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最近特に成功者の言葉を取り上げる記事が多いですが、そんななか「成功するためには成功するまでやめないことである」という言葉を目にしました。素敵な言葉です。しかし私はこの言葉を信じません。成功するためには愚直に「やり続ける選択」に負けないくらい、賢く思いっきり「やめる選択」が重要だと思うからです。いいタイミングで潔くやめることやスマートに戦略的にやめることが、人生においてはとても重要なことです。

 

一度しかない人生。自分を貫き人生を自分のものにするためには、軌道修正も必要です。もちろん、やめることには犠牲が伴います。今まで築いてきたもの、たとえば人脈や実績がなくなるかもしれない。これが人を不安にさせ、現状維持の選択をさせます。しかし、それは今自分が存在する小さい世界の話でしかないことに気づくべきです。

 

新しい世界を見るためには、今までの世界を後にしないといけないときがあります。自ら殻を破らないといつまでも雛にはなれず、成鳥にもなれない。殻の向こうにある世界は永遠に見ることはできません。私の経験則で言えば、やめることによる犠牲が大きければ大きいほど、やめる選択を下し実践した場合の対価も大きくなります。そういう選択をした人間は必ず強くなるものです。

 

安全地帯から自ら抜け出し、未知の領域に足を踏み入れる。私はその行為自体、称賛されるべきことだと考えます。未知への挑戦は、自己の未来の可能性に対する信頼であり、成長への欲求の表れでもあります。順調な道を自ら変える判断を下す人はそういないはずですが、本当の一流の人は“順調にいっているかどうか”ではなく、“その道が一度しかない人生をかけてもよい最善の道なのか”という判断基準で物事を考えます。

 

私はときどき自分に問います。「もし余命半年と宣告されたら、今やっていることをやるか」と。「余命半年と宣告されても、今やっていることをやっています」と胸を張って言えるのなら、その人は悔いのない人生を送っていると言えるでしょう。いっぽう「余命半年なら、他のことをしていると思います」と答えるのなら、その人生はどこか本質からズレている証拠でもあります。

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理想的な人生は「生まれ変わってもまったく同じ生き方をしたい」と思える人生です。人生が何度もあるのなら、「今世では我慢しながらやる」と考えてもかまいません。しかし我々の人生は一度しかないわけですから、やっぱりやりたいことを先送りせずにやる人生を生きたいものです。

 

自分の人生が進む方向性を明確に意識し、軌道修正することは、とても大事です。自分が目指す人生の目標や方向性が変わること、それ自体は全く問題ありません。むしろ変わるのが自然なのです。その瞬間の自分の思考や感覚に対する絶対的信頼を持つこと。人生の価値は他者の評価によって決まるものではありません。自分でしかその判断はできないのです。自分の人生は絶対不可侵領域であるということを認識することが大事です。

 

他者からみて脈絡のない人生でも、自分のなかでは繋がっているはずです。人生は一直線ではなく、計画通りに進まないもの。選択のたびに乗り換えが発生し、ルートも変わっていく。しかし選択をすればするほど、自分だけのルートになっていきます。そして誰も行ったことのない自分だけの終着駅に辿り着く。だからどんな選択をしてもいいのです。それが“自分の選択”である限りは。

 

やり続けるもやめるも、自分の心との対話の結果下された判断であれば、それはその時点で正解です。まわりに耳を傾けながらも最終的には自分で決め、自己への信頼を決して失わないことです。


ジョン・キム 吉本ばなな 「ジョンとばななの幸せって何ですか」(光文社刊・本体1,000円+税)

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吉本ばなな

1964年東京生まれ。’87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。’88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、’89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、’95年『アムリタ』で紫式部文学賞、’00年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞をそれぞれ受賞。海外でも多くの賞を受賞し、作品は30カ国以上で翻訳・出版されている。近著に『鳥たち』(集英社刊)、『ふなふな船橋』(朝日新聞出版社刊)など。