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『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『海外ドラマ』ということで、『BAILA』『日経エンタテインメント!』ほか各種媒体に映画・海外ドラマのレビューやコラムを連載中の今祥枝さんが最推しドラマを紹介!

 

【最推し海外ドラマ】『マインドハンター』

 

犯罪捜査におけるプロファイリングとは、犯罪の性質や特徴から、犯人像を推論すること。映画『羊たちの沈黙』で有名になったハンニバル・レクター博士のように、知的でエレガントな紳士が、実は猟奇的な連続殺人鬼で、天才プロファイラーと双方を出し抜き合いながら名勝負を繰り広げる。現在の刑事ドラマや犯罪サスペンスにおいて、プロファイリングは花形と言ってもいい人気の題材です。

 

一方で、人気があるからこそ、好青年が突然目を見開き、カリスマ性のある殺人鬼に豹変したり、これみよがしの残酷描写といったステレオタイプに、食傷気味の人もおおいのでは。映画『セブン』のデヴィッド・フィンチャー監督が手がけた話題のドラマ『マインドハンター』は、ど直球の題材なのに、そうした描写はほぼないという変化球。一瞬、肩透かしをくらった感があるかもしれませんが、精神的にじわじわと迫り来る恐怖に、ゾッとする作品なんですよ。

 

舞台は’70年代のアメリカ。ドラマは、FBIにプロファイリングを専門とする行動科学課が誕生した後、捜査官のフォードとテンチ、そして大学教授で心理学者のカーが加わり、プロファイリングを犯罪学として確立していく過程を描いていきます。その方法は、当時としては画期的。各地の警察へ出向き、FBIの捜査方法を伝授するという職務の一方で、地元刑務所に収監されている、悪名高い連続犯罪者への面会を重ねて、データを集めるというものです。

 

本作は、FBIの元プロファイラーによるノンフィクション『マインドハンター FBI連続殺人プロファイリング班』がベース。フォードらが面会する連続犯罪者は実名で登場するのですが、彼らは自分たちの話を、FBIが丁寧に聞いてくれることに機嫌をよくしている風もある。おどろおどろしい犯行について、フォードが興味津々で「なぜ?」「どうやって?」と、動機や手口を語らせていくくだりは、思わず前のめりになって聞き入ってしまうほど。

 

この言葉だけで語られる犯罪者の心理、手口というのが、実に不気味なんですね。なぜかというと、実在の犯罪者たちのたたずまいが、あまりにも自然で、面会シーンの臨場感、現実味が尋常じゃないから。血みどろの犯行を見せられるよりも、ごく普通の、そこら辺にいるようにしか見えない平凡な人々が、淡々と、あるいは嬉々として、まるでそうすることが当然だとでも言わんばかりに持論を展開する姿は、もうヤバいとしか言いようがありません。

 

「俺は犯罪者の心理を理解できるんだぜ」といった得意気なフォードにもまた、薄ら寒さを感じるのですが、そうした慢心、ある種の幻想は、終盤で木っ端微塵に打ち砕かれます。誰もが思ってもいないような瞬間に、とても静かで、身の毛のよだつような方法で。鬼才フィンチャーが描くプロファイリングのリアルは、これまでとは全く異なるアプローチで、社会や日常に潜む恐怖を伝える怪作です。