連載第33回 ニューヨーク女性のトレンド「未完成メーク」
アメリカ女性の憧れる、美しく洗練されたメークといえば、ニューヨーク発のメークです。
そして、そのニューヨーク女性のメークの大きなトレンドが「未完成メーク」であり、なかでも、ウォール街風の未完成メークが今まさにトレンディーである、と国際弁護士ユアサは確信しています。
しかし、一体全体、この未完成メークの〝未完成〟の中身とは何でしょうか?
日本でも耳にすることが多い表現にナチュラルメークという言葉があります。
ひょっとしたらこのナチュラルメークの中に未完成メークが含まれるのかもしれませんが、やはり似て非なるコンセプトであろうとユアサは分析します。
たしかに、「人の真の美しさは内面にあり」という考えは、ナチュラルメークでも未完成メークでもしっかり共有されています。
しかし、ナチュラルメークは純粋な自然美との一体感があるのに対して、未完成メークには〝もっと個々人の人生に根差した生きざまのうねり〟が反映されているように見えます。その個性的な生きざまとは、地に足をつけ、日々24時間1秒1秒を仕事のみに全力投球する〝ウォール街の仕事人のガッツ〟であり、それを映し出しているのが、ウォール街風未完成メークなのです。
英語では一般的に、未完成はインパーフェクトと言いますが、ニューヨークでウォール街風未完成メークを指すとき、未完成は「アンダン(仕事が残っている状態)」と言う場合が多いようです。ちなみに、アンダンはダンの反対語です。
このダンとは、ウォール街で巨大な取引がマーケットや会議室のやり取りで成立した瞬間、当事者によって発せられる「取引成立!」を意味する業界用語です。
ですから、ニューヨークで「アンダンメーキャップ」と言う場合、必然的にウォール街の香りがするわけです。
未完成メークの思考は、いかにもニューヨーク的な3段論法となっています。
第1に、ウォール街で働く女性は仕事が命である。
次に、1日は24時間しかなく、メークを完成させるには常に時間が足りない。
だから、結論として、必然的に未完成メークになる!
これに対して、完璧なメークを求める立場から、「ウォール街の仕事至上主義でメークを妥協するなんてナンセンス!」と、論破するのは容易です。
しかし、〝圧倒的な仕事量の知的オーラ〟と〝仕事優先のライフスタイル〟という2つのウォール街のイメージを大きなてこにして、今、この未完成メークがニューヨーク社会全体でトレンドとなっているのです。
では、その具体的なメーク法をちょっぴり見てみましょう。
今、ニューヨークでも「キャッツアイ」は熱い流行です。日本と同様に、自在に描いたアイラインで多様な目ヂカラをアピールしています。
日本では、キャッツアイは若さをアピールする側面が強いようです。
しかし、アメリカ社会の常識で最強の目ヂカラを持つ人といえば、タフな仕事をこなしているときのウォール街の女性たちです。そのせいか、若い女性に限らず、年齢層が高くてもキャッツアイがトレンディーなのです。
キャッツアイはアイライン全体が命なのでしょうが、未完成メークは最後の〝はね上げ〟が重要で、それ以外は少し手を抜くのが特徴といえるでしょう。
時間をかけないウォール街風未完成メークは、いつでも自分で簡単にやれるのに越したことはないのです。
さて、ウォール街のビジネスウーマン風未完成メークに続き、パーティなどのウォール街のライフスタイルをニューヨーク社会がイメージしたニューヨーク流未完成メークもまた、今や非常にトレンディーとなっています。
日本でパーティというと合コンのイメージが入り込みがちですが、ウォール街のパーティは正式な社交の場で、いかなるビジネス上のライバルとも和気あいあいとコミュニケーションをとる、文字通り真剣勝負の場です。
したがって、自分や、夫や恋人のために気を使い、動き回り、結果として、パーティ中にはがれ落ちたメークは名誉でこそあれ、恥ずかしくもなんともないのです。
男たちは、妻やカノジョがメークを直している間、「今日もありがとう!」と情熱的に感謝の念を送っているのですから。
さらに日本的に分かりやすく言うと、結婚披露宴でお色直しから戻った花嫁のメークはもちろん最高なのですが、お色直しへ向かう花嫁もまた最高に素晴らしいのです。
披露宴の間ずっと笑顔で頑張り、お色直しに向かう直前の花嫁の少々崩れたメーク状態に深く憧れる女性の文化的背景は、日本社会にはないとしても、ニューヨーク社会には確実にあるのです。
これこそ、アメリカ社会は夫婦の間の気持ちのやり取りに価値を置く夫婦社会であるという例の一つだと、国際弁護士ユアサは保証します。
ニューヨークは世界でいちばん有言実行にプライドを持つ街ですから、正式なパーティでの〝落ちかけ状態のメーク〟にも〝メーク直し前という意味での未完成メーク〟との呼称を与え、未完成メークの理想型の一つとして、ニューヨーク女性が見事に実践しているのです。
このパーティで頑張って落ちてしまった状態のメークを、あえて目指すニューヨーク流未完成メークのポイントは「眉」です。
ウォール街では〝知的な攻め〟は、まず眉からとなります。
続けて練習して、その日その日を美しく彩る自分なりの眉の描き方を見つけることが、神々しいニューヨーク流未完成メークへの近道であり、ニューヨーク女性の憧れなのです。
毎日を仕事や家族を通して知的に温かく進むことが、かけがえのない〝自己発見の旅〟であるとニューヨークの女性たちは知っています。
だからこそ、2つの未完成メークがニューヨーク女性のトレンドになっていると、国際弁護士ユアサはここに明言します。
(了)