトが、驚くほど強いクリスマス・ライトのように光り、美女たちのやさしい横顔が黄金に輝いて見えました。

 

 

週末の朝を迎え、ユアサの痛めた足はすっかり回復しており、玄関にはクリスマスの飾り付けをしたリモが我々3人を待っていました。リモは一気に、高速道路を20分ほど南下すると、クリスマスでも世界一猛烈に仕事する街、ウォール街へと大きく回り込みました。
いよいよ、クリスマスショッピングの始まりです。
最初の行き先は「Liebeskind Berlin」(リーベスキンド ベルリン)。このドイツブランドのお店では、カジュアルでいてとても優美なバッグにユアサは魅了されました。
欧州はニューヨークより宗教色が濃いので、欧州系企業のほうが一般的にクリスマスギフトに熱心な印象が強いように感じます。

 

 

美女たちのクリスマスギフトの発送アレンジを手伝った後、リモに戻ると、彼女たちは次の行き先を既に決めていました。
耳慣れない名前だったので尋ねると、彼女はユアサの耳元でこうささやきました。
「タカシ!ラクシュリー・ランジェリーの有名ブランド店よ。元経営コンサルタントの女性経営者がおよそ6年前に創業した名店よ!

 

 

クリスマスのガールズトークには欠かせない名店のひとつ、というのが多くのニューヨーク女性の意見であろうとユアサ分析。
名店の名は「journelle」(発音はジャーネル)で、ニューヨークのあちこちに素敵な支店があるそうで、そのうちのひとつユニオン・スクウェア近くの店にリモは向かいました。

 

 

クリスマスはニューヨーカーにとってチャレンジャーにならねばならない時でもあります。驚愕の急展開でした。
「頼むわ! タカシひとりで行って来て! 私に飛びっきりのランジェリーを選んできてね!」ユアサの親友美女は続けて言いました。「リモの中で待っているから」

 

 

「タカシ! 私にもね!」彼女の友人もまた続きました。
「タ・カ・シー!」
クリスマスでおしゃれに着飾った人々が行き交うユニオン・スクウェアに、ふたりの美女による時ならぬ「タカシ・コール」が響き渡ったのです。

 

 

ひとりユアサがドアを開けると、美しい店内はアットホームな雰囲気でした。
お店の人たちが満面の笑みで迎え入れてくれます。男性客にも気恥ずかしい思いをさせない温かい気配りが満ちていることに、ユアサは静かに感動しました。これこそ目が覚めるようなニューヨーカーの素敵なクリスマスの「おもてなし」の一つだとユアサ分析。
ひとりの店員に事情を説明すると、すぐに次から次へと親友美女たちに似合うであろうランジェリーが運ばれてきました。
あとで彼女たちに聞いたところによると、クリスマスショッピングにユアサを送り込もうと計画し、いわゆる本人のウイッシュ・リスト(希望リスト)を、お店に事前に渡していたのでした。
ロマンティックで大人なニューヨークのカップルが期待する「クリスマスギフトを超えた何か」が、このお店の人たちの人間的な温かさの中にあるとユアサは確信したのです。
チェックのときにふと気配がして振り返ると、美女2人がユアサを囲んで立っていました。
ユアサはあわてて黒いランジェリーを親友美女に手渡しました。
何か言おうと考えをめぐらしたとたん、彼女のキッスでユアサは言葉と酸素を失ってしまいました。

 

 

さて、いよいよ夕食です。
知的でロマンティックなクリスマスに、最高にトレンディな名門レストラン「wd~50」②はよく合います。ニューヨークのトップシェフ、ジャン・ジョルジュ・ヴォンゲリシテンの長年にわたる高弟として、「科学と料理」を結びつけた天才シェフ、ワイリー・デュフレィン(Wylie Dufresne)がオーナーシェフを務めています。
ホッとする知的な温かさの感じられる店内に、今年のクリスマスにニューヨーカーが知性を求める心理が強く働いているとユアサ分析。
知性が今年のウォール街の株価をここまで押し上げ、その知的エネルギーこそ、一年のしめくくりとなるクリスマスの最大のトレンドのひとつだと国際弁護士ユアサは断言します。

 

 

ユアサはアヒル料理を心ゆくまで味わい、舌の奥に音楽が響くような感動を愉しみました。
ユアサの親友美女はフォアグラと大好物のアンチョビに舌鼓を打ち(このお店で彼女はアンチョビ料理には最高に精緻な技と知識が必要と理解したようで、当面、彼女のアンチョビ手料理が遠のいたことにユアサは心底ほっとした)、彼女の友人はアメリカを代表するウサギ料理をオーダーし、その火の通し方を絶賛していました。

 

 

夜も更け、書類が気になったので、再びウォール街のオフィスへひとり戻ったユアサ。
超高層の大会議室から廊下を抜けて、北側の窓辺にたたずむと、ウォール街からミッドタウンのビル群の明かりが一望できます。
ロックフェラーセンタービルのクリスマスツリーを模した華麗なライティングは「クリスマスライツ」といわれ、風物詩となっています。
「知性のパワー」と「セクシーなマネー」の両方の中心地であるウォール街から見るミッドタウンのまぶしい夜景こそ、世界一知的でセクシーなクリスマスライツだと、国際弁護士ユアサは改めて感じ入ったのです。        (了)

 

 

①サンクスギビングデー
・・・・感謝祭のこと。今年は11月28日だった

②wd~50
・・・・読み方は「ダブリュディー・フィフティ」。wdは小文字で、オーナーシェフの氏名の頭文字からとられた

 

 

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