image

先日、日本が「世界で最もブランド力の高い国」に選ばれたというニュースがありました。これは米国のブランド・コンサルティング会社であるフューチャーブランド社が毎年発表するもので、日本が1位になったのは調査開始以来、初めてのことだそうです。

 

同調査は、世界17カ国へ頻繁に旅行している2千530人の回答者から集めたデータをもとに、「暮らし」、「価値観」、「ビジネス」、「文化」、「観光」、「生産品」など6つの基準を評価したものです。評価対象となったのは75カ国。ここでいう「国としてのブランド」について、同社は「その国の製品やサービスに対して人々の購買意欲が高く、生活や留学をしたいと思わせることである」と説明しています。

 

回答者から集めた意見を要約すると、日本と聞いて連想するのは「技術や医療」、「教育」、「歴史遺産や芸術」、「文化」など。なかでも国としてのブランド力を高めるもっとも重要な要素として評価されたのは、「技術とイノベーション」でした。そのほかにも、漫画、アニメ、ゲームをはじめとするポップカルチャー、食べ物、清潔さ、安全性などが高く評価されました。ちなみに、日本は10年度6位、11年度4位、12‐13年度は3位と順調に順位を上げてきました。そして今回、“不動のトップ”と言われていたスイスを抑えて1位になったのです。

 

この結果に誰よりも驚いたのは、当の日本人ではないでしょうか。多くの日本人が日本は住みやすい国だと実感していながらも、国家のブランドとして世界一になるとは予想していなかったのではないかと思います。

image

日本国内では「失われた20年」という言葉のように、自虐的ともいえる悲観的な空気があります。しかし私は、今の日本に対する世界の評価は極めて高いと思います。海外で長期滞在したことのある人は、この気持ちがわかるに違いありません。つまり海外に滞在すると、日本の素晴らしさを痛感するのです。世界中のどこに行っても、こんなにも安全で、便利で、親切で、清潔な国はありません。

 

なかでも日本の素晴らしいところは、「サービスの質と安心感」です。たとえば海外では、金額やお店のクラスによってサービスに大きな差があります。しかし日本では、たとえファストフード店でも基本的に気持ちのいいサービスを受けられます。それはマニュアルがあるからではなく、日本人の仕事に対する高い倫理観と勤勉な国民性があるからだと思います。

 

極端な例であるかもしれませんが、たとえちょっと不良ぶった若者でも、ファストフード店などでアルバイトを始めた途端に他国の同クラスのお店と比較にならないレベルのサービスを提供します。仕事をする際の日本人の頭の切り替えは、素晴らしいものがあります。3分おきの時刻表すらきっちり守る電車の運行もそうです。日本の交通インフラの正確性は、他国ではみられないほどのレベルに達しています。新幹線の掃除など綺麗にコーディネートされたサービスをみると、私は惚れ惚れします。

 

日本のブランド力というと、どうしても家電製品やロボットなど工業製品のほうに目がいきがちです。しかしそれよりも前述したような仕事に対する高い倫理観やサービスの正確性、チップを払わなくても高水準で保たれるホスピタリティに注目してほしい。それこそが、この国を諸外国と差別化し、世界におけるブランド力を支える源泉ではないかと私は思うのです。

 


ジョン・キム 吉本ばなな 「ジョンとばななの幸せって何ですか」(光文社刊・本体1,000円+税)

image

吉本ばなな

1964年東京生まれ。’87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。’88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、’89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、’95年『アムリタ』で紫式部文学賞、’00年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞をそれぞれ受賞。海外でも多くの賞を受賞し、作品は30カ国以上で翻訳・出版されている。近著に『鳥たち』(集英社刊)、『ふなふな船橋』(朝日新聞出版社刊)など。