image

思えば突然の離婚報道から2年半の歳月が流れました。当時をちょっと振り返ってみたのですが、もしかするとあの時期は我が人生でもっとも受難の季節であったろうと思われます。正直、生きていくことに対する自信も絶え、孤立し、息子を抱えて生きねばならぬことが│唯一その日を乗り越えるための糧となりました。お弁当作りはそこから日常化するのですが、それから今日までのことはここに記してきたので読者の皆様もよくご存じかと思います。離婚率が高まる中、同じような経験をされた方も多いでしょうね。

 

今日、思ったのは「自分は誰に愛されているのだろうか」ということです。息子が先日不意に言いました。「パパ、『愛してる』という言葉ほど空しいものはないね」と。確かに、愛し合っていても別れがあります。別れないにしても憎しみを隠して生きている仮面夫婦だって大勢いるでしょう。今日、じゃあ、誰が今自分のために命を投げ出してくれるのだろう、と考えたら、思わず小さなため息が零れてしまいました。

 

10月、57歳になりました。54歳の時に離婚を切り出され、もう57です。ふと“将来を見上げて”しまいました。いったい何が楽しくて日々を生きているのだろう。誰に愛されて生きているのだろう、と。「愛してる」は空しい言葉、という息子の言葉は痛いほどよくわかります。そういうことを言わせてしまい申し訳ないという思いでいっぱいです。でも、ここにきて、自分はどうするんだろう、と同時に考えてしまうのです。

 

息子はあと6年で大学にあがります。友人や学校に恵まれた息子は、きっと元気に生きていくことが出来るでしょう。友人たちは私に、誰かを探しなさい、と言ってくれるのですが、なかなかそのような気分にはなれません。なんでか、素敵な人が現れるとブレーキがかかってしまうのです。自分で自分を守っていくしかないのでしょう。でも、同じような痛みを抱え生きている人も少なくないのではないか、と想像します。私と同様に、子供を悲しませないためにだけ生きた主婦の方々は、その後、何を糧に生きていくのでしょうね。自分のことを考えないとならない時に来たようです。巣立っていく息子を見送った後の残りの人生を大事にしなきゃ、と思いました。それがどのような未来か、今はまだ想像もできないのですけど……。

 

さて、今日は、私があちこちの料理番組でひけらかしているあの「オレンジ塩」のレシピをご紹介したいと思います。また、それを使った簡単な魚料理もあわせてお教えしたいと思います。

 

材料:岩塩(fleur de sel)、出来ればフランスのゲランドのお塩をおすすめします。有機栽培のオレンジ1つ、新鮮なスズキのフィレ1枚、オリーブオイル、ルッコラなどの野菜。

 

注意点としましては必ず有機オレンジを使用してください。ピーラーで皮をむきます。それを予め150度に温めておいたオーブンに入れ、約10分。ちょっと生焼け状態ですが、すぐに硬くなりますので、その前にみじん切りにします。少しほうっておくと15分くらいで硬くなるので岩塩50〜60g(お好みで)と混ぜ合わせれば、もう完成。瓶に入れ保存してください。スズキの皮目にこしょう(分量外)、身に塩(分量外)を振りかけ、テフロンのフライパンに多めの油をひき、中火で皮を下にしてじっくりと焼きます。指先で魚を押さえます。これをしないと魚が熱で反り返るのです。火加減を見ながら、皮パリになり、魚の上まで火がとおって、全体が白くなったら完成です(ひっくり返す必要はありません)。皿に盛り、オレンジ塩を振りかけてください。添えたルッコラなどの野菜にはオリーブオイルとヴィネーグル(酢・分量外)を。オレンジの香ばしい香りが絶品の、スズキのグリエです。

 

ボナペティ!

 

エッセイで紹介されたレシピは、
辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯<レシピ>で公開中!

関連タグ: