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連載第41回「個人主義=夫婦主義」というアメリカ社会の夢

日本の子どもたちが将来、アメリカで大いなる成功をおさめるためには、何が大切で、何が成功の秘訣なのでしょうか?
今回は、世界を目指す日本の子どもたちのために、我らがマー君こと、ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手の大成功に関して、ユアサの研究報告をお届けしたいと思います。

 

日本のメディアは彼の高額年棒にスポットライトを当てる傾向が強いので、そうした報道に触れる機会の多い日本社会の子どもたちが、「ああ、やっぱりアメリカ社会の成功はお金なんだ」と考えたとしたら、それはアメリカ社会へのとんでもない誤解となってしまいます。また、そうした誤解をしたまま渡米しても、アメリカは決して心を開きません。
マー君はMLBで野球をするという大きな夢のために海を渡り、そのハートとガッツに全米が心から感動したので、彼はアメリカの至宝のひとりとなったのです。

 

さて、日本で個人の成功の代名詞は、昔は「末は、博士か大臣か」でした。今だとさしずめ「ノーベル賞受賞者か、MLBプレーヤーか」かもしれません。
この半世紀余り、日本社会を国内と海外から見ていると、ユアサの子ども時代と比べて、現代社会は名声よりも成功者が稼ぐお金の巨額さを、成功の一元的なモノサシとして際立って取り上げる方向性が強いような気がします。

 

ユアサの小学校時代には、「金は天下の回り物」というようなフレーズが子どもマンガのせりふにあり、「なるほどそんなものか」と鮮烈な記憶が残っています。これは、ある意味では、お金をキャッシュフローで考える見方とも言えるので、当地ウォール街の毎日のビジネスを象徴する見方と、似ているかもしれません。

 

「金は天下の回り物」というさばけた発想がないと、経済も社会もうまく動いていきにくいものです。現在の日本社会は、半世紀前と比べて経済的にはずっと豊かになったとメディアでは言われますが、ウォール街を含むニューヨーク社会の考え方とは大きな距離感が生まれてきている気もします。

 

〝成功者が稼ぎ出すお金の額〟にこだわる社会やメディアの見方は、大人の日常でのちょっとした共通の軽い話題としては、気が利いていて面白いのかもしれません。しかし、日本の子どもたちのアメリカでの成功という夢への実現可能性の芽を、ひょっとすると、摘んでしまっているのではないか、とユアサは気懸かりでならないのです。

 

冒頭で述べたMLBプレーヤーへの夢は、アメリカ社会では決して〝大金を稼ぐ夢〟ではなく、子供たちの〝人生における宇宙旅行のようなチャレンジ〟そのものなのです。
お金はお金、夢は夢。
お金のパワーだけではアメリカでは夢は決して実現しないのです。

 

最近、ハリウッドのスーパースター、ジョージ・クルーニーがイギリスの美人弁護士と再婚しましたが、彼が億万長者だから幸せな結婚ができたと思っている人は、西海岸でも東海岸でもひとりもいないと国際弁護士ユアサは断言します。国際的人権問題への2人の強い信念が、クルーニー夫妻の〝幸せな結婚〟を生んだのです。
「巨額マネー」という角度から、アメリカ社会を理解しようとすると何事もうまくいかないのが通常です

 

高額年棒を稼ぐ日本人MLBプレーヤーとアメリカ社会の関係性を、日本社会が理解するうえでもそれは同じです。
多くの日本人MLBプレーヤーがアメリカ社会で評価をされていますが、決してお金でつながっているわけではありません。彼と奥さん、つまり夫婦の共通の意識がとても価値が高いものだと認識されており、アメリカ社会ではまさにその点が大切になるわけです。
アメリカ社会で大きな貢献を長年にわたり積み重ねていることで、日本人MLBプレーヤー夫妻が深い愛情と尊敬を得ていると、国際弁護士ユアサは明言します。

 

ここで具体的に、マー君と里田まいさん夫妻に関する温かい全米の報道ぶり、その背景をなすアメリカ社会の考え方を分析したいと思います。
まず、2人とも明るく、フレンドリーな人柄であったことがよかったのですが、それ以上にまいさんが、栄養面でバランスのとれた食事をマー君のために日々努力して作っていることが、心温まるニュースとしてあっという間にアメリカ社会に広く知れ渡りました。

 

もちろん、マー君の獲得にあたって多くの名門球団が、高額オファーで競い合ったことが全米のメディアの話題を独占した感も否めませんが、それは「巨額マネー」を好きなアメリカ社会ということではなく、とにかく金額も含め何から何まで「競争」に注目するアメリカ人気質を反映していると言うべきでしょう。

 

根本的に、人が何かの仕事に打ち込めば打ち込むほど、アメリカ社会はその人物だけでなく、その妻をも含め非常に温かく見つめるというのが、彼らの思考法のポイントです。
アメリカ社会は個人主義社会ですが、そのなかでも「個人主義=夫婦主義」であるという視座が日本のメディアには欠けていると言わざるを得ないのです。

 

アメリカでは大人のみならず子どもまで、MLBプレーヤーを個人としてだけでなく、夫婦としても憧れ、敬愛するのです。
ですから、彼らは夫婦としてもアメリカ社会で多くの活躍の場が広がっているのです。セレブ夫婦だから地位や名声を得ているのではないのです。

 

夫婦2人が、個人同様に自由と責任のシンボルであるのが、アメリカ社会の実態です。
だからこそ、同性婚も国内の保守派の反対を乗り越えて、いまやアメリカ社会における不動の立場を占めているのです。
アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットは、アメリカ社会で同性婚が認められる状況が確保されるまで結婚しないと宣言していましたが、それが社会的に確定したと見極めて、この夏に結婚したというわけです。

 

さらに踏み込んだ分析をすれば、「社会で大成功することと素晴らしい結婚とでは、どちらがより大切なのか?
と問えば、アメリカ社会は間違いなく、素晴らしい結婚に軍配を上げます。それこそが、「アメリカ社会=個人主義社会=夫婦主義社会」の根底をなす考え方と言える、と国際弁護士ユアサは確信しています。

 

さて、再びマー君とまいさんの夫婦に話を戻すと、2人がアメリカ社会全体から早々と受け容れられたのは、ユーモアを理解する明るさに大きなプラスの理由があった、とは前述しました。楽しさや明るさと結婚が、アメリカではイコールで繋がっているからです。
その点も、日本の社会にはまだまだ十分には伝わっていない気がしています。
個々の夫婦の明るさが、社会全体を大きく前向きに進展させるという思いが、アメリカ社会では明瞭に認識されているのです。

 

こうした状況に鑑みますと、「成功=お金」という大人社会の面白おかしいトピックとしてではなく、子どもたちには、「個人主義=夫婦主義=明るさ」という角度でこそアメリカ社会を理解してもらった方が的確であるし自然だ、という感じがします。

 

マー君&まいさんを含む、MLBプレーヤー夫妻の素晴らしい具体例を通じて、個人ひとりひとりが夢を持つことの価値と、結婚の持つ素晴らしい意味とが、日本社会の子どもたちに分かりやすくプラスイメージをもって伝わるように、ユアサは心から期待しています。
それがアメリカにおける個人や夫婦、すなわち社会や世界の人間味を、日本の子どもたちが客観的に認識することにつながり、日本の子どもたちが世界で自信をもって成功する可能性をさらに大きく拡大する!と、国際弁護士ユアサは明言します。

 

(了)

 

*次回、11月28日掲載分が本連載の最終回となります。

 

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