今回訪れたのは、東の端っこ、世界遺産・知床半島。
雄大な自然、そこに生きる動植物たち……。
知床国立公園で行われている遊歩道散策ツアーで出会ったものとは。
人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ……!
うさこ、二度目の北海道。北の大地へ8ヵ月ぶり再来だ。
やってきた知床半島は原生的な自然環境が残っていることから、世界遺産にも登録される。
今(7月)の時期に知床国立公園の知床五湖を地上遊歩道から散策しようと思ったら、
プロのガイドさんによるツアーの参加が必要不可欠だ。
何故か?
ヒグマの活動期だからである。
わたしはそれまでくまさんゆるキャラのイメージから「ハチミツ食べてる姿見れたりしないかな~☆」と浮かれていたが、話を聞いてみればそんな生易しいものではなかった。
走るのも早ければ泳ぐのも得意、何でも食べる森の王者・熊。
目をつけられてしまったらひとたまりもない。
だから遭遇を避けるため、ヒグマ対処法をしっかり身に着けたガイドさんに引率してもらう必要があるのである。
わたしは10:40から開催されたオホーツク自然堂の梅林歌奈子さんのツアーに参加。
まずはヒグマについての講習から始まる。
先ほどの通り、出会って敵認定されてしまったら「お嬢さんお逃げなさい」では済まない。白い貝殻イアリングなんて拾ってくれない。
だから会わないための努力が必要であること。
また、知床の自然を守るために
遊歩道から外れて植物を踏みつけない。よそからの植物を持ち込まないこと。
いろんな注意事項を胸に刻んで、
定員10名、小さな冒険隊が出発した。
ガイドさんのいろんなお話を聞きながら、ゆっくり森の中を進んでいく。
「あっ。あそこにカエルがいますね!ニホンアマガエルです」
「この青いトンボはルリイトトンボ。きれいですねー」
「ここでは倒木をそのままにしています。倒木から栄養を吸って、新しい木が生えるからです。この小さいのは、トドマツの芽。枝の数で、大体の年が分かります。この子は3年目くらいですかね。ずっと応援してるんです」
森について学ぶというよりは、まるでお友だちについて紹介してもらうような親近感。
わたしたちは、梅林さんからお話を聞くたびに
森の中に知り合いを増やしていった。
歩いていると、湖に到達した。
知床には五湖という通り一湖~五湖まで5つの湖があるが
水草が多かったり、山が見えたりと場所によって様々風景を見ることができる。
さらにこの日は時折深い霧が立ち込め、その都度全く違う世界が現れた。
魔王城……!
なんと、時間にして3時間、距離にして3キロに及ぶ森の散策……!
運が良ければキタキツネやエゾシカ、エゾリスなんかにも会えると言うが
残念ながらお会いできずに終わった。
話を聞く中で、忘れられないものがいくつかある。
明治時代以降、蝦夷地を開拓しようとする歴史の中で知床にも人が入ってきた。
人々は生活するために、
農場を作るために森を開き、魚が棲まない湖にフナを放ち、
家畜に危害を与えるオオカミたちを殺して絶滅させた。
その結果シカが増え、原生の草木が食べ荒らされ
生態系が壊されようとしているらしい。
森を壊したのは、シカだろうか?いや、人間だ。
知床では今、自然を守るべく一生懸命活動が行われているが
きっと世界のどこかでかつての日本と同じようなことが行われ、
文明的な生活を送る中で恐らくわたしたちもそれに加担している。
都会に生きているだけでは、
地球がこれだけ緑豊かで、生命力にあふれていることを知れないだろう。
わたしたちはまず自然のことを知るべきだ。
それがきっと、「守りたい」という気持ちに繋がっていくはずだとわたしは思う。
壊すのは一瞬だが、壊したものを元に戻すのには途方もない時間がかかる。
簡単な気持ちで壊してしまう前に、わたしたちが生きている場所がどれだけ尊いものなのか
気付く必要があるのではないだろうか。
自由に散策できる高架木道を歩いて、
わたしたちのツアーは終わった。
帰りの車の中で、ふと顔を上げる。
唐突な鹿ラッシュ。写真には撮れなかったがキタキツネまで横切る。
木道の中であれだけ目を凝らしてもいなかったのに、車道におるんかーーい!!!!
動物たちは気まぐれだね。
『知床五湖フィールドハウス』
http://www.goko.go.jp/
TEL:0152-24-3323
営業期間 : 4月下旬~11月下旬 7:30~(終了時間は時期による)
地上遊歩道ツアー(大ループ)は 4,500円~
『オホーツク自然堂』
http://www.jinendo.net/