お坊さんが修行する際に宿泊する施設「宿坊」が、近年形を変えてきているらしい。

なんと一般人でも泊まれると言うのだ。

今回は最も新しいスタイルである宿坊型ホテル「和空 下寺町」へと足を運んだ。

 

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間は、広い世界のほんの一部で生きている。

全てを知ることはできない。
世界のどこかには、自分の知らない何かを熱狂的に愛してる人がいる。研究する人がいる。
そんな人が集まると、小さなブームになる。
誰かの世界を、少しだけ覗いてみちゃおう。
それが「うさこの覗いた世界」なのだ……!

 

 

大阪の小さなエリアに80~90もの寺社がある全国的に珍しい地域に、「和空 下寺町」はある。

 

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外観はもうめちゃくちゃオシャレなホテルだが、一歩足を踏み入れると、ふわっと線香が香った。

 

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和を基調としたつくりで部屋も畳張りだが、驚くことにベッドだ。

 

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キレイなバス・トイレも完備し、Wifiも快適。宿泊施設として全く不足がない。

 

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机の上に経典を見つけて、「宿坊だった!」と思い出す。

ここは「修行の場」ではなく「体験施設」なのだ。

 

18:30には精進料理がいただける大広間へと向かった。

そこにあったものは……

 

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……イスだ……!

な、なんてバリアフリーなんだろう。

足が痛くて正座ができないおばあちゃんもニッコリのバリアフリーだ。

この施設は仏教に触れてみたいすべての人に門戸を開けているのだ。

 

精進料理とは、本来修行のひとつ。

 

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にしては豪華でとってもおいしそう。

「この地域の寺社に仕出しをする割烹屋さんから届けてもらってるので、豪勢なんです」

よだれを垂らしているわたしに、スタッフが解説を始めた。

「精進料理の特徴はお肉とお魚を使っていないこと。“五葷(ねぎ、にら、にんにく、らっきょう、あさつき)”も使いません。五色(緑、黄、赤、白、黒)を取り入れ、五法(生、煮る、焼く、揚げる、蒸す)を用い、五味(辛、甘、苦、塩辛い、淡)で味をつけたものが精進料理です」

そんなに細かく定義されていたとは……。

自炊をする人間としては、外でご飯を食べるとき「家で作れそう、作れなさそう」でメニューをジャッジしがちだが精進料理はぜひとも外で頂きたいお料理だな……ということが頭をよぎった。

「食べるときには、音を出してはいけません。食べる時にお寺や修行の場であることが多いので、周りのお坊さんに配慮する必要があるからです。急いで食べると音が出てしまうので、ゆっくり噛み締める必要があります。時間をかけて食べるので、少なくても満腹感が得られるんです」

さすが「修行の一環」というだけあって、食べ方に関しても決まりがある。

「使われた植物の生命や、料理が運ばれるまでに関わる人全てに感謝をして残さずいただくことも大事です」

と述べたうえで、彼は言った。

「いろいろありますが、ここは宿坊型体験施設なので知識として覚えていただいて、あとは楽しく召し上がってください!」

なんというゆる宿坊……!

ここのコンセプトは「知ってもらうこと」であり、実践するかしないかは問わない。

 

「でも、これだけは一緒に読んでいただきますね」と言って「食前観」を一緒に読み上げた。

「われいま幸いに、仏祖の加護と衆生の恩恵によってこの清き食を受く……(中略)……いただきます」

食前観は仏教のお食事に感謝することばだ。

いただきます、に心を籠めるだけでご飯が特別になる気がする。

ひとりで訪れていてもスタッフさんが一緒に読んでくれるので心細くなかった。

 

わたしは先ほど聞いた「音を立てない」を実践すべく、修行気分でご飯を噛み締めてみることにした。

しかし「大根のお漬物」「筍旨煮」「蓮根きんぴら」と次から次へ現れる強敵に挫折。

スタッフさんに相談すると、「おいしく召し上がっていただければそれで大丈夫ですよ!」と笑った。

 

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「ごはんのお代わりはいかがですか?」

山菜ごはんのお代わりまで出来てしまうので、ついお腹がぱつぱつになるまでおいしく頂いてしまう。

精進料理に多用される豆腐やこんにゃく、酢の物が好きなわたしからしたらほとんどご褒美の時間と言っても過言ではない。

しかし、勉強になることも多かった。

感謝していただくということ、周りの人に配慮して食べるということ、それは仏教というフィルターを通さなくてもわたしたちにとって必要なことだ。

 

20時からは、「写経・写仏」の体験が始まった。

実際にお坊さんが来て、レクチャーしてもらえる。

部屋で手を洗い、口をすすいで清めるところがポイントだ。

 

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合掌し、お経を読み上げ、心を清めてからスタート。

わたしが選んだのはなかなか珍しい「写仏」。

既に描かれた下絵の上に和紙を固定し、赤い筆ペンでなぞっていく。

 

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10人ほどいる教室が静かになるほど各々集中していた。

 

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描き上げたら、名前と願いごとを描く。

わたしは2枚描いたうち1枚をお守りにすることにした。

翌朝お寺で祈祷してもらったうえで、かわいい特製のお守り袋(700円)に入れてもらうことができる。

 

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宿泊施設として利用することもできるが、宿坊が発信する様々な体験を通じていろんな知識を得て帰ることができた。

長い歴史、日本に根付いてきた仏教。

このホテルは日本人のお寺離れが続いている中、「お寺をもっと知ってほしい」として誕生した。

ゆるく楽しくお寺や仏教を教えてくれる貴重な体験のオンパレードに、こころもからだも満たされる。

 

 

「和空 下寺町」

http://waqoo-shitadera.com/

 

大阪府大阪市天王寺区下寺町2丁目5-12

TEL:06-6775-7020(受付:午前5時~深夜0時)

料金:1泊2食+体験付き 16,500円~