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5月某日 北イタリア・パドヴァ

  先日、シリーズでお送りしているBSフジの『ローマ街道物語』という番組の撮影が、私の暮らしているパドヴァの近隣で行われました。ローマでの最初の撮影時からもう2年も経っていますから、本当に長いスパンでのシリーズ番組なのですが、ナレーションは阿部寛さん、解説は古代ローマ史の本村凌二先生という、心強い友人ふたりが組んでいただいていることもあり、素晴らしい映像とディレクターの興味深い着眼点も含めて、毎度大変面白い仕上がりになっております。

今回の撮影はラスト2回分の、ローマ帝国の締めくくりという大切なコンセプトに基づいた撮影だったのですが、私が普段行きつけているレストランで古代ローマ風のご飯を作ってもらったり、同じく行きつけの市場のチーズ屋さんでローマ人が好んで食べていたというチーズをアレンジしてもらったり、パドヴァの名物でもある馬肉屋を訪れたりと、なかなか彩り豊かな内容になっております。この番組の面白いところは、通常の旅番組などでは滅多に紹介されない古代ローマゆかりの名所や旧跡が出て来たりするところだとも思うのですが、今回の撮影でも、このあたりに点在する知られざる古代ローマ時代の遺跡に詳しい私の夫の助言を受けて、「今まで日本のテレビは来たことがありません!」という場所を訪れることも叶いました。

ベネチアのそばにある、そのとても小さなローマ遺跡では、スタッフの中年のおばさんたちは自分たちの『職場』が日本のテレビに紹介されるというので、撮影隊のカメラマンの袖を引っ張って、「あんた、そこじゃなくてここから撮影しなさいよ、あたしここからもう何枚も写真撮ってるけど、すっごく良い感じになるから!」などと積極的にアドバイスをする興奮モード。とある湖畔の巨大なお屋敷の遺跡はお休みの日だったということもあり、広大な敷地と美しい景色を独占状態で撮影。古代ローマや美術関連の撮影の醍醐味は、何と言ってもこういう特別なコンディションで焦らずに見たいものを見られることかもしれません。

日本へ帰ってテレビをつけると、ほぼ毎日と言っていいくらい、イタリアを紹介する番組が放送されていて、しかも大体観光誘致の得意な都市がメインになっているのが、いかんせん食傷気味にすら感じられることがあります。企画者やディレクターやカメラマンのフィルター越しではない、生のイタリアの顔というのは、ちょっと不便な地域であっても、実際に自らの足を運んでしか出会えないものなのです。

さて、そんな密度の濃い撮影日程の一番最後に訪れたのは、なんと地元の温泉でした。かつて日本の地方局で温泉リポーターをしていた経験のある私は、近年漫画家としてテレビに出るようになってからも、何かと温泉の入浴撮影をリクエストされます。まあ、何年間もそれを業として生きて来た立場なので、恥ずかしがる筋合いもありませんし、温泉に入れるのは何はともあれ嬉しいことなのでたいがいお断りはせずに、それが例え公共放送局の真面目な美術番組であろうと、身体を張って混浴に浸かり、温泉の意味や素晴らしさを紹介させていただいているわけですが、まさかこの番組の中でも入浴シーンの撮影があろうとは!

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