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人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!

 

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5月某日…
うさこはとある公園で震えていた。

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公園にいる理由…それは「カラスを撮るため」。
多分何を言ってるかわからないと思うのでもう一度言おう。
「カラスを撮るため」だ。

 

バードウオッチングや野鳥の会などの言葉があるように、
公園で小鳥を観察したり撮影したりすることは珍しくない。
しかし、何故カラスなのか?
それはカラスをこよなく愛す「カラス女子」が最近増えつつあると聞き、
普通に生きていたらなかなか気付けないカラスの魅力を実際に接触することでわたしも確かめようと思ったからである。
普段「迷惑だな」「怖いな」と思われがちなカラスをなぜ彼女たちは愛するのか?それを知りたい。
早速カラス雑誌“CROW’S”を刊行し7月31日には“愛しのカラス☆ナイト”というイベントも開催する「カラス友の会」主催の吉野かぁこさんに
カラスの撮り方をレクチャーしてもらった。

 

「都市部の公園なら・・・、高めの広葉樹が茂っているところに多いですね。
特にゴミ集積所や売店の周辺は、賑やかです。
食糧は確保できているので、遊ぶ時間のたっぷりあるカラスが多いかな?
遊んでいるカラスは、かわいいです。
人にも慣れているので写真も撮りやすいと思います。

撮り方は、あまりジッと視線を向けて狙わない方がいいですね。
カラスは視線に敏感なので。
見ていないふりをして、レンズだけ向けてジワジワ近づくと結構成功します。
カメラの背面にある液晶の向きが変えられるタイプが楽ですよ。

今のカラス(※取材敢行時:春~初夏)は子育て真っ最中なので、
運が良ければ「ヒナにエサをあげているお父さんガラス」・・・なんて撮れるかもしれませんが、
この時期の彼らは1年で一番気が立っているので、
くれぐれも襲われないようにご注意ください(^^;)

カラスが頭上でカーカーカーカーと激しく鳴きだしたら
とりあえずは退散したほうがいいかもしれません。
万が一ってときには、傘を頭にさすとか、両腕をまっすぐ上に挙げて避雷針みたいな恰好をするとか。
そうすれば、頭を蹴られることは避けられると思います。
(クチバシで突かれたと言う話をよく聞きますが、
鳥の身体の構造上、飛びながら何かを突くことは不可能なのでご安心ください)」

 

アツい!!!!!!

 

少し聞いてみただけでこれだけのアドバイスをいただけるとは…。
このメールを見ていたら勇気が湧いてきた。
カラス初心者のわたしにも可愛いカラス撮れる気がする…!

 

そうしてわたしはかぁこさんのアドバイスを胸に刻み、満を持して公園に来たのである。
よくイベントを行っている公園なので、出店が出ることも多く食べ物の破棄は多い。
カラスにとってもエサがたっぷりあることだろう…。
そうなればカラス大集合しているに違いない…!という推理からの公園チョイスだ。

 

わたしはイベント会場そばのゴミ箱に目を付けた。
たまにエサを探しに来るものの、すぐに飛び去ってしまう。
遠くで羽ばたく姿の写真ばかりが溜まっていく…。

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ただの綺麗な風景写真に見えるかもしれないけどカラスです。
奥に見える小さなV字がカラスです。

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うん…もう…空だね…。
ちなみに中央に見える黒い点がカラスです。

 

かぁこさんが撮れるかもしれないと言っていた「ヒナにエサをあげているお父さん」なんて夢のまた夢だ…。

 

…これじゃダメだ。
わたしは景色を撮りに来たんじゃない、カラスを撮りに来たんだ…!

 

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イベント会場横ゴミ捨て場を離れ、広い公園をさまよい始める。
「何を撮ってるの?」
小道を歩いていたとき声をかけてくれたのは優しそうなおじさまだった。
「カラスです」と答えると、「か、カラス!?」と驚く。
「僕はね、よく公園で小鳥を撮ってるの。だからよく公園で話をするけど、カラスを撮りに来たってひとは初めてだなぁ」
おじさまはバッグから自分の小鳥写真を取り出し、わたしに見せてくれた。

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「これがジョウビタキで、これがルリビタキ。ここの色が綺麗だろ?それでこれがカワセミで……」
またしてもアツい…。
鳥好きがここまでアツいとは…!
おじさまは小鳥を撮るために何十万もする望遠レンズを新調したという。
「この写真、あげる」
こうやって公園鳥コミュニケーションが取れるのも楽しいところかもしれない。

 

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さて、おじさまの鳥愛にほっこりしてる場合じゃない。なんとしてもカラスを撮らねば…。
公園を散策していると、わたしはカラス群生地を見つけた。
人のいない木々の生い茂った場所。

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静かな空間に、風で植物がざわめく音とカラスの鳴き声だけが響く…。
正直めっちゃ怖い。
さっきはカラスがいなすぎて困ったが、今度はカラスがいすぎて人間が完全にアウェイだ。
わたしが踏み入ると、カラスが大きな目でこっちを警戒しているのがわかる。
アドバイス通りカラスを見ずレンズだけ向けて写真を撮るも、そそくさといなくなってしまう。
なんだ。シャイか?
この公園のカラスたちはシャイなのか???
わたしは女性専用車両に間違えて入ってしまった男性並みのアウェイに怖くなり新天地を探した。
…うん、そうだ。そろそろ休憩しよう。
そう思って建物のそばに寄ると、ふと噴水に一羽のカラス…。
しかも何をするわけでもなく、じっと立ち止まっている。
おっと?これは?
わたしはじりじり近づいてカラスに目を向けず、シャッターを切る…。

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うおお…
うおおおおおお!!!!!!!!!!!

 

撮れた…!!!!!
見てください、このつぶらな瞳。
ただの黒じゃない、七色がかった翼。
凛々しい佇まい。。

 

何より撮れたうれしさでわたしは公園を走り回りたくなった。
カラス撮影がこんなに楽しいとは…。
そこからはこれまでの4時間が嘘のようなカラスフィーバーが始まる。

 

『揺れる水面とカラス』

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『飛翔』

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芸術だ…
カラスは芸術だ…!!

 

予想以上の満足感をもたらしたカラス撮影。
カラスの魅力を確かめるべく始めたものの、なによりカラス撮影の瞬間を捉えるゲーム性に病みつきになってしまった。
元々よく見ればキレイなカラスだが、その魅力に気付かずマイナスイメージを持っていたとしても撮って楽しむ中で生態を知り、どんどん好きになれたらそれほど幸せなことはない。
日常のなかに楽しさを見出す…「カラス女子」は、毎日を自力でハッピーにしていく方法のひとつなのかもしれない。

 

 

「カラス友の会」吉野かぁこさん主催の雑誌『CROW’S』第3号は7/31(金)から発売!
https://karasutomonokai.stores.jp/

 

米原千賀子

ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。