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みなさんは「eスポーツ」という言葉をご存じでしょうか。エレクトロニック・スポーツの略で、コンピューターゲームをスポーツとして捉えたものです。ゲームを直接楽しむだけでなく、プロ野球やプロサッカーのようにプレーヤー同士の対戦を観戦したり中継したり応援したりする。つまりゲームを「する」だけではなく、「観る」ことでも楽しむのが、eスポーツなのです。日本ではあまり馴染みがないこの競技、欧米やアジアではかなりの勢いで発展を遂げています。特に、私が生まれ育った韓国の盛り上がりぶりは、日本からすれば異常ともいえるものです。

たとえば、14年にアジア最大のサッカースタジアム「ソウルワールドカップ競技場」で行われたeスポーツ世界大会の賞金総額はなんと5億円。4万人を超える観客が世界中から集結し、ネットでの最大同時視聴者数は約3千万人にも達したというのですから、その熱狂ぶりがいかにすごいかがうかがえます。さらに驚くことに、韓国ではeスポーツが「人気スポーツランキング」でサッカーに次ぐ2位となりました。eスポーツを牽引するプロゲーマーが韓国の子供の将来就きたい職業2位にもなるなど、日本からは想像を絶する状況になっています。ではなぜ韓国でここまでeスポーツが人気を得るようになったのでしょうか。その経緯を振り返ってみたいと思います。

韓国でネットゲームが登場したのは90年代初期。それが98年に発売されたゲーム「スタークラフト」の拡散で、多数のゲーム大会が開催されるようになりました。04年に釜山で行われたeスポーツ大会決勝戦では10万人以上の観衆が集結し、その様子はケーブル放送などで中継。放送するあるゲーム専門チャンネルが地上波を凌駕するほどの高視聴率を獲得するようになりました。最近では、韓国のスターゲーマーは芸能人を超える人気ぶりです。たとえば韓国eスポーツ界の歴代最高のスターで「皇帝」と呼ばれる、イム・ヨファンさんという方がいます。彼の戦略的なゲーム運用法、高度なコントロール能力、ショーマンシップは絶大な人気をもたらし、彼のオンラインカフェは70万人を超える会員数にまで膨れ上がりました。

こうした韓国でのeスポーツ人気は、放送局や大企業が支えています。00年代に入ってゲームを中継する専門放送チャンネルが登場し、eスポーツへの認知度が急速に高まってきました。そこでeスポーツのマーケティング的価値に気づいたサムスンなどの大企業やIT関連企業が競ってプロチームを創設し、次々と本格参入してきたのです。以前は「ゲームには中毒性があり、子供が攻撃的性格になったり、ひきこもりを助長したりする」とのリスクが指摘され、教育上もネガティブに捉えられてきました。しかしプロゲーマーが社会的に認められ、産業として成長するにつれて、韓国社会の中で市民権を得てきています。

いっぽう日本もeスポーツの導入自体はそれほど遅かったわけではないのですが、いまいち盛り上がりに欠ける時期が続いていました。というのも日本でゲームというと、PCを使うコンピューターゲームというより家庭用ゲーム機を使ったテレビゲームが中心でした。また「ゲームは暇つぶしに自分で行うものであり、観戦する対象ではない」という根強い考えも、定着しなかった主な原因のように思われます。しかし東京オリンピック開催決定の余波などにより、eスポーツが日本でも本格的にブレークしそうな兆候が見えてきました。果たして日本も、韓国のようにeスポーツがプロスポーツとして定着するのでしょうか。その動向に目が離せません。

 

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