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アメリカのマイケル・フェルプス選手がリオ・オリンピックでまたもや金字塔を打ち立てました。「水の怪物」とも呼ばれる彼は今大会で金メダル5個に銀メダル1個と、合わせて6個のメダルを獲得。これで金メダル獲得数はオリンピック史上最多となる23、メダル総数も28まで伸ばしました。

 

しかし実はフェルプス選手、子どものころは一つのことに集中できず、注意力がとても散漫だったそうです。そして彼が9歳のときにお母さんが病院へ連れていったところ、ADHD(注意欠陥・多動性障害)だと診断されました。その後しばらくは薬物治療を続けていましたが、お母さんの判断で水泳を始めることに。毎日のように水泳をすることで注意力の散漫さが軽減され、集中力が高まるだろうと考えたのです。その予想は、見事に的中しました。水泳を始めてまもなく、フェルプス選手は驚くべき才能を発揮。集中力と忍耐力も磨かれ、ついには障害を克服するに至ったのです。

 

フェルプス選手がここまで前人未到の記録を打ち立てることができたのは、身長193センチ・体重91キロという水泳選手にしてこれ以上ないほど恵まれた彼の体格、そして不断なる日々の練習があったからでしょう。しかしその背後には、彼が若いころから行っていたイメージトレーニングの影響も大きかったといわれています。

 

彼を指導してきたボブ・ボウマン氏は、フェルプス選手が10代のころから「ビデオを見ろ!」と言い続けていました。それは、自分の完璧な試合のイメージをビデオのように頭の中で再現しろという意味。それを受け、フェルプス選手は毎晩寝る前と毎朝起きた後に最高のレースをイメージするというトレーニングを開始。それもとても細かいところまで。水の感触はどうで、隣は誰が泳いでいて、どのように水をかき、どうターンして、フィニッシュをどうするか。それらを詳細にそして正確に何度も何度も繰り返し思い描いたのです。こうした何千回にもわたるイメージトレーニングのおかげで、フェルプス選手は本番も冷静沈着に泳げるようになりました。つまりレースでも練習を再現する感覚でリラックスして挑むことができたのです。

 

こうしたイメージトレーニングは、不測の事態に対しても行われていました。たとえば北京オリンピックの200メートルバタフライ決勝でフェルプス選手のゴーグルに水が入ってしまい、視界が奪われたことがありました。そのときも彼はパニックになることなく泳ぎきり、しかも世界新記録で金メダルを獲得しています。試合後のインタビューでフェルプス選手は「すべてはイメージどおりだった」と答えていました。想定外のことも想定する。それほど綿密なイメージトレーニングを行うことで、不測の事態でも慌てることなく自分の力を最大限に発揮できたのです。

 

人は慣れたものをこなすことが上手な生き物です。実際にやったことがなくても、やっていることを具体的にそして繰り返しイメージすることで、本番で力を発揮しやすくなるのです。物事はイメージトレーニングを習慣化することで、より達成しやすくなります。イメージすることで自信が深まり、状況の理解能力や判断能力が高まり、本番の緊張が解けて自分の望む行動がスムーズに行えるようになります。こうしたイメージトレーニングはスポーツ選手の専有物ではありません。フェルプス選手を見習い、みなさんの日常の生活の中でも取り入れてみてはいかがでしょうか。想像が創造する現実を、きっとみなさんも体験することができるようになると思います。Imaging is Creating。

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