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人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!

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パクチー…恐らく誰でも名前くらいは聞いたことがあるだろう。
コリアンダー、香草、いろんな通名があるが
とにかくアジア料理によく出現する癖の強い葉っぱである。

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(写真ACより)

わたしはこいつのことが苦手だ。

アジアを旅行していたりするとこいつを避けるためにはあらかじめ「パクチーいりません」というしかないのだが、どこかで「これ込みで完成形なのに…!」と食べられない自分にガッカリしていた。
バジルの乗ってないピッツァマルゲリータを想像してもらえばそれがどれだけ寂しいことか分かるだろう。
いなくてもおいしいけど、こいつがいてこそ料理が一気に映える食材…パクチーはそんな存在なのである。

そんなパクチー、最近どうやら少し話題になっているらしい。
オシャレ女子のあいだでタイ料理やベトナム料理が流行っていることはアイドルや読者モデルのSNSを眺めていたら一目瞭然だが(今日のランチはタイ料理☆的内容がいかに多いかである)、
その中でもパクチーは特別注目を集めているという。
パクチー祭なるイベントが開催されたり、パクチー料理専門店が出現したり…特にオシャレ女子のあいだでは一種の「パクチー好き=オシャレ」になりつつあるように思う。

これだけパクチーが日本に広まり始めている今、もしかしてパクチー嫌いを克服すべき時が訪れているのでは…!?
わたしは自分の壁を打ち破るべくパクチー料理専門店の戸を叩いた。

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訪れたのは大阪・船場にあるパクチー料理専門店「GoGoパクチー」。

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入口から早速パクチー乱発である。
隙を許さぬ怒涛のパクチー攻撃に期待度は高まるばかり。
地下に降りて扉を開けると、そこにはオシャレな店内が。
ただメニューを開くとまたパクチーの数々…!
オマール海老のパクチースペシャルにパクチー麻婆、胡麻鯖パクチーにパクチーキムチ、パクチーサラダ…と、パクチーでない料理が見渡す限りない。
ここはパクチーがあって当たり前の世界…。
これだけパクチーに囲まれた環境にいると、もはや自分もパクチーが好きだったのではと一種の洗脳状態に陥り始める。

「GoGoパクチー」オーナーの田淵さんに
「わたし実はパクチー好きじゃないんです。今日は克服すべくここへやってきました!と告げると、
「世の中にはパクチー好きのパクチー料理専門店も多いですが、ぼくはそういう人にもパクチーを食べてみてほしいと思っているのでコンセプトバッチリです!ぜひパクチー好きになって帰ってください!」とありがたい言葉を頂戴した。

「パクチーレベルの低いものから徐々に高めていきたい」という作戦には、
「じゃあパクチー感薄めのこれがいいんじゃないですか?次がこれで…いっぱい食べるため全部ハーフサイズにして…」と一緒になって計画を立ててくれる。
もう完全にパクチーが好きになる未来しか見えないぞ。

いざ、パクチーを食べるときがやってくる…。

【第一の難関】パクチー揚春巻

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「加熱すると香りが飛ぶ」ということで第一の難関に選ばれたパクチー嫌いにも持ってこいの一品。
中身はパクチーリゾットになっており、チーズも入ってまろやかさに磨きがかかる。

パクチー嫌い、実食。
全く抵抗を感じない。
これまで人生で食べてきた揚春巻界でも天下を狙えそうなレベルでおいしい。
言っていた通りあまりパクチーは感じられないが、真緑の断面を見れば「パクチーを食べている」という事実を思い知らされる。
それでもおいしくて箸が止まらぬ革命的な揚春巻だ。

【第二の難関】パクチーの天ぷら
「きついのでは」と思われるかもしれないが、やはり熱によるまろやかな甘みがカバーしてくれる。
形もそのままパクチー丸出しであることより「パクチーを食べている」という事実が認知しやすいが、ぽりぽり食べられて甘くておいしい…。
「見た目はヤンキーだけど心根が優しい」的なギャップでパクチーと仲良しにさせてくれる一品。

【第三の難関】パクチー水ぎょうざ

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確かに刺激的なやつはどこかに潜んでいるのが分かる。だが、本来の餃子がその刺激から優しく守ってくれている。
「パクチー」と「水ぎょうざ」の調和が生んだ奇跡だ…。

【第四の難関】パクチー炒飯

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いよいよ本日初の生パクチーがやってきた…。
でも、わたしにもはや恐怖はない。
これまで歩んできた道、一度たりとも「おいしくない」「きつい」と感じたことがあっただろうか?
否。わたしはもうとっくにパクチーのこと好きになってんだ…。
芽生え始めた恋心に気付いたところで、パクチー炒飯を実食。
どっさりパクチーが入った炒飯。さらに生パクチーをプラスオンした、緑すぎる炒飯。
この香ばしさとパクチーの癖のある風味が、なんて絶妙に絡み合っていることだろう。
夢中になって食べていると、田淵さんが
「追いパクチーいかがですか」とパクチーがぎっしり入ったグラスを持ってきた。

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なんとこの店ではパクチー食べ放題の自分でパクチーを料理に追加できる「追いパクチー制度」があるのだ!!!
最初だったら「この人は何言ってんだ」と思ったことだろう。
だが、すっかりパクチーに狂いつつあるわたしはただでさえ緑な炒飯にさらにパクチーを追加!

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パクチーの過剰摂取だー!!!!

パクチーストーリーはまだまだここで終わらない。

【第五の難関】パクチーロールケーキ

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生地にもクリームにもパクチーが練り込まれたロールケーキ~パクチーを添えて~。
「実はレモンと同じ系統の香り」という知られざる真実がなんとなく分かる、
パクチーの新たな面を知れる一品。
学生の頃、男子とデートすることになって初めて私服姿見てドキドキする…みたいな気持ちです。

そして立ちはだかる最後の難関…。
パクチーマンゴージンジャー…!!!

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パクチーだけで作られた青汁のような飲み物。
青汁さえ飲めないわたしが飲めるわけ……飲めた…!
鼻で嗅ぐとえげつないパクチー臭に襲われるものの、口に入れてしまえば予想以上のおいしさ。
「口の中に溜まったパクチーの香りを鼻から抜く」という高等テクも覚え、すっかりパクチー好きに進化したうさこである。
自分でもここまでうまく行くとは思わなかったレベルでパクチーがおいしい。
今まで「嫌いだ」とばかり思っていたパクチーのいろんなバリエーションを知れた時間だった。

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なぜパクチー料理専門店を?と聞いてみた。
「お母さんが台湾人なので、ネギ感覚でよく食べてたんですよ。日本では苦手が人も多いけど、食べ方を知らんだけやろうなと思った。ここでおいしい食べ方を知ってもらって、日本でももっとネギとか大葉くらいパクチーを普通の食べ物だと思ってもらいたいんです」
抗酸化作用は大豆の10倍あり、肝臓・腎臓にもやさしいヘルシー食材パクチー。
パクチー布教という使命を抱えたパクチー料理専門店は、わたしのようなパクチー嫌いでさえパクチー好きに変えてくれる魔法のような存在だった!

パクチー料理専門店「GoGoパクチー」
大阪市中央区博労町4-7-3 船場アレックスビルB1F
詳しくは http://gogopaxi.com/

米原千賀子

ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。

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