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明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。さて、今回のコラムでは私が「新年に心がけたい7カ条」をみなさんとシェアしたいと思います。

まず第1に「忙しく生きないこと」。忙しく生きるということは、高速列車に乗っているようなもの。短時間で遠くにたどり着くというメリットはありますが、通り過ぎる風景を味わうことはできません。ときには走ることをやめてゆっくり歩くことで、それまで一瞬の考察も要しなかった風景の持つ深い意味に気づくことがあります。幸せは自ら気付こうとしなければ、喪失によって気付かされるもの。日常からのすべてのギフトを、感謝の気持ちで受け取りたいものです。

第2に「みんなに好かれようとしないこと」。みんなに好かれる必要なんてありません。大切なのは、嫌われても自分らしい表情をして、自分で感じて考えた言葉を発し、自分の決断と責任で行動することです。そもそも周りは自分が思うほどこちらのことを気にしていません。人生の権限と責任は自身にあることを忘れず、どんな状況でも自分を貫くことを大事にしたいものです。

第3に「焦らないこと」。すぐ結果が出ないからといって焦ったりしないことです。春に秋を急いではなりません。種をまいた次は水をやるなど、収穫までに必要な段階というのがあります。逆にすぐ結果が出ることに不安を覚えるくらいがいい。大事を成すには、苦悩に満ちた超絶に孤独な過程が必要なのです。その過程が辛ければ辛いほど、大きく確実に成長します。努力と結果にはタイムラグがあるもの。結果を焦らず、過程を楽しむスタンスで物事に臨むとよいでしょう。

第4に「自分で選択すること」。人生、一直線には進まないものです。選択のたびに乗り換えが発生し、ルートも変わっていきます。そうした選択が積み重なっていけばいくほど、人生は自分だけのルートになっていきます。そして、誰も行ったことのない自分だけの終着駅にたどり着くようになります。だからどんな選択をしてもいいのです。それが“自分の選択”であるのなら。

第5に「比較しないこと」。否、比較してもいいですが、その結果、苦しんだり絶望したりしないことです。水面より高く自分を置くといずれ水面に合わせて自らも低くなり、水面より低く自分を置くといずれ水面に合わせて自らも高くなっていきます。前者は傲慢の弊害を意味し、後者は謙虚の美徳を指します。他者との比較で自分を規定し幸福をはかるのではなく、自分の美学に基づいて自らを規定し幸福をはかることです。

第6に「些細なことに惑わされないこと」。不幸を感じる人の多くは些細なことにこだわりを持ちすぎています。思い通りにいかないと、他の有益なところに使うはずだった時間とエネルギーを、些細なことに注ぎ込んでしまう。それは自ら不幸の種に水をやり実を結ばせるようなもの。人生にはこだわりを捨てあきらめることが必要な場面があります。何にこだわり何をあきらめるか、その選択こそが幸福のカギを握っています。そのためにも、自分にとって何が本当に大切なのかを見極める“内観”を心がけたいものです。

そして最後になりますが、第7に「夢を忘れないこと」。人生、責任を持たなければならないのは、自分の夢。それ以上に人生をかける価値のあるものはありません。夢を持ち、実現のために生き尽くす。それ以外のことに命の欠片である時間を費やすほど人生は長くも軽くもありません。夢につながる道だけを歩き、すべての道を夢につなげる。そういう夢のある’16年にしたいものです。


ジョン・キム 吉本ばなな 「ジョンとばななの幸せって何ですか」(光文社刊・本体1,000円+税)

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吉本ばなな

1964年東京生まれ。’87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。’88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、’89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、’95年『アムリタ』で紫式部文学賞、’00年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞をそれぞれ受賞。海外でも多くの賞を受賞し、作品は30カ国以上で翻訳・出版されている。近著に『鳥たち』(集英社刊)、『ふなふな船橋』(朝日新聞出版社刊)など。

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