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人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ…!

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最近一部女子の間でプロレスが流行っているらしい。
プロレス好きの女子は通称「プ女子」と呼ばれ、増加の一途を辿っているんだとか。

プ、プロレスかー…。
女子をときめかせるプロレスの魅力を確かめに行きたいところだが、いかんせんわたしは人の痛がる姿が苦手。人の痛いところを見ると自分も痛い気分になっちゃうという無駄な能力を持っているので、痛いシーンは極力避けたい。
困ったわたしだが、世の中には「プロレス食堂」なるものがあることを知った。
どうやら出来たばかりのようでちゃんこ鍋が売りということくらいしかあまり情報がないが、なんだか平和にプロレスを楽しめそうな予感…!
わたしは「プロレス食堂」を徹底調査することに決めた。

大阪ミナミの中でも夜の街全開の宗右衛門町にB168プロレス食堂「ちゃん唐」はある。

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壁中に貼ってあるいかにもらしいポスターの数々。
「プロレス」「食堂」という言葉の並びに、わたしの中で勝手に妄想は膨らんだ。

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フロアを行き来するプロレスマスクにマッチョの男たち…。
そんな男たちが、突然戦いだしたりするんじゃないだろうか…?

ドキドキハラハラを抱えながら、いざ、突入である。

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「いらっしゃい!」はじめに迎え入れてくれたのはダイナ御堂選手。
めちゃくちゃ素顔だった!!!
そう、ここ「プロレス食堂」はわたしのイメージしていた「プロレス感溢れる食堂」ではなく、「プロレスラーの素顔が楽しめる食堂」なのである。
マネージャーで店長の西山さんに「今みんな試合から帰ってきて賄い食べるとこやから、一緒に食べ」と言ってもらい
わたしもプロレスラーの皆さんと一緒にちゃんこをいただくことに。

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家族の食卓か!!!!!!!!!!
想像だにしなかったあまりのアットホームさに、戸惑いを隠せない。

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よそってくれたのは安藤雅生選手。
まさかプロレスラーに鍋をよそってもらってご飯を食べる日が来るとは…。
人生って何が起こるか分かんないね…。

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アットホームすぎる食卓。
隣でお鍋をモリモリ食べるのは正岡大介選手。
食事中の会話は何故か「ダイナ御堂選手の恋愛事情」がテーマ。
「どうしてお前事務所通さず彼女作ったの!??」
目の前でマッチョなレスラーがまるでアイドルのような理由で叱責されている。

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マネージャー西山さんに詰め寄られる御堂選手。
「俺、御堂さんの母親に“どうして息子は女の子にモテないのかなぁ…”って相談されましたよ」とは正岡選手の証言。
他にも、「元カノはフードファイターだった」「心斎橋でナンパしてた」など知られざる個人情報を続々入手した。
本当に友達の家でご飯食べさせてもらってるんだったっけ…?と疑い出すレベルのアットホーム感。
しかしその実一歩リングにあがれば、「デスマッチ」で戦うプロレスラーなのである。
「デスマッチ」とは、凶器を使うのもOKの完全決着型プロレス。
イスや蛍光灯、カミソリなど何でも使って相手を打ち負かす。
流血も当たり前の、「デス(死)マッチ」だ。
隣で笑ってる正岡選手は、画鋲が得意アイテム。リングにいっぱいの画鋲をバラまいて戦う。
体中に画鋲が突き刺さったまま、戦う――。一体、なぜ。なぜ戦うのか?
プロレスを始めたきっかけを訊いてみた。

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大阪最弱レスラーの御堂選手は、「好きだから」と語る。
「中学のときからプロレスが好きで。プロレスって戦いで競技だけど、ウルトラマンを見るみたいな感覚で見てました。20歳くらいで、若い今やっとかなあかん!と思って始めて、気が付いたら今です」
好きが原動力。それは食卓を共にして、痛いほど感じ取れた。
何故彼らがここまで「家族感」があるかといえば、それだけ日々を共にし、一緒に困難を乗り越えてきたからに他ならない。
今ある「家族感」が、彼らの戦ってきた結果ともいえるのだ。

このおいしいちゃんこ鍋は、彼らが合宿場で食べているものだと西山さんは言う。
「我々お金ないです!お金よりやりたいことがある。でも、筋肉をつけたり体を絞ったりしなきゃいけない…そんなときにはちゃんこが最適なんです。ぜひ女の人にも食べてもらいたいですね。ちゃんこを食べに来たついでに、プロレスに興味を持ってもらえれば」
願いは、プロレスを身近なものにしていくこと。エグいやこわいというイメージを拭い去ってゆきたいとも語った。
「プロレスは教育上ワルいもんとして弾かれる。けど、子供たちから暴力を隠したところで暴力はなくならない。だったら力の使い方を教えるべきなんです。子供たちに正しい暴力を教えるのが、我々の役目じゃないかなとも思ってます」
暴力にまつわるものが排除されまくり、暴力そのものから蓋をしようとする社会の中痛みを知らない子たちが増えていると言われる現代で、“暴力”に真向から向き合うのが彼らだ。
「痛みは少ないですよ、ちゃんと受け身ができていれば。でもプロレスラー自身夢中になっちゃうので、行きすぎちゃうこともある。彼らが身を削りながらやっているものを見てもらいたいです」

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戯れて脱いだ拍子に体が傷だらけだったことに、わたしも気付いていた。
ワイワイご飯を食べている彼らと、命懸けで体を使って戦う彼らとのギャップ。
そのふたつの間には、みんなを繋ぐ絆がある。な、なんか…だめだ。泣きそうになってきた。
こうなったらもう、彼らの戦う姿を見たい。見ないわけにはいかない!と思い、
まんまと試合観戦に行ってきました。

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悶えながらも戦う彼らの姿は、痛々しくも眩しくもある。
「人が痛がる姿を見る」のではなく、「人が生きる姿を見る」んだな…。
そんな感傷に浸りつつも、「やっぱりあえて痛い思いするなんて…最強のアホたちだ!!」という気持ちを強く固め、
なんだか清々しい気持ちでうさこは会場を後にした。

 

B168プロレス食堂「ちゃん唐」
大阪府大阪市中央区宗右衛門町2-16 アンドラビル2階
詳しくはこちら→http://chankara168.jp/
3/27(日)大阪城東区民ホールにて「城東プロレス祭り」開催。

米原千賀子

ライター兼イラストレーター。へっぽこな見た目とは裏腹にシビれる鋭いツッコミで世の中を分析する。人呼んでうさこ。常に今日の夜ごはんのことを考えている食いしん坊健康オタクな一面も。webマガジンNeoLなどで連載中。

公式サイト http://yonusa.wix.com/4bunno1
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