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アメリカの次期大統領に政治経験のない事業家のドナルド・トランプ氏(70)が選ばれました。彼はこれまでアメリカへのムスリムの入国禁止発言、ヒスパニック系移民に対する侮蔑発言、そして複数のセクハラ疑惑など数々の過激かつ不適切な言動で批判を受けてきました。

 

私も当初はトランプ氏がアメリカ大統領ところか、共和党の大統領候補になることも想像しませんでした。しかし共和党大統領候補によるテレビ討論を観たとき、彼にも勝算があるのではないかと思うようになりました。というのもトランプ氏は政治経験がなかっただけに、既存の政治家に対して容赦のない厳しい批判を浴びせていたのです。それを浴びた他の候補者たちはタジタジで、見方によっては彼が対立候補者たちを弄んでいるようにも見えました。それくらい、圧倒的なディベート力と存在感を示していました。

 

メキシコなどからの不法移民により多発する犯罪、ISISに代表されるイスラム過激派テロ、中国や日本などへの貿易赤字に対する不十分な対策。こうした問題へのアメリカ政府の対応に、多くのアメリカ人が不満を抱いていました。しかし彼らはこれまで不謹慎と思われることを恐れ、公の場では言葉にできなかった。それをトランプ氏の発言で代弁してもらったと思ったのです。

 

もう一点、今回のトランプ氏勝利の背景にはアメリカの二大政党制があると思います。建国のころからアメリカの大統領選挙では、保守派の共和党とリベラル派の民主党の候補者が一騎打ちを繰り広げてきました。そうした二大政党制では、大統領選挙の焦点は「変化か、現状維持か」になります。フロンティア精神にあふれ変化を好むのがアメリカ国民。同じ政党の同じ大統領が2期8年にわたって政権を握ると、次の選挙では別の政党の候補を選ぶ傾向が強いといわれています。

 

今回も民主党出身のオバマ大統領が2期8年にわたり政権を運営していました。そのため共和党候補有利との見方もありましたが、まさかトランプ氏が当選するとはほとんどのマスコミは予想できませんでした。そんな大方の予想を覆し、彼はアメリカ合衆国大統領に選ばれたのです。

 

大統領当選後のトランプ氏からは、選挙戦のときのようなアメリカ社会を分断するような差別発言などは見られません。しかし依然として、アメリカ国内外の人たちはトランプ氏の政権運営を心配の目で眺めています。その心配の一つは、事業家であるトランプ氏が大統領の政治的な権力を濫用するのではないかというもの。いわゆる「政治の私物化」を心配する声が多いです。

 

たとえば当選後の11月17日にニューヨークで行われた安倍晋三首相との会談で長女のイヴァンカ氏(35)を同席させたことが判明し、物議を醸しています。いまのトランプ氏はただの民間人ではなく、次期大統領。アメリカの大手マスコミは、彼の政治とビジネスの癒着による利益相反の可能性を懸念しています。イヴァンカ氏は新閣僚を選定するためのトランプ氏の政権移行チームにも参加しており、一部報道では彼女が次期駐日大使になる可能性も示唆しているのです。

 

ご存じのように韓国では朴槿恵大統領の国政運営を巡る不正疑惑により、支持率が5%にまで落ち込んでいます。そのスキャンダルを一言でまとめると、「政治の私物化」です。公人がその権力を自身の私利私欲に利用することは、民主主義国家においてあってはならないことです。権力が集まるところには、お金が集まるもの。ビジネスマン出身であるトランプ氏が私利私欲を超えて清廉な大統領になれるか、注視すべきところです。