image

昨日、息子が「怖い夢を見た」と言って仕事をしている私のところにやって来ました。執筆を中断し、一緒に子供部屋に行き、ベッドに横になってあげたのです。手をつなぐと安心したのか目をつぶりました。夜なので興奮させてはいけませんから、彼が安心して寝付くまで天井を見て黙っていたのです。そしたら、不意に息子が「ねぇ、パパ。ぼくは昔、どんな子だったの?」と訊いてきました。目は閉じたままです。「君は、昔、とっても小さな人間だったよ」と私は返しました。この回答が嬉しかったようです。クスクスと笑って、「どれくらい小さかったの?」とさらに訊いてきました。「手のひらにのるくらい小さい人間だった」と答えました。「小さいね、信じられないよ」と息子。「ああ、パパも忘れるところだった。でも、君はとってもとっても小さかった。それが今じゃ、パパを追い越そうとしている。すごいね、頑張ったね……」

返事がありません。横を見ると、安心したのか、ぐっすりと眠っています。小さい頃の自分の夢を見ているのかもしれませんね。私はそっとベッドから降り、息子を見下ろしました。本当に大きくなりました。もう、ほぼ大人です。あんなに小さかったのに……。12年前のあの日のことを思い出しました。思い出には罪がありません。必死に生まれてきた我が子をとりあげたときの記憶は薄れません。いつか、もう少し大人になったら、そのときのことを話してあげようと思います。

さて、本日のムスコ飯は、我が子の大好物、つくね。お子さんはみんな大好きですね。軟らかくジューシーなつくねを作りましょう。材料:鶏ひき肉400g、にら数本、にんにく一片、とろみちゃん(顆粒片栗粉)大さじ1、梅こぶ茶5g、塩・こしょう、山椒、醤油、みりん、酒各大さじ1、合わせ味噌小さじ1、生姜片2、チューブ生姜大さじ1、卵白1、豆腐、パン粉各大さじ3。ほかにごま油、サラダ油、上白糖。まず、鍋に1Lほどの水を入れ、沸騰させておきます。にんにくをみじん切りにしフライパンで炒め、大きなボウルに。鶏ひき肉400gをまな板の上で10分ほど包丁で丹念にたたきます。なめろうを作る要領です。右から左に微細にたたいたら、今度は縦目に同じことをやり、包丁で練っては繊維が完全に切れるまで繰り返します。10分程度。フードプロセッサを使ったほうが早いです(笑)。ハンバーグもそうですが、肉屋さんで買ったひき肉をもう一度自宅でひき直すと軟らかくなるのです。コツの1。

それをにんにくの入ったボウルに入れ、みじん切りにしたにら、チューブの生姜、塩・こしょう、山椒を適宜、とろみちゃん大さじ1、パン粉、豆腐大さじ3程度お好みで、合わせ味噌小さじ1、そして、梅こぶ茶を5g入れて、手で練ります。粘り気が出て超軟らかくなるまで練るのですが、大事なのはここに水分を少しずつ注ぎ足していくことです。コツの2。

練りながら少しずつ根気よく。水以外に、みりん、酒、卵白などを入れていきます。鶏ひき肉が水を含んで軟らかくなりますよ。先の沸騰した鍋に生姜を入れ、スプーンを2つ使って鶏団子の要領で落としていきます。自宅でやる場合、いきなりフライパンで焼くと硬くなります。まず、茹でるのが、コツの3。

形は多少不格好ですが、軟らかさをとりましょう。10分ほど湯の中につけた後、取り出しきちんと水気をキッチンペーパーなどで切ります。厚鍋にごま油とサラダ油を1対1程度入れて炒め、鶏団子を投入し焦げ目をつけます。そこに、醤油、みりん、酒、上白糖、とろみちゃん各大さじ1で作ったタレを加え、火が完全に中まで通ったら、串に刺し、ほんのり梅味のつくねの完成となります。自宅で焼き鳥屋さんの味を、どうぞ!

ボナペティ。

エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!

辻仁成/つじ ひとなり

作家。東京都生まれ。’89年「ピアニシモ」ですばる文学賞、’97年「海峡の光」で芥川賞、’99年「白仏」で、仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。映画監督、演出家としても活躍。現在はシングルファザー、パリで息子と2人暮らし。

関連タグ: