延命治療を選択しなかった家族の苦悩はどうケアすべきか

 

【新連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談

 

TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。

 

【今回の相談内容】

先月、「延命治療はしないでいい」という言葉通りに、自然な形で父を見送りました。でも、葬儀で叔母から「兄さんはもっと生きたかったはず。まさか治療してもらえなかったなんて……」と言われました。以来、眠れない日が続いています(54歳・主婦)

 

【回答】

とてもお辛い時と思います。お父様を見送るという大仕事をなさった直後の叔母様からの言葉。胸に刺さりますね。

 

最初にお伝えしたいのは、「過ぎた事はすべて最良の選択のもとに成った」ということです。たとえプロセスに迷いがあったとしても、過ぎた瞬間から最良になります。ましてやお父様の「延命治療はしないでいい」という言葉に沿った選択だったのですから、あなたがお父様を自然な形で見送られたことにまちがいはありません。

 

ではなぜ、叔母様のお気持ちは揺れているのでしょうか。私が推察しますに、お父様はとても素晴らしい方だった。叔母様にとっても、それはそれは素敵なお兄様だったのでしょう。そのお兄様を失ったことを、今の叔母様はまだ腹に落とせていないのです。

 

人間は納得できない悲しく辛い出来事があった時、それを腹に落とすまでには五つの段階を経ると言われています。最初は「そんなことあるわけない」と否定。次に「なんで私なの?」、「どうしてあの人が?」と怒り。そして「どんなことでもするから」と取引。それがうまくいかないとわかり、「ああ、なにをやってもどうにもならない」と抑うつ。そしてようやく「これも仕方がないことだ」と承認、腹に落とすことができるのです。

 

叔母様は今、怒りの段階にいらっしゃるのでしょうね。ときに怒りの負のエネルギーは、きつい言葉になって周りの者を傷つけてしまうこともあります。あなたの胸に刺さったのも、きっとそれでしょう。時間がたてば叔母様の時計もすすみ「ありがとう。あれでよかった」となりますよ。

 

今、あなたがなさることは、傷ついてしまった自分を立て直すこと。いつまでも怒りのために放たれた言葉に捕われてはいけません。あれはあなたを批判する言葉ではなかったのですから、さっさと流してしまいましょう。

 

眠れない日が続いているなんて、おかわいそうに。お父様もきっと心配なさっていますよ。大丈夫だから。先へすすみましょうね。今夜からはゆっくりお休みになれますように。

 

【プロフィール】

玉置妙憂(たまおきみょうゆう)

看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。

 

【最新情報】

12月2日(月)18時30分から、産経新聞社(千代田区大手町1-7-2 東京サンケイビル)にて講演会を開催予定。看護師としての経験や、自身の夫の看取りの経験による実体験から得られたことと、 僧侶としての仏教的観点からの「終活」をお届けします。

https://id.sankei.jp/e/1054

関連カテゴリー: