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(C)真船佳奈/朝日新聞出版

 

『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『マンガ』ということで、幼いころからマンガ好きな、歌人・小説家の加藤千恵さんが最推しマンガを紹介!

 

【最推しマンガ】『オンエアできない!』真船佳奈 著・朝日新聞出版

 

多くの人が毎日目にするものという点で、テレビは親しい存在だけれど、一方ではやっぱり遠い存在でもある。

 

本書は、著者・真船佳奈さんのデビュー作となる。なんと彼女は、テレビ局(テレビ東京)の現役ADとして、毎日働いている。ここに描かれているのは、テレビ局で働く彼女の経験談であり、日常風景だ。

 

ADの仕事内容について、わかりやすく、おもしろく知ることができる作品なのだ。一話ずつ短い読み切り形式となっているので、サクサク読み進むことができるのだが、紹介されているエピソードはどれも濃厚なもの。

 

一話目のストーリーをざっとかいつまむと、「上司のディレクターに命じられ、明日早朝までにドングリ600個を集めなくてはならない」という状況。果たしてどんな方法をとるのか、どんな結末が待っているのかは、ぜひ実際に読んで確かめてもらいたいけれど、悲惨なはずの状況も、絵のタッチと切り取られ方によって、笑いながらページをめくってしまう。

 

終始笑えるトーンで描かれている作品だけれど、最後の十一話目だけは、少しだけ異なっている。

 

企画取材で知り合ったおばあさん、「あおちゃん」との出会い。戦死したお兄さんの写真を大切に持っているあおちゃんとのやりとりには、つい涙ぐんでしまったし、実際にオンエアされた番組を見たかったなあと心から思った。

 

どんな一瞬の映像であっても、そこには作り手たちが存在している。もちろんテレビ業界にかぎったことではなくて、あらゆるものに当てはまるのだが、自分も頑張らなくてはいけないな、と改めて思わされるし、テレビを見る目が変わってくる。

 

親しくて遠いテレビの世界が、読む前よりもずっとリアルに感じられるし、見えないところで働く人たちに、エールを送りたくなる。反対に、エールを送ってもらっているような気持ちにもなる。

 

また、さらに別の知りたい部分が生まれてくる作品でもある。本書でも軽く触れられている、女性ADの恋愛事情についても、深く掘り下げて読みたいと思った。

 

おそらく周囲の人が見たなら、一目でわかるほど、リアルな似顔絵や時に実名まで入って、実際の同僚や先輩についての裏話なんかも描かれている。そのため勝手に、「著者の会社での立場は大丈夫なのだろうか」なんて余計な心配までしてしまうほどだが、ぜひシリーズ化してもらいたい。心から待ち遠しい。