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人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!

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東京と聞いて何を思い浮かべるだろう。

 

立ち並ぶビル…。
急ぐ人の群れ…。
満員電車…。
眠らない街…。

 

とにかく無機質で人ばかりというイメージがある人も少なくないだろう。
実際東京は1300万を越える人がいて、これは日本全体の10分の1にあたる。
東京23区の人口密度は世界一を記録したらしい。
通りで渋谷のスクランブル交差点で外国人が喜んで写真を撮ってるわけだ。世界一はダテじゃない。

しかし「東京都」でくくれば世界一ではなくなる。何故か。
それは東京も首都圏が全てではないからだ。

 

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人口過密な東京23区は、オレンジの地域だけ。
「東京」といってイメージされる街もこのあたりに集約されている。
実は東京は23区以外にもまだまだ26の市、5の町、8つの村を秘めているのだ。

 

緑にあふれた景色…。
清廉な川…。
澄んだ空気…。

 

人々の知らない東京がそこにはある。
忙しい現代人、「日帰りで行ける旅行」が重宝される今自然を求める皆さんにオススメしたい。
それが東京の西多摩郡奥多摩町に位置する
日原鍾乳洞(にっぱらしょうにゅうどう)」なのだっ!!!

 

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渋谷から電車を乗り継ぎ、2時間かけて奥多摩まで。
徐々に窓の外が緑で満ちていく。

 

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電車を降りると、生活のすぐとなりに自然があった。

 

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長い間住んでいて知らずにいた東京の知らない顔だ。
さらに1日に5本しか出ていないバスに乗り込み、
いよいよ日原鍾乳洞へ。

 

平日の真昼間、人もおらずせせらぐ水の音しか聞こえない。

 

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入場料700円を支払い、小さな入口に突入した。

 

中は暗く外の光は全く届かない。整備された光だけが頼りだ。

 

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岩が雨水や地下水などによって溶かされてできた洞窟「鍾乳洞」…。
水に溶かされただけあって、常にぽたぽたと水が垂れる音がする。
夏冬問わず気温は11℃。外に比べてだいぶひんやりとした空気だ。
特徴的な岩が露出したところには、名前が付けられる。
「獅子岩」「大天井」「鳩胸」「おとぎの間」、
それらしいものから結構ファンシーな名前つけたねというものまで様々だ。

 

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地面が濡れているため、油断すると滑る。
人間の手が加えられ歩きやすい道が作られているものの、
一歩一歩慎重に歩かねばならない。

 

見回す限りの大いなる自然…。
薄暗い洞窟、ひんやりした空気。ぽたぽた滴る水。すれ違う人もない。
一人で鍾乳洞へ行ってしまったわたしを迎えたのは、
想像以上に怖すぎる現実だった。

 

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何かが起きて永遠にここから出られなかったら…。
どうしよう。こんなに怖いなんて想定外だ。

 

そしてそんな私をさらなる恐怖が襲う。

 

死出の山!!

 

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地獄谷!!

 

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三途の川!!

 

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もう帰りたい!!!!

 

洞窟の奥地は、「生」と「死」の交じる場所だった。
それもそのはず、かつてここは山岳信仰のメッカだったのだ。
弘法大師が修行に使ったそうで、「弘法大師学問所」なるものもある。
この人里離れた洞窟の奥地で暗闇の中、人間は死を疑似体験したのだろう。

 

そうか…。
つまりわたしが味わうこの恐怖も
修行の一環なんだね…?

 

そう思えばいよいよ開き直れてきた。
たまたま現れたよその観光客がわたしを不審な目で見ようと、
わたしは修行中なのだ。

 

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冷静になって考えてみると、わたし以上に洞窟でひとりフラフラしてる女を見かけたよその観光客のが遥かに怖かったんじゃないかと思うが
なににせよ、今は修行のため突き進むしかない。

 

その先に現れたのは、「水琴窟」という地。

 

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地中に埋められた水の張られた瓶に水滴が落ち、まるで鉄琴のような音を奏でる。
他に物音がしないからこそ静かな反響がわたしの心にまで届いた。
…美しい…。
おののく心も癒える、やさしい音色だ…。

 

わたしは洞窟内で一度死んだのだ…。
そしてこの音色を聞いて蘇る…!
ぬかるむ道を歩きながら、無駄な設定が出来上がってきた。
遠くに光が見える。
…出口だ!
これほど光が見えてうれしかったことはない。

 

こうしてうさこは山岳修行を終えたのであった。

 

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気が付けば日々忙しさであっという間に過ぎてしまう毎日。
スマートフォンやテレビ、パソコンといった電化製品の光はわたしたちの時間を削り、
街のネオンが夜も眠らせない。
社会の喧騒に疲れ果てた人は少なくないだろう。
そんな人に、ぜひ光の喜びを知ってほしい。
僅かに見える外の光が、あんなにうれしいことを知ってほしい。
暗闇があるからこそ、光がうれしい。
死を知っているからこそ、頑張って生きられる…。

 

そんな哲学的なことも無理やり考えちゃう自然スポット「鍾乳洞」
悟りを開いてみる夏はいかがでしょうか。

 

米原千賀子

ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。