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パリの顔である「カフェ」は、四季を通じて地元の人や観光客でにぎわいます。老舗、観光地タイプ、地域密着型、おしゃれ系、おじさんカフェ(おじさんが競馬などを楽しむ素っ気ないカフェ)……カフェにもいろいろな個性があり、エスプレッソ1杯の値段約2ユーロから8ユーロ(220円から1,000円弱)とさまざまです。

 

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左:お気に入りカフェのひとつ、コーヒー専門店「Cafe Verlet」での1杯。
右:カウンター席に座り、少し高い位置から眺めると、いつもの店がまったく違って見える。

 

パリに「カフェ」が生まれたのは17世紀のこと。トルコのイスタンブールに16世紀、世界で初めてコーヒーが飲める場所が誕生し、貿易が盛んだったイタリアのヴェネツィアを経て、フランスに伝わりました。コーヒーはまず貴族たちの間で流行し、のちに一般市民も楽しめる初めてのカフェとして、1689年に「 Le Procope (ル・プロコップ)」がパリ6区に誕生したそうです。

 

当時、コーヒーは精神を高め、体にもいい特効薬のような存在だったため、人々はこぞって、その不思議な飲み物を求めカフェに通いました。たくさんの文豪や思想家、アーティストがカフェに集まって日夜議論していたことは有名で、カフェがフランス革命の温床になったといわれています。フランスにとってカフェは文化の中核であり、現在に至っても、情報の源であることは変わっていません。

 

カフェは朝早くから夜遅くまで開いていますが、私がいちばん好きなのは、芳ばしいコーヒーとヴィエノワズリー(パンオショコラまたはクロワッサン)の香りが漂うPetit de-jeuner (プチデジュネ/ 朝食)の時間帯。どの店にも朝食セットのようなものがあり、ヴィエノワズリーかタルティンヌ(バゲットにバターとジャムがついたもの)、温かい飲み物とフレッシュジュースがついて、およそ8ユーロから10ユーロ(1,200円前後)。私は朝は決まって、エスプレッソを熱湯でのばしたCafe allonge(カフェ・アロンジェ)を注文します。

 

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左:カフェでの朝食。タルティンヌは、バゲット1/2本を2つに割ったものにバターとジャムがつく。
右:クロワッサンとカフェクレームも捨てがたい組み合わせ。

 

時間がないときはComptoir(コントワール/カウンター席)へ。基本は立ち飲みですが、最近では椅子を置いている店も多く、10分ほど腰をおろし、隣の人やギャルソン(ウェイター)と一言二言交わしながらコーヒーをいただきます。コントワール料金というものが設定されていて、テーブル料金の半額で飲み物をいただけるのもうれしい仕組み。仕事途中の人でも、素早くリーズナブルに気分転換できるのです。

 

逆に、誰かと一緒にゆったりと朝食を楽しみたいときは、大奮発してSalon de the(サロン・ド・テ)の元祖・Laduree(ラデュレ)へ。マカロンやパティスリーで有名なラデュレですが、19世紀半ば、「女性がもっと自由に楽しめる場所を」と、カフェとパティスリーを融合させた「サロン・ド・テ」を生み出したそうです。にぎやかなカフェとは違い、落ち着いて話ができるので、時間に余裕があるときはサロン・ド・テがいいでしょう。

 

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左:サロン・ド・テの生みの親「ラデュレ」は、とても豪華なたたずまい。
右:ゴージャスな空間に、旅人や友人同士、ミーティングするビジネスマンと、さまざまな人が集う。

 

午前中、ラデュレの店内では、おいしそうなヴィエノワズリーが私たちを誘惑します。私が必ず注文するのは、パンペルデュ(フレンチトースト)。ラデュレではパンにブリオッシュを使い、卵液の重さをまったく感じさせない軽い仕上がり。かわいいボトルに入ったメープルシロップをかけ、甘さひかえめの生クリームをたっぷりつけていただきます。

 

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左:ずらっと並んだラデュレのヴィエノワズリー。
右:パンペルデュやホワイトオムレツをいただく、優雅な朝食のとき。

 

甘い朝食が苦手な人には、卵白だけでつくられたホワイトオムレツがおすすめ。フランス語ではOmelette blanche(オムレットブランシュ)と呼ばれ、高たんぱく質なのにカロリーひかえめ、今注目のローカーボダイエットにも最適の一品です。日本でもじわじわと浸透しているようですが、私はパリではラデュレでしか食べたことがありません。といっても、こんなぜいたくな朝食は、1年に1度くらいですが……。

 

カフェやサロン・ド・テで過ごす時間は、私にとってとてもぜいたくなひととき。家でも職場でもない第三の場所、サード・プレイスでほっとひと息つく。街を行き交う人々を眺めたり、そこで居合わせた人と言葉を交わしたり……日々の自分からアノニム(匿名)の自分へとログアウトできるのです。カフェを出たあと、少し新しい気分で日々に戻っていく自分に気づきます。

 

パリのカフェは、これからも変わらず街を飾り、こうして人々を癒していくのでしょう。