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人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!

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「自転車に乗れるようになる」
突然熱い情熱を抱いたわたしであった(詳しくは前回記事参照)が
友人に付き合ってもらおうにもあいにく時間が合わず、もどかしいばかりの日々を過ごしていた。

「もう待てない!」
わたしは友人を諦め、“レンタル”することを決意する。

自転車練習場”自転車の駅“に行くと、
そこにはレンタルした

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ひとりのおっさんが!!!!!

今回わたしが利用したのは“おっさんレンタル”。その名の通りおっさんをレンタルできちゃうシステムだ。
なんとなく聞いたことがあった巷を賑わす怪しいそれを思い出し、直感した。
「今まさに利用すべき時が訪れた」と…!

レンタルは簡単。
様々な経歴のおっさんがずらりと並ぶこちらのサイト(http://ossanrental.thebase.in/)から条件の合う好みのおっさんを探し、申し込む。
あとはおっさんと直接メールで細かい日時や待ち合わせ場所を相談して会うだけ。
本当にびっくりするほど簡単におっさんがレンタルできてしまう。
「いい大人が自転車デビュー」したいというアホすぎる依頼に付き合ってくれたのは、
「南の島移住計画中の48歳」ことマーシー佐藤さんだ。

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正直すごく胡散臭いぞ。
しかし、
「①自転車乗れるようになりたいので付き合ってほしいです。
②取材させてください。
できれば今日」という相当な無茶ぶりにも嫌な顔一つせず
「今日は空いていたのでいいですよー」と、はるばる自転車の駅まで来てくれた。

そして冒頭の待ち合わせに至る。

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自転車練習に関しては、もう「熱い」の一言。
最初抱いていた胡散臭さなんてぶっ飛ぶ勢いで「熱く」「頼りがいがあって」「男らしい」ナイスガイだ…!!「これから乗ってみようか」とスッと自転車を出してきてくれて、
「ペダルは漕がなくていい。まずは地面を蹴るんだ」とアドバイス。

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さらにわたしが進みだせば、「前を向けば大丈夫だから!そうそう、前を見て!いい感じ!」と褒めながら走って追ってきてくれる。

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マーシー佐藤さんは「ちょっと付き合ってくれるレベル」で想像していたわたしが腰を抜かすくらい
「ガチの自転車レッスン」をしてくれたのだ。

そんな熱い男マーシー佐藤さんに、どうしておっさんレンタルを始めたのか聞いてみた。
「僕がおっさんレンタルを始めたのは今年の7月。嫁が見つけてきたんです。“アンタやったらええんちゃう?”て。新しいことをするのが好きなので、“楽しそうだな!”と思って始めました。難波のあたりに拠点があるのですが、都合が合えばどこでも行きますよ。」
彼のページを見てみると“旅行に付き合ってほしい、コンサートに付き合ってほしい、海外に付き合ってほしい”、かなり幅広い依頼にお答えできるようだが、どういった依頼があるのだろうか。
「女性が相談に乗ってほしい、っていうのが主です。相談できる人がいない。周りの人には言えない。そんな悩みを聞いたりしています。喫茶店や居酒屋でお話ししたり、難波の無料空きスペースでだべったりしたこともありました(笑)」
SNSが発達し自分の情報を開示することが一般的になる反面、“公”と“私”の線引きが出来ず気を遣いすぎて友達や親にも悩みを言えない人が増えた現代において、どうやらおっさんレンタルは気軽な“お悩み相談所”として機能しているようだ。
「悩みとしては、恋愛の相談が多いですね。不倫、夫婦問題…中には借金問題なんかの話もあります。やっぱり、性別も年齢も違う経験豊富なおっさんだからこそ聞いてあげられることがある。こちらとしても、“そんなことがあるんか”“そんなことで悩むんか”と新しい発見があります」
依頼者は願いを叶えてもらい、おっさんは刺激を受けて新しい発見をする。
おっさんレンタルは驚くほど理にかなった、相互向上システムだったのだ。

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2時間自転車練習して1時間取材、というスケジュールを考えていたが熱い指導により30分で自転車に乗れるようになってしまったため、
自転車屋見学にも付き合ってもらうことに。

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「これってどれくらいの重さなのかな」
気になったことはグイグイ店員さんに聞いてくれる、買い物にも心強い味方である。
近くにもう1軒自転車屋があることが分かると、「いきましょう!」と気軽に付き合ってくれた。
なんて行動力極まったおっさんなんだ…!

最後はお茶へ。
オシャレなパン屋でおいしいパンを食べながら、おっさんのこれまでの人生についてを聞く。

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やんちゃな過去…仕事への情熱…奥さんへの感謝…。
最終的にはお互いの将来の展望を語り合い、最後まで熱烈な時間を過ごした。
「依頼者」と「レンタルされたおっさん」なんてことは忘れた人間同士のぶつかり合いがそこにはあった…!

約束の3時間が経ったので、楽しいデートも終了。
名残惜しいと思い始めている自分がいることに気付く。
おっさんの後ろを振り返らないポジティブさ、すぐに行動に移すアクティブさ、どんなことにも全力で応える熱さ…。
「自転車に乗る」という目的以上にたくさんのものを得た3時間だった。
おっさん=「頑固」「動かない」といった悲しきマイナスイメージを拭き去るおっさん界の救世主ともなりえるのかもしれない。

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おっさんレンタル、侮りがたし。

「ここで誰かが助けてくれれば…!」
そんなとき、もしかしたら助けてくれるのはおっさんかもしれない。
ぜひ一度、気軽におっさんレンタルに足を踏み入れてはいかがだろうか?

米原千賀子

ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。