image

水が豊に湧く「三原山」でハイキング

「ひょうたん島」で八丈富士と対をなす三原山(東山=700m)は、10万年以上も前にできた成熟した火山。山腹から山麓にかけ常緑広葉樹林の森が広がり、数多くの滝が存在する懐の深い山である。滞在2日目、その森の山に向かった。

朝9時半に宿を出発。コースガイドに紹介されている三根地区の東京電力発電所脇の舗装道路(防衛道路)を車で進み、鴨川林道の分岐点まで進んだ。すると、工事中の看板があり、前方で工事が行われている。工事関係者に聞くと「この先は進めない。樫立の方からなら行けるよ」とのこと。ここで勘違いしていた。こちらは「全面通行止め」だと思ったのだが、「車はこの先通行止め」ということで、歩いて行くぶんには差し支えなかったらしい。

やむなく、海岸線をドライブ。伊郷名にある「人捨て穴」を見学していく。「大昔の話でごじゃる。八丈島では50歳になると、伊郷名の人捨ヤア(穴)に捨てられることになっていました。これは大嵐や、干ばつで食物が足りず、島のみんなが生きのびるためでした(略)」という民話が残っている。南海の絶島の厳しさを物語る話だ。

image

image

さあ、再出発。樫立の「富次郎商店」前から始まる三原林道を進む。唐滝の路にある駐車場に車を止め、下の分岐まで戻ってここから林道歩きだ。狭い車道がくねくねと続く。両側は樹木が生い茂り、緑が濃い!自生するヘゴを見ると、亜熱帯にいることを実感する。道脇の苔むした岩に清水が滲みだし、水の豊富さをうかがわせる。

いろんな鳥たちの鳴き声を楽しみながら歩いて行くと、「大池・小池の路」の道標があらわれた。立ち寄っていこう。幅2mほどの小径が続き、5分ほどで小池に着く。ふだんは湿地帯だというが、最近の雨がたまったのだろう。文字通り小さな池になっていた。そこから数分で大池。こちらは細長い池で水量も多い。ここで不思議な光景に出くわした。雨も降っていないのに、水面に小さな水紋が広がっている。なんだろう?水中からなにか湧き出しているのだろうか。小径や池の周辺はシダやコケに覆われ、鳥のさえずりが響き渡る。映画のワンシーンに登場しそうな雰囲気だ。

image

 

山頂で大海原を眺め古(いにしえ)の日々に思いをはせる

林道に戻りさらに30分ほど進むと三差路に。左を進むとゲートがあり、これを越えて電波塔方向を目指す。電波塔近くの細い道をひと登りすると、あっけなく山頂に到達。前日の快晴には及ばないが、まずまずの天気。眼下には深い森、その先には黒潮が流れる海原が広がる。振り返ると八丈富士の秀麗な山容が飛び込んでくる。いい景色だ。冬枯れの笹の間に椿が赤い花を咲かせている。

サーモスの水筒に入れてきたコーヒーを飲みながら一服。海を見つめながら、慶長時代(1606年)戦国武将、宇喜多秀家が流されて以来、明治初頭まで1900人もの流人が送り込まれた古の日々に思いをはせる。あの海を渡ってくるとき、彼らはどんな思いだったのだろうか。この山の頂に立って、海原の向こうにある故郷を思い起こしたりしたのだろうか。風が冷たくなってきた。さあ、下りて温泉に浸かろうか。

所要時間:約3時間
問い合わせ:八丈島観光協会 04996-2-1377

image

 

【温泉】八丈は温泉天国! 無料で楽しめる混浴も

火山の島だけに温泉は充実。島内には7つの温泉がある。島のパンフレットには「銭湯感覚で浸かれる、それが八丈島の温泉だ」と書かれているが、そのとおりだった。秘湯派にオススメは「裏見ヶ滝温泉」(中之郷尾越温泉・ゆとりの湯)。名瀑・裏見ヶ滝を見物した後に立ち寄りたい。渓谷にある無料の混浴露天風呂(水着着用)で、渓流の音をBGMに緑に包まれて浸かるひとときは究極の癒しタイムだ。

眺望派には「末吉温泉・みはらしの湯」(大人500円)がいい。露天風呂で風に吹かれながら太平洋を一望できる。夜は満点の星が広がる。このほかクアハウス風の「ブルーポート・スパ・ザ・BOON」(700円)はジャグジーやサウナもある。亜熱帯の島で温泉めぐりという思わぬ楽しみが待っている。

image

ANA 山ガールの八丈自慢

八丈島空港ターミナルビル株式会社
受託業務課
菅原 幸夏(ゆか)さん

この島は個性的なカフェが充実。特産フルーツを使ったスイーツも

八丈島は年間の平均気温が17.8度。この温暖な気候のもとさまざまなフルーツがつくられている。パッションフルーツ、フルーツレモン、ドラゴンフルーツ、八丈フルーツレモンなど。
「島特産のフルーツを使ったスイーツやかき氷がおいしいですよ。八丈フルーツレモンの皮やグアバの実を使ったスイーツをぜひ楽しんでいただきたいですね」

image

カフェも充実している。

「個性的なカフェが多いですね。観光客だけでなく地元の方にも人気のカフェが増えています。南原千畳敷近くにある『空間舎』は、アジアンテーストの雰囲気で内装、インテリアが素敵。2階からは海が眺められ、夏場はかき氷、ふだんはあしたばチーズケーキがオススメです。大賀郷にある『たいむ』はケーキが充実しています。パッションフルーツのシフォンケーキ、マンゴーやブルーベリーを使ったヨーグルトケーキなど。しかも、ケーキセットは手作りケーキ2種類とドリンクがセットで600円と良心的です。このほか、隠れ家のようなお店もあります。島のカフェめぐり、楽しいですよ」

八丈島の祖先が祭られた「優婆夷宝明神社」

総社・郷社とも呼ばれ、八丈島・八丈小島・青ケ島の総鎮守として崇敬されている格式高い神社で、八丈島の祖先八十八重姫と、その子の古宝丸が祭られている。そこにこんな伝承が重なった。

「昔、八丈島を大津波が襲い、みんな流されたのですが、丹娜というお婆さんだけが助かりました。丹娜婆は妊娠しており、男の子を産み、その子が成人したのち夫婦となり、子孫が増え、現在の八丈島の人達のもととなったという伝承があるのです。古いソテツのある境内はとてもスピリチュアルな気配を感じます。八丈島は島全体がパワースポットみたいな所ですが、この神社もそうです。興味がある方はぜひどうぞ」

image

この大津波伝説の真偽を問う声もあるようだが、南方ロマンを感じる原始神話だ。次回、ひょうたん島第3弾は、三原山山腹にある高さ30m超の滝に向かいます。

関連カテゴリー: