実は日本に10万人以上いるというムスリム(イスラム教徒)。
しかし多くの日本人が、あまり実態を知らないだろう。
礼拝の回数や食事についても詳細に規定があり、中でも女子は服装にまで及ぶ。
無宗教のわたしからは大変そうに見えるけど、一体どう考えているんだろう?
話を伺うべく、神戸ムスリムモスクにお邪魔した。

 

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人間は、広い世界のほんの一部で生きている。
全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ……!

 

世界には現在16億人のムスリムがいると言われている。さらに、その数は拡大中。
今後世界で一番信者の多い宗教になっていくのでは、という予測まで立てられている。
数からいけば、わたしたちの周りにも当然ムスリムはいるはず。
しかし日本にとって身近ではないため、「1日5回の礼拝」「豚肉は食べない」「露出しない」などの厳しい規律は、イスラム教について知らなければ不思議に見えることもままある。
理解を深めたいわたしは神戸までやってきた。

 

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北野の坂を上ると、特徴的な建物が見えてくる。
神戸ムスリムモスクは、1935年に建てられた日本最古のモスクだ。

 

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第二次世界大戦も耐え抜いた。
モスクに訪れるのはほとんどが日本在住の外国人で、日本人の信者はほぼいないが、それでも多くのムスリムが集って礼拝をし、勉強会を開く。
自由に見学をすることができるので、わたしもお邪魔することが出来た。
郷に入っては郷に従え、ミニスカートやノースリーブなどは控えるのが礼儀だ。

 

恐る恐る踏み入ると、予想と反して歓迎ムード。
「観に来たの?勉強していってね」とやさしく声をかけてくれる人もいる。

 

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モスク内の至るところに本が並んでいた。いろんな国の言葉で書かれたアッラー(神)についての本だ。

 

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全く読めないけど思わず部屋に飾りたくなるような魅力がある。
経典はアラビア語で書かれた「クルアーン」。ムスリムにとって、最も大事なものだ。

 

中央には礼拝堂。

 

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礼拝時間は日の出と日没の時間によって微妙に変わるので、随時チェックしなければならないらしい。
わたしはその日行われた「ズルフ(日の出から影が自分の身長と同じになるまで)」の礼拝に参加した。
1階は男性のみの場所。

 

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女性は2階からの参加となるのが決まりだ。
礼拝の時間が近付くと、少しずつ人が揃いはじめる。2階では真っ黒いヒジャブ(布)を巻いた女性たちが集い、礼拝のために準備を始めた。

 

礼拝が始まると、1階ではずらりと2列に並んだ男性たちが一斉にひざまずいたり、立ち上がったり、頭を垂れたり圧巻の景色。
ひとりの男性がまるで歌うようにアザーン(神への呼びかけ)を朗唱する。
30分ほどの礼拝が終わると、仕事へと急ぐ人や、まだ祈りを続ける人など思い思いに過ごしていた。

 

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話しかけてくれたのは、参加していたひとりの女性だ。
「見学ですか?」
布教のためにスリランカから日本へやってきた彼女は、流暢な日本語でイスラム教について教えてくれた。
普段からこの神戸ムスリムモスクでイスラム教についての教室を開いている。

 

「アッラーは女性を守ってくれてるんです」
女性が肌を見せられないことについて、彼女はそう言った。
「男の人から、悪いものから守るために隠しているんですよ。これは全て、クルアーンに書いてあります。クルアーンには、神様の命令全部書いてある。わたしたちの体や生活を守るための全てです」
1日5回の礼拝を守るのも、豚肉を食べないのも、アルコールを摂らないのも、女性が露出しないのも、全てクルアーンに書いてあるから。
彼女たちは神の命令に従うことで、神から守られているのだ。

 

そんな中で、どのようにして恋愛をしているのだろうか。
既婚である彼女に、どうやって旦那さんと出会ったか聞いてみると……。
「一回だけ見ました」との答え。
一回……?
「女の人はあまり男の人を見ません。女の人も顔を隠しているから、主人は私を全然知らなかった。私の父が主人と知り合いで、紹介してくれたんです。“彼はとてもいい人だ。すごく愛してくれると思う”と」
そして実際に会うことになった。
「一目見て、彼も私も大丈夫だと思ったので結婚しました。結婚して13年になりますが、本当にいい人です」
恋愛は見て「いいな」と思ったら、親や親戚、友人などに告げ、人となりが分かってから結婚に至るのだと言う。
周りの意見を聞けば性格は分かるとのこと。
不自由な恋愛に聞こえるかもしれないが、日本において、恋愛を教わるタイミングがなさすぎてその自由さのあまり迷走したことがある人は少なくないのでは?
砂漠で彷徨うより、舗装された道路の上を歩く方がいい……もしかしたらそういうことなのかもしれない。
妙に納得してしまった。

 

最後に彼女はムスリムについてこう告げた。
「イスラムを見る時、ムスリムの生活を見ないでください。間違えている人もいっぱいいる。だから、クルアーン(経典)とアッラー、ハディース(さまざまな規範が書かれたもの)だけを見て。そうすればイスラム教のことちゃんと分かるはずです」
日本人にもいろんな人がいるように、ムスリムにもいろんな人がいる。
その宗派も細かく分かれており、個々の受け止め方も様々あるのが現状なようだ。
だからこそ、「ムスリムはこうだ」とイメージをつけてしまうよりも、そのひとりひとりに合わせてコミュニケーションを取ることが大事なのかもしれない。

 

モスクの前には、

 

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ハラル(ムスリムが食べることを許されたもの)食材の店や、

 

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ハラルのレストランもある。
国内にありながら、異文化を味わえるこの街で多種多様な生き方に気付きたい。

 

 

『神戸ムスリムモスク』
http://kobe-muslim-mosque.com/
兵庫県神戸市中央区中山手通2-25-14
神戸ムスリムモスク付属のイスラム文化センターイスラム教やアラビア語の講座も行っている。ハラル食材の店「キタノストアー」ハラルレストラン「Naan Inn」も近く。

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